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最弱の英雄伝   作者: かぼちゃの骸
世界ぶっ壊すよの章
98/108

英雄



 さらに十秒くらい立ったろうか。

「うわぁぁぁ、誰だ!」

 モヒカンがジャガイモを手ではじき飛ばす。

 ジャガイモの下からにんじんの被り物が出てきた。

「えい」

 そのにんじんを殴るようにして、今度は私が脱がせる。

 次は玉ねぎだった。

「運命の集列(私の番ですよね……)」

 ノーヤがそれを取り去ると、直感的に私達の敵だと知った。敵意を持ってたりということではない、特異な顔だが愛嬌はあり笑顔を浮かべ、危害を私達に加えることはないだろう。しかし敵だ。生まれた瞬間から決められたもので、私の本能が確信した。

わたくしを殺します?」

 怖い。怖い怖い怖い。全ての思考を置きざりにするように、頭の中が真っ白に染まる。

 相手の顔が認識できない、何の変哲もない、器量の良い様な悪い様な日本人のような外人のような。絶対に忘れられない顔だ。人外じゃなくて概念外。

「どうしたんですか? あぁ、自己紹介しますね。私の名前はワールドマネージャー」

「……涼はどこ?」

 顔がくるっと、上下反転する。元に戻ったのかそれともひっくり返ったのかを考えていると、その顔の中から手が生える。いや、手が中から外に出ようと、顔を破って出てきた。

「ここに」

「ちょっと黙っていてくださいますか?」

 涼は中にいる。モヒカンが涼の手を掴み引っ張りあげようとする。

「涼!」

 モヒカンが、煙になって消えた。

「殺してないでっすよ。訳ありまして、そもそも私にとっては貴方達は生き死にの点で同族ですので。多少の有利が私には働いておるのです」

「断罪の剣よ、我に力を分け与えん、漆黒の宴の狂乱に怯えよ――右腕の封印を解く」

 隣で、ノーヤがいつの間にかカッターを取り出していた。止めようとするよりも先に、切りかかる。今度は煙も出さずに消えた。

「貴方も来ますか?」

 もしかかっていっても消されるだけだろう。

「やめとくわ」

「いいでしょう、貴方一人に教えれば良い。涼さんは記憶を放棄しておるようなので、どうも要領が得られないんですよ」

 記憶を放棄? そしてこいつは涼の何なんだろう。言ってることがSクラスみたいだが、涼の友達だというのなら迷惑な顔だ。

「お茶でも飲みます?」

 口の中から、ティーカップが出てきて緑茶の香りがあたりを漂い始める。

「いらないわ」

「そうですか」

 ワールドマネージャーはその緑茶をカップごと飲んでしまって、涼をその口から放り出した。

 放物線を描いて、涼が私の腕の中に飛び込んでくる。軽い。涼は事故で脊髄がなんとかとかで足がないから人より軽いのは解っていたが、私より軽いというのは、嫉妬を覚える。

「つなぎか……おい、そこのワールド。俺に記憶を渡せ」

「え? いいんですか? 死にますよ。貴方の幸せが全部残らず」

「……別にいい。つなぎを巻き込むな」

 

 ふと気がつくと、涼はどこにもいなかった。残ったのはかぼちゃの被り物だけ。



 ※

       

 

 俺は記憶をワールドマネージャーから受け取った。

 全ては幻想、つなぎもノーヤも俺の身勝手な遊びだったらしい。

 いつの間にか壁の白い部屋にいて、ワールドマネージャーを囲むように俺のほかに七人座っていた。至上悠里以外はこっちの世界では認識はないが、前の世界であったことがある。

「さぁ、お集まりいただいたのは、選ばれし百人。といってももうすでに八人ほどしか残ってはいませんが。おっと、自己紹介が遅れました、ワタクシはワールドマネージャー。佐々波様の能力で作られたこの世界を管理するものです。皆様方はもう記憶を取り戻させましたが、私の仕事はこれのみでそれに情報の差異があるでしょう。私達選ばれし百人は世界を秩序と幸せに満ちたものにするため、自らの管理下に置こうとしました。ですがそこに立ちはだかったのが愚かな五人の悪魔の子。私達の完成された能力には遠く及ばないのですが、戦い慣れしておりましてね、どうも厄介だった」

「いるかとぱんどらは悪魔の子なんかじゃない」

 そう言ったのは確か佐々波時雨という奴だ。得た能力はクリエイター、存在できるものなら何でも作ることが出来る。この世界自体を作ったのはこいつだ。

「ははっご主人様。失礼しました。ですが何を仰るのですか? パンドラさんは貴方が殺したんでしょう? まぁ、今言ったとおり、所詮は選ばれなかったもの。私達の敵ではありませんでした。一人、また一人と殺して行き、残るはあの災厄の蘇我いるか。あろうことか、こちらの能力を調べ上げ、至上悠里さんと権現四余さんの能力を巻き込んで爆弾を作り人類を壊滅させました」

 確か至上悠里の能力はブラックキャニオン……だっけか。元の能力は過去を書き換えられるものだ。こっちの世界では結果消費の条件がついていたが、それはこの世界に齟齬が生じる行動が禁止されるからで本当はもっとえげつない能力だった。それと昔の記憶をさらに探れば権現四余の能力は確定事象、自分が生きているということを確定していれば、例え首を切り刻まれても生き続けられる。俺は手をあげて聞くことにした。

「あ、すまん。そもそもどうやったらそんなことが出来るんだ? そのいるかとやらがこっちに出てきた瞬間そいつは死ぬだろ」

 そもそも、それが困ることだったら過去を変えれば良いだろう。

「それも説明しましょうか。貴方はその爆発で足を失ってますしね。まぁ、実際はという常識を認識させることで生きているだけなのですから、死んでるんですけどね」

 解ってるんだよ。俺が死んでるなんてことは。ぶっちゃけ粉々になったから、常識押し付けるにしてもこれが限界だったことも解ってる。後、この世界では俺の能力はご法度だ。俺の常識ではどんなに思い込んでも、どこかに元の世界の常識が混ざる。だから自分で自分の常識を押し付け、封印したんだった。

「いるかさんは、頭が人にしては良い様で、星を砕く程の止まらない爆弾を作り、それを一時停止させる機械を作りました。そしてそのボタンはパンドラさんにしか押せないものです。あの陰陽師に生死を入れ替えられい様にパンドラの死は権現さんの能力で確定し、変えることは出来ません。まるで私達が殺す順番をわかっていたように、もしくはわざと死んだかのような手際でしたね。そんな狂気に満ちた方法を取るとは思えませんでしたが、また、世界を守るとか言っておいて、自ら地球を粉々にするようなことはどんな皮肉なのか私にはさっぱりです」

 こいつの説明はひどく要領を得ないが良く理解した。一番最初に死んだモノって奴の、全ての力を10ならー10にといった風に変換する陰陽師とやらの力。何もしなければ力そのものが限りなく0にちかいので意味などないが、俺達の力は発動しなくとも億はある。そのせいで二人死んだ。その力を忌避したんだろう。

 確かにあれは意味が解らなかった。特に再生能力が破壊能力になるのはぐろかったが、俺達に比べれば何も出来ない力に過ぎない。

 俺はそんなことが出来るとは思わなかったが、死んだことを確定するようになったのだ。その確定した死は変化できない。つまり過去を変えようにも、その死をなかったことには絶対に出来ない。だからきっと爆弾のスイッチを押すってことを過去を変えさせることで無くさせ、さらにその仕掛けによって過去を変えるには死の確定が邪魔するようにしたんだろう。パンドラが死んでから爆弾を作れば出来る。しかし過去を変えるほうが能力発動前に戻れるのだから、やろうと思えば過去を変えられたはずだ。

「そこで、爆発から身を守ったあなた方八人。宇宙に放り出されても生きてるとはさすがといいたいところですが、正直お前らの能力考えたら、何してんの? という感じですね。そしてこの世界はわが主佐々波様の力で作られ、ここにある生き物は全て譜瓜ふうり様の能力で入れ替えた死者。しかし死者の中にあの誤認が混じっていたことが、唯一の不安要素。私はそれに備えて作られました」

 生と死を入れ替える能力。ノックデス。これのせいで死を確定することが確定した。生死を入れ替える能力があることが俺達にそれを警戒させたのだ。どの能力でもいえるが、これがあれば当然相手がいれば即死だ。相手のうまかった所は最後まで姿を現さなかったこと。姿を現すときはそいつが死ぬときだ。

「最後に門司様のシチュエート。これで、歴史を作りました。世界が出来てからはや十年、あなた方はずっとこの世界で世界を管理してきました。もちろん無意識ですが、あなた方は目的を達成した。もはや因果が複雑に絡まり、過去を変えることも難しい、そもそも過去を変えられるのは自分の過去だけですので、もちろん過去であればどんなことも変えられます。東京タワーを見たらそれを消すことだって出来ます。しかし、シチュエートで過去が書き換えられているのでその能力は使えません。もちろん概念的なことには使えます。自分が生まれたことなんかは出来るんですけども、前の世界の過去は前の世界で無いと変えることは出来ません。時間的つながりが存在しないことになりますので」

「あー、うざい!」

 菰野点仔が声を上げ、立ち上がった。

 彼女の能力は……何だっけな。俺は結構そういうのを覚えているタイプだが、さすがに記憶にないのもいくらかいる。世界を作るなんてのも、俺は死にかけだったからその話し合いには参加ししてないからわからなかった。

「佐々波! こんな喋り方しか出来ないやつしか作れないの!? 私は話し合いなんて参加しなくても全知全能だし、帰るからね!」

 思い出した。

 彼女の能力は禁止禁止きちきちだ。全てのことを禁止できる。息をするのだってもちろん出来る。人以外にも使えて、自分の体に傷つくの禁止といえば、無敵だ。というかそれをやっていた。

「っていうかさ、過去を変える能力だっけ!? その過去を変える能力が一番に優先されるんだから、その能力でのミスとか、私達には対処しようがないし。戦犯決定!」

 帰るんじゃねぇのかよ。

「うるせえのはてめぇだ。こっちはマジでブルー入ってるんだよ」

 立ち上がったのは、邯鄲だ。

 こいつの能力はさせたがる能力、システー。死にたくさせる、全裸にならせたがる、しかも強制力は完璧だ。抵抗すらさせない。ちなみにこの能力でどうやって、身を守ったのだろう、爆弾から。

 にらみ合う二人。

「能力禁止!」「禁止したくなくなる!」

 今回はぎりぎりで点仔のほうが早かった。

「チッ」

「お? さーて、まずは私に関する反抗的な態度を禁止させようかなー。ってか、私があんたに死ぬのを禁止しなかったら、今頃死んでるんだけど?」

「頼んでませーん」

 あぁ、うまいこと他人に能力を使って身を守ったのか。

 これ、みんながみんな、さっき能力を取り戻したから、早口合戦になるな。ってか俺はシチュエートで与えられた能力しかどうせ使えないし。今の力関係はこの世界作った三人以外は屑だな。いや、シチュエートも記憶を取り戻させるスイッチになるから使えないか? 考えるのが面倒だな。

「さて、皆さんお気づきかもしれませんが、あのにっくき五人が覚醒しました。原因は私達と接触したことから一気に齟齬が大きくなったことが原因でしょう。記憶をもった私達の行動が彼らの覚醒をうながしました。知識が無かったからしょうがないものですが、逆にこれはチャンスです。あいつらの顔がわかれば、貴方がたの力ですぐに消せる。ここに集まっていただいたのは、選ばれしもの同志で潰しあう事を避けるためです。私達の勝利条件は奴らの殲滅。そしてこちら側の敗北条件は自らの死、もしくは我々の一人でも相手に付くことです」


 なるほど。この世界を崩せる人間がいれば俺達は自動的に死ぬわけか。

「へぇ、じゃぁ、裏切りそうな奴は禁止すればいいじゃん」

 俺達はお互いにお互いを見る。そこにワールドなんとかが

「僭越ながら、その裏切る可能性というものを検討しました。残念ながら佐々波様が一番、次に点仔様でございます」

「はぁ、何でだよ?」

「もちろんこの世界を無くせば、死ぬのですからそんな可能性は無いですが、はっきり言って佐々波様はパンドラ、イルカと仲がいいと。点仔さんは特にこの世界に大切なものが無いようですから」

 あぁ、こいつ友達絶対出来ない性格だもんな。

「……哀れみ禁止!」

 

   

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