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最弱の英雄伝   作者: かぼちゃの骸
学校ぶっ壊されるよの章
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ブラックキャニオンニードレス




 能力者の集う学校。大体の人は一年で辞めてしまう学校で、残った人もその半分が進学できずに一年のまま。そして三年の壁はもっと高くて年に十人くらいしか上がってこない。しかもそれにもSからEまでのクラス訳があり、私は四年生でSクラス。

天国だった、奨学金とか言ってお金には困らないほど学校は金くれるし、ご飯もただだし、おいしいし、授業もほとんどない。

 私は人嫌いだから、そんなに人に会うこともないけど、自己紹介なんてしたらもう、神様ーって感じの大歓声だ。四年生でSクラスが二人しかいないってのもいい、特別感が出てる。そんな私の能力はブラックキャニオンニードレス。

 能力の概要はこうだ、まず結果が存在する。結果が存在すると言うのも結果なのだが、まぁ、結果があることが必要だ。と言っても結果が存在しないことなんてないんだから、条件なしでいいだろう。その結果には理由が存在する。

 例えば……よし、君が私のところに来た結果があるよね。その結果の理由、動機を都合のいいように出来るといった感じだ。

 私はこんな能力を持ってるから、何でも出来る。さっきなんか、黒い人形が部屋に入ってきてけんか売ってきたから取り合えず、私がここにいるから来たんだろうってことで、それを変えた。私はそこにいなかったことになる。だから、黒い人形は入ってこない。つまり私がそこにいたのはどこからか瞬間移動したってことになるという、まさに神の能力。どやっ。消費する結果は、本当にこの女が死んでいるという結果。

「すいません、助けてもらったのは本当に感謝しています、ですが、すごくなんというか」

「……おうふ、土くれの癖に拙者に逆らうのか、とうっとうっ、ていっ」

 

 私は今、土と話している。

 経緯はこうだ。少し前、私は好きな漫画の発売日だと言うことでらんらんと買い物に出かけた。黒い人形が街中にいたが、そこはブラックキャニオンニードレスで避けに避け、さらには破壊された本屋を元通りに、そして店員さんも逃げる前に戻して本を買った。もう、私が本を読んでないと言う結果の、本を持ってないからと言う理由を変えれば良いと思うかもしれない。しかし、それはなんか違う。それをしてしまったら多分私はまだでていない巻も読めてしまうし、そもそも、読んでいるということにしまうだろう。それじゃぜんぜん楽しくない。

 そんなこんなで、らんらんらんらんと学校に戻ってきたら、なんか土が盛り上がって、さらにその土くれに目が生えて見つめられ、最後には話しかけられた。びっくりしすぎて、もう少しで能力を使ってなかったことにするところだった。それどころか、もうちょっとでその土くれを消すところだった。

 でも話してみると、なかなか面白い話をするし、人前で緊張する私にはなかなか話しやすい相手ではないかと、相手をしてやることにした。だが、自己紹介するのがめんどいので、私のことを土くれがだいたいは知っているということにした。名前と能力、年齢、誕生日を教えてやったのだ。

 後しゃべるのもめんどいので、私が喋ったことにしていたのだが、なんかそれを今、拒否られた。

「うっく、ここどこ?」

 ん、土くれの持ってきた呪いのおっぱいを持つ女が目を覚ました。さっき、私が土くれが持ってた女の、腕が変な方向に曲がって、心臓が止まってて、顔が真っ青、それ死んでるって結果を、腕なんて曲がってないよ見間違いだよ、ついでに心臓なんか止まってない。顔が真っ青? 貧血だよこのやろうと理由を変えてやったから当然だ。

「あああっぁぁああ」

 あ、死んだ。

 痛みによるショック死かなと思った私は、土くれに任せろよといった手前、急いでそもそも本当にダメージあったの? 寝てたのって昼寝でしょと変えて、さらにそこから生じる矛盾点を変えていく。と言ってもそんなに多くない。土くれの話から、何度か奇跡が起こって無傷ということにすれば良いだけだ。あとは、なんか大量出血して心臓も止まっちゃう奇病を作って、それに掛かったことにして、その奇病が数時間経つと治ることにしたくらいだ。

 別にもっと無理やりに偶然生き返ったーとかにしても良いんだが、そういうことすると、人間誰でも偶然生き返れたり返れなくなったりするようになるしさ、そういうのは駄目だよね。

「うっく、デイ君、しなにゃいでぇぇぇ」

 ひどい寝言だな。奇病が治ってただ寝てるだけに戻るからしょうがないかとも言えるし、同じ女の子としてこれははずいと思ったけど、おっぱいが目に入ったのでそのままにした。

「酒市さん!」

「ふぇ、わ! わわわ! 何これ!」

 あれ、何だそれ。なんか怯えてない? 変なの。

 土くれは確かに気持ち悪い、なんか泥が半ドール上になったのに、目と口がついてて、化け物以外何者でもないが、その反応はどうなんだよ。命の恩人はあの土くれだよ、いや、直接的には当然私だけど、土くれがいなきゃ、お前死んでたよと私は声を大にして言いたい。

「あ、すいません」

 土くれが謝った。

「な、何これ。さ、触らないで!」

 うん、解るよ、目と口だけであとは、砂浜で子供が作る砂山に水かけたみたいな感じだし、それが普通の反応だよね、私が一瞬びっくりしすぎて、後一歩で消し飛ばしそうになったのもしゃーない。

「あの、酒市さん」

「ひ、ひぃ!」

 あの土くれも学習しないな。取り合えず目と口がリアルなんだよ引っ込めろ。そしたら怖がられない、ことはないな、泥が蠢くのはやばいよね。



 でもさ、結構がんばってたと思うよ、私は。この黒い人形たちがいっぱいいる中すっげー大事に運んでたし。あんな姿じゃ、ほかの奴見つけても断られたんだろうな、私が返事したら泣いて喜んでたし。いい奴だよ彼は。私は会って数分だけどさ。

 むかむかしてたら、土くれは消えた。女はなんか周りを見渡してる。

「すいません。至上悠里さん、お願いがあります」

 消えたと思ったら、女が起きたので話しかけられたらいやだと隠れてた私の前に現れた。

「にゃ、や、やるでござるな、気配は消してたのになんちゃって。お願いとはなんぞよ、とか聞いてみたり。おおふ」 

「その、酒市さんを守ってくれませんか」

「い? い、いやでござる。土くれの癖に命令するなど百年早いわ、百二十歳になってから言うんだな、デュクシ」

「私四十五億歳ですよ」

「ううう、嘘乙」

「拙者は地球でござるゆえ」

「真似するなでござる」

 土くれの癖にちょっと話してて楽しい。でも、呪われたおっぱいのためになにかするのは癪だ。

 土が突然、地面の中に消えてしまった。なんだ? 出してやろうかとも思ったが、乳女が話しかけてきた。

「あの、すいません。僕……」

 僕っこ……だと……。いや、落ち着け、こいつに胸があることを忘れるんじゃない、この後どんなことをしてもこいつが男の娘であるなんて超展開はないだろ。落ち着けもちつけ。

「デイ君、あ、その、男の人をこの辺で見ませんでしたか? なんか変なのがいっぱいいてそれどころじゃないのはわかってるんですけど、ひっぐ、うえっ」

 泣き出したー。

 

 何だこいつ、泣けば何でもしてもらえるとでも思ってるんじゃねーぞ、というか、デイとかってさっきの土くれの名前じゃねーか、この野郎さっきまで拒絶してたくせにどういうことだよ! 

 ブラックキャニオンニードレスはもうひとつ使い方がある。結果の理由を変える逆だ。理由を消費して結果に無理やり結びつける。こっちはちょっと疲れるんだけど。しょうがない。

 私と土くれは二十畳の広い部屋、好きなアニメの流れるそこで、私はソファに腰掛けて、土くれはその部屋の真ん中にくりぬかれた床から生えているようにした。私はこいつから詳しい話しを聞きたいと言う理由から、この結果を生み出したのだ。消費した理由は土くれのことを知りたい。つまり、私がある程度疑問解決できれば、この結果はなかったことになる。

「な、ここはどこですか」

「拙者の能力で、作ったでござる」

「そうですか、すごいですね。でも、なぜ?」

「疑問が多すぎて今宵眠れなくなりそうでござる。だが、人の過去を知ってることにするのはなんか反則というか、おぬしの食べた今日の朝飯とか知りたくないでござるござる」

「それじゃあ、どこから話しますか?」

 なかなか物分りのいい奴だ。気に入った。

「自己紹介からよろしく」

 

 正直、泣いた。

 まず、教会で子供のために働こうとして、戸籍、学歴無いと断られるというところでひと泣き。

 他人に自分は泥で人間じゃないって言う苦悩でふた泣き。

 あと、元は人間の姿だったのかよ、それを捨てたところでみ泣き。

 最後にあのくそ女に拒否されたってとこでよ泣き。

 

「ち、地球殿でござったか」

「あなたは初めて私のことをちゃんと認識してくださった人かもしれませんね」

 シリアスなんて大っ嫌いだ。私の好きなアニメがそんな展開だったら、私はそのアニメの結末を能力で変える。最近アニメでシリアスが無いと騒がれているが、それは私のせいなのだ。

「おうふ、土くれ、拙者がせめてその体だけでも元に戻してやろうか」

「無理ですよ」

 うっく、確かに無理だった。いや、無理じゃないんだけど、自分以外の奴だといろいろと面倒だ。私にせめてもう少しかかわっていれば良いんだけど、初めてもこの土くれとしてあったしな。私と会うって言う確定した結果が邪魔だ。まぁ、会わないことにすればいいんだけどその後の変化に関われないから、難しい……。消費する結果が見つからない。

「でもさ、待ってくれよ。悲しすぎるよ、なんで、謝っちゃうわけ? もっと、俺がデイだぜ、君の瞳に乾杯とか恩を押し付けるようにすればいじゃん。そうすれば、あいつもさすがに触るなとかはいわなかったって。なんか自分が悲劇のヒロインみたいに、ありがとうデイ君とか、名作っぽいしめかたしてさ、まぁ、なんか死んだような扱いだろうけど……ごめん、ちょっと吐く」

「普通に喋れたんですね?! って、私に吐かないで! 混ざる!」

 もうバットエンドメリーゴーランドじゃん。

 

「とにかく良いんですよこれで。私は地球ですから、元の姿が受け入れられなかったら、どうしようもないんです。逆に今までが騙してたようなものなんです」

「アニメみるでござる。悲しいときはアニメ、辛いときは漫画、死にたいときはレゲェでござりけりー」

 必死に涙を無かったことにしながら、私は明るくそう言った。

「…………レゲエもかけてください」

「え……アニメ見ようよ」         

 常識で考えろ。 

 

 

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