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最弱の英雄伝   作者: かぼちゃの骸
世界ぶっ壊すよの章
93/108

主人公がこんなにないがしろにされていていいのか!


「主人公がこんなにないがしろにされていていいのか!」

 俺が閉じ込められた八年。八年じゃなかったのは思い出した。あと、俺の名前は黒独尊じゃないってことも。

「どうかしたんですか?」

 すき焼きで腹が膨れたふーらるさん、人間バージョンが声をかけてくるが、正直、人間バージョンには用はない。ねずみに戻って欲しいんだが、今戻ると胃が小さくなって破裂するというので、しょうがないか。

「いや、叫んだだけだ。他意はない」

 もう夜も深く、他の奴は寝て、俺は真解思書の解読といっても読むだけだがを行っていた。ふーらるさんは俺が本を悪用しないか見張っているそうだ。

「他の人が起きます。大声は迷惑ですね」

 本には能力とか、魔法とか、全部が載っていた。俺が知りたいことは何でも知ることが出来る。

「何が書いてあるんですか?」

「教えない」

 さっきからそわそわして、見張りなんていいながら、この本の内容が気になるのだろう。真解思書があれば能力者を皆殺しにすることが出来る。もちろんそれは俺の力との相性が抜群だからだが、これだけでも十分な価値がある。もう一つ、俺が入学試験のときに殺されたとき、セーブアンドロードが使われていたらしい。しかし、死んだのか、もしくはただ能力を解いたからなのか、奪われたものが返ってきた。それは俺の能力者への憎しみだ。

 奪われている間も、一貫して能力者は嫌いだったが、今はその比ではない。後は偶然にも、記憶が戻ってきたことだ。ただ、漠然と憎かったものにそれまで適当な理由を付けていたが、記憶が戻れば能力者が嫌いな理由はほかにある。俺の世界征服をよくも駄目にしてくれたな能力者ぁ。

 まぁ、いい。あれは俺にも非はあった。

 ふーらると、鬼といるかと、イチも近くにいるはずだ。条件は前と同じ、そして今回は至上悠里の手の内も見えている。

「勝てる……勝てるぞ……」

「?」

 ふーらるが首を傾げている。記憶を戻してやってもいいが、並べくリスクは少なくして置いたほうがいい。


 俺の記憶が書かれていたのは真解思書だ。この本は名前の書いてあるところにそいつの能力、魔法と、かけられた能力、魔法が記される。

 俺の能力は白紙だったが、かけられた能力はブラックキャニオンニードレス。これで俺は全てを思い出した。イチとふーらるには何十にも封印が施されているが、逆にそれも俺の記憶を取り戻させた。

 いるかだけにはそういった類はなく、多分自力か偶然かもう記憶は戻っているんだろう。でなければあんなふざけた名前のはずが無い。鬼は……もともとあんな奴だから、しょうがない。正直記憶があってもなくてもいい。

 そしてなかなかいい感じに、なってるじゃないか。

 楽に世界が手に入りそうだ。

 だが、問題は月だな。あいつには頭の中見られたし、何よりもあいつの能力は、目が合った相手の思考と同調するなんてものじゃない。そもそも、能力名を言わなかった時点で違和感くらいは覚えておくべきだった。月の能力は名前を付けるならフルムーン。思考を読み取り、自分の思考を相手に植え付け、その通りにしてしまう。

 ……殺すか?

 いや、殺しとか駄目だろ。うん。

 でも能力者は抹殺、滅殺、大虐殺!

 くっそ、これがフルムーンの力だろう。月の自分を殺さないという、つまりは月が死にたいと思わなければ俺は月を殺せないし、他人に月を殺せと言うことも出来ない。しかしこの能力を自覚しているのなら、もっとやりようはあったはずだ。無自覚の発動なんだろう、そうでなければこうして俺が月を殺すかなどと考えることは出来ない。

 今現在、月の支配下に無いことは幸いだが、それ以前に変えられた思考はどうしようもない。

「気持ち悪いですよ」

「うるさい」

 

 ふーらるさんがお茶を入れてきてくれた。それを飲んで、いつ買ってきたのか解らないお菓子を幸せそうに食べるふーらるさんを見ていたら眠くなった。時計を見ると、午前三時。真解思書に書いてある気をつけなければならない能力に付箋を貼って、寝ることにする。

「ふーらるさん、俺、寝る……」

「あ、布団ないらしいですよ。ソファで寝てください」

「何で俺の家なのに、俺がソファなんだよ、逆に俺の布団で寝点の誰だし」

「蟹吉さんです」

 まぁ、そんな気はしてたけど。

 それにしてもくそ眠い。最近は規則正しい生活をしすぎたかもしれん。

 ソファに倒れこんで、俺が寝るまでそう時間はかからなかった。



 ※



「寝ましたか。そう、これは優しさです。眠り薬を入れたのは、寝不足にならないためです」

 ソファにうつぶせになった黒独君を息が出来るか心配だったので、仰向けに直す。この人は何をさっき前やってたんだろう。よく考えれば、危険図書を使ってニヤニヤしてるなんて、駄目だろ! でも、読めない。なんて書いてあるのかすごい気になる。

 黒独君の頬をぺしぺし叩いて、起きないことを確認してから、魔法を組み立てていく。

「これは決して、ただの好奇心とか、すごい楽しそうなのが気になって眠れないとかではなく、私は本の管理者として悪用をとめる義務があるのです。だから、これは、しょうがない、しょうがない。よし、いきます――我が問いには疚しきところなし、故に疚しきところなきことは、汝のやましき無いことを証明とする――ィン・クエスチョン」

 寝ている相手に、私の質問に答えさせる魔法。

 まぁ、思考力が低下するから、難しいことは喋ってくれず、答えが一言で収まるようにしなきゃいけないんだけど、十分効果を発揮してくれるだろう。

「ねぇ、さっきの本って何かいてあるの?」

 うつろな目がこっちに向く。

「あ゛、ふーらるか? 何って、能力と魔法」

 すっごいフランクな感じなんだけど、いつもこんな感じで持ってるのか。私ってそんなに威厳ないかな。友達か! 旧知の仲かよ、いや、別にいやではないけどさ。

「能力と魔法の何?」

「何って、馬鹿かよ。だから人の名前と、能力が書いてあるの。要は辞書だな」

「うん、馬鹿じゃないよ、次言ったら思いっきりびんたするから。それで何ニヤニヤしてたの?」

 こいつめ、傍若無人にもほどがあるぜ。

「ニヤニヤ? あぁ、俺たちの」

 そこまで聞いたとき、蟹吉さんが部屋に入ってきた。

「何してんの、なんかエロい」

 眠そうに目をこすりながら、蟹吉さんに指を指される。トイレにでも行ってきたんだろう、寝巻きのズボンが裏表逆になっていた。確かに、寝ている黒独君の顔に傍らに立って……いや、エロくは無いでしょ。

「二人きりで片方が寝てたらエロい」

 私のその考えを見破るようにそう言って、眠くなったのか、そこで部屋を出ていった。

 さて、邪魔の入らなくなったところで、と、さっきの俺たちが物凄い気になっていた私は黒独くんにもう一度質問する。

「さて、さっきの続きです。何を言いかけてたんですか?」

「何が?」

「俺たちの次です」

 そこまで言って、なんか目の焦点がいやに合っているということに気がつく。

「何?」

「おやすみなさーい」

「おい、待てよ」

 逃げようとしたら、手首を捕まれる。

「なんですか、なんですか、なんですか」

 大丈夫、私が何かしたという記憶は残らないはず。というか、睡眠薬飲ませたのに起きるの速いんだよー。

「俺に何した?」

「なにもしてにゃ、してないです」

「それは、無理あるよな」

「そうですね」  

 噛んじゃったよ。

   

  

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