願いの言葉
ふと耳に入った噂。
“愛美に彼氏ができた”
あの日、どうして君の手を離してしまったんだろう…
一度離してしまったら、もう二度と繋ぐことはできないと分かっていたのに。
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あの日は太陽がギンギンに照りつけていた。
「龍ッ!!」
「愛美…ごめん、呼び出して」
「ううん!話って?」
「別れて…ほしい」
本当に暑くて、暑くてたまらない日だった。
太陽は俺等とは裏腹に照りつけ続けていた。
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あの時、愛美に悪くて顔上げられなかったけど、知ってたよ。
“うん”って言ったときの愛美の声がすごく震えていたこと。
今にも泣きだしそうだったこと。
どうして君を傷つけたんだろう…
本当は君が辛いとき、傍にいてあげるのが俺の役目だったのに…
なあ…?神様って奴が本当にいるなら、頼むよ。
俺のことはズタズタに傷つけて構わないからさあ…
あいつを、愛美を世界一幸せにしてほしいんだ…
俺が傷つけちゃった分、新しい彼氏と幸せにしてやって下さい…。
もう二度と繋ぐことの
できないあの手…
もう二度と隣で見ることの
できないあの笑顔…
“俺が守る”と誓ったのに
君を一番傷つけたのは
俺だった…
君を泣かせてしまったのは
俺だった…
本気で君を愛してた
本気で本気の恋だった
それなのに、それなのに…
もう一度、
あの手を繋ぎたいなんて
もう一度、
近くで笑顔が見たいなんて
そんな図々しいこと
願わないから。
俺のことはどんな風に
傷つけたって構わないから
何をしたっていいから、
だから、
あいつを世界一の幸せ者にして下さい…
愛する君を
最悪な僕が願う言葉