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最弱の英雄伝   作者: かぼちゃの骸
世界ぶっ壊すよの章
96/108

ゲーム上

 ~~~ 


 ここは東京都港区。玉木先輩っていう、少し前まで俺の先輩が住んでる家の前だ。余談だが、玉木先輩はモヒカンだ、そして能力は総称して正義ジャスティス。まず車の塗装を一瞬で黒と白のパトカー仕様に出来る。そして半径七メートル以内どこでも立ち入り禁止の黄色いテープを張ることが出来、最後に相手の手同士が一定以上近づくとそこに手錠を出現させることが出来る。

 そんな彼は警察官だ。逆に何故警察学校に行かなかったかは謎だったが、これには理由があった。モヒカンだ。彼はモヒカンだったのだ……。最終的につなぎが酒の席で、丸坊主にしてしまったから晴れて警察官になり、玉木先輩は学校を辞めていった。しかし今年の年賀状にはモヒカン頭の玉木先輩とお腹が膨らんだ女の人が写っていたんだが、あれはCGに違いないと俺は思っている。

 放送係は俺の居場所をつなぎに教えた罪、それと親が能力で見つかったので、実家に帰っていった。彼女の実家はテレビ局だ。しかし夢は通訳なんですといっていたから世の中うまくいかない。

 インターホンを押して十分。玉木先輩の奥さんと名乗る不審な女性が俺の顔を見て、扉を閉めてから十分だ。

「あの、私たち玉木先輩の友達……」

「嘘よ! 確かに主人からはイケ面とはさみを持った悪魔が家を訪ねてくるとは行ってましたけどね。そんなかぼちゃ頭の化け物が来るなんて聞いてないわ!」

 化け物? つなぎももう少し笑う練習でもすれば、化け物なんていわれないんだけどな。

「……案山子は十字架に(かぼちゃ頭取ったらどうですか? 実際不気味ですよ)」  

「ん? 何で?」

 ノーヤの言葉の解読は、まるで母国語のように出来るのだが、変換ミスを犯しただろうか。

「ちょっと、話にならないから涼来て!」

 つなぎに押されて、再びドアの前に立たされる。

「ひっぁ、た、食べられるー。あなたー」

 かぼちゃをつなぎに取り去られる。

「なっ、返せよ!」

 つなぎからかぼちゃを奪い返し、人心地つくとドアが開いた。

「い、いらっしゃい、ゆっくりしていって」

「おじゃましまーす」

 つなぎがさっさと部屋の中に入っていってしまう。まぁ、何はともあれ誤解が解けたらしいからいいか。

「あの、自称奥さん。ノーヤも入れてもらって良いですか?」

「自称? ……っは! あの、主人は確かに昼はいないですけど、こ、困りますよぉ。貞操はその、子供もいますし」

「そこを何とか」

「あ、う、じゃあ、その、いや! だ、だめ」

 ノーヤは駄目か……。玉木先輩に電話して許可を取ってしまおう。

 玉木先輩に電話をかける。

「玉木先輩、言ってなかったですか? 一人追加でノーヤってのも世話になりたいんですけど」

 玉木先輩の周りはざわついてはいたが、電話に出たんだから休憩中なんだろう。

「ん? いいぞ。ちょっと美紀にかわってくれ」

「美紀? あぁ、自称奥さんですね」

「本物だよ……」

 玉木先輩は妄想がひどいな。俺が彼女も出来たことないのにそんなはずがない。

 美紀さんは俺から電話を受け取って、少し話していたが、納得したのか恥ずかしそうに「夫公認なんですね。その、私お風呂沸かします」と心良く俺たちを入れてくれた。

「誤解……(誤解……)」

「ん? ノーヤなんか言った?」

「難聴……(難聴め……)」

 つなぎはすでに疲れていたのか、畳の部屋で寝転がっていた。

 俺も座布団を枕にして寝転がる。

「天の目がありし床の間(失礼じゃないですか! ね、寝ないでくださいよ!)」

「いいんだよ。玉木先輩の家だし」

「ちょ」

 自称奥さんがお茶を持ってきてくれた。

 しかし口をパクパクさせて、コイみたいだ。そういえばコイって、刺身にするとすこぶるうまいよなー。せっかく学校から出れたんだし、まぁ戻れないかもしれないんだけど、うまいもの食いたいな。

「……あの、使ってない部屋があるのでそこに荷物とか置いてきてください」

 自称奥さんに二階の使っていない部屋の場所を教えてもらい、荷物を置きに行くことにした。しかし、意外と急な階段だ。手すりもない。

「つなぎ、俺上がれないんだけど」

「……気合で何とかしなさいよ」

「おぶってくれよ」

「荷物貸しなさい」

 ノーヤが何かこのやり取りのことの前で首を傾げていたが、何も言わず階段を登っていった。 

  

「暇ね」

 階段から先に下りてきたつなぎは早速暇になったらしい。

「ゲームするか?」

 俺は学校での生活が暇すぎて、たくさんゲームを持っている。通販とは便利だ。それをつなぎも知っていたのか、良いわねといいかけて怪訝な顔になった。

「いつ持ってきたのよ?」

「いつも持ってるけど?」

「……そう」

「良いからやろうぜ。おーい、ノーヤ! 俺のバックからゲーム持ってきて」

「は、はーい」

 今すごく普通に返事されたんだけど。まぁ、いいか。

「苦渋の選択(たくさんあるんですけど……ていうか、荷物ほとんどゲーム……)」   

「お前が好きなので良いよ」

 ノーヤが持ってきたのは、つなぎちゃんクエスト。

「おい」

 つなぎに首根っこをつかまれる。

「おい」

 このままだと脊髄が大変なことになってしまう。

「やる?」

「自作なの? あなた馬鹿じゃないの? その前になんかいうことがあるだろ」



 ――時は二千XX年。時は世紀末を迎えていた。

 

 玉木先輩が持ってたゲームフォーサイドフィギュアを使って起動した。

「少しでも私をディスってたら殺すわ」

 俺殺されちゃうな。くっそ、こっそりみんなで遊んでたゲームなのに。つなぎにばれないようにここまで来ていたっていうのにな。

「ごめんなさい(ごめんなさい)」  

「いや、大丈夫だ。このゲームはやっては修正をみんなで繰り返した渾身のゲーム……」

「みんな? これをみんなでやってたのね?」

 あ。

       

 ――プレイヤーを選択してください。

 画面に非常に細かい数字と記号が並んでいく。

「なにこれ? さっきまでのナレーションも途中で終わったけど?」

「それは何回もあのナレーション聞くのはだるいって玉木先輩が言うから消したんだ。あと、これは俺が好きなキャラ作れるように何万通りのパーツを詰め込んだ、最高設計仕様になっているんだ」

「使い方がさっぱりなんだけど」

「だろうな」

 俺は、つなぎと、ノーヤと、前につくってある俺のテンプレを呼び出して、キャラを作る。

 完璧だ。誰がどう見ても俺たち三人がゲームの中に入り込んだと見えるだろう。

「あ、私だ」

 ノーヤがちょくちょく普通に喋るようになってきているのを悲しく思いながら、スタートボタンを押す。

 これは二等身キャラが活躍する、横スクロールアクションだ。ストーリはいろんな先生や身近な奴をボスとしたステージが並ぶ、完全な身内受けゲーム。問題はラスボスをつなぎににしてしまったことだ。しかも難易度SSS! 相手の攻撃に瞬時に反応する、理不尽な当たり判定、隙などないというまさしく魔王そのもので、さらには桁の違うHP、恐怖の絵というこれは殺される……。

 ぱらぱーと音がして、ゲームが始まる。しかしこのゲームはやりこんだ俺達が改良に改良を重ねている。つまり今となっては素人にはクリア出来ないはずだ。雑魚一体一体がそこらへんの格闘ゲームの敵をそのまま持ってきたレベルになっていて、俺さえ手を抜けば瞬殺のは……ず……。

 つなぎの元には一体の敵キャラ、各個撃退は出来なくはない難易度ではあるが、それをするのが難しいというのがこのゲームだ。しかし、俺にさえ敵が回ってこない。

 横を見ると、コントローラーがすごい速度で動いているのが見えた。

「なん……だと……」

「進化する翼(意外と難しいゲームですね)」

 二等親のノーヤが、カッターを振り回してゴーレムをなぎ倒していく。このステージは土魔術の先生がムカつくを言う俺らの相違で作られたステージなのだ。

「へぇ、なかなかやるわね。ノーヤ」

 画面内のノーヤは弱攻撃からの打ち上げを得意とし、ゴーレム三対を同時にかたづけていた。

「家でちょっと」

 嘘だろ……俺と互角、いや、コマンドを覚えきっていない状態で俺と互角ということは格上じゃないか。家で出来るって、そんじょそこらのゲームなんかよりも難易度はぜんぜん高いはずだぞ。

「おじいちゃんが……そのこういうの好きで。カイザーナツクルとか、ストリートフャイターとかやってたんですよ」

「普通に喋れるんじゃない」

「!?」

 俺ですらやったことのないあのゲームを持っているというのか。貸して欲しい。というか、この俺よりやりこんでいるだと……。廃人とまで言われた俺の上……。

「どうしたの、さっきから貴方のキャラ動いてないわよ」

「いや、なんでもない」

 良いだろう。黒崎ノーヤ、このゲーム、撃墜数で俺が勝つ!!!



挿絵(By みてみん)








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