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最弱の英雄伝   作者: かぼちゃの骸
プロローグ
9/108


 なんか夕飯のおかずがハンバーグだと思ったらカレーだった時ってカレーが嫌な訳じゃないんだけどなんか嫌な時ないか?

 

 同様に完全に死んだと思ったら死んでなかった時、そんな気分になる。


「あらためて、自己紹介をします」

 サチと誰かが話をしている。

 なんだこいつ。


「私の名前は鈴木サチです。助けてくれてありがとう」

「いや、気にするな。あれは私のせいだ」

 紹介してくれ、誰なんだ? 認めたくない現実が目の前に広がってるんだが。


「それにしても先生の炎獅子を消し炭にするとはやるな」

「えっ先生だったんですか。だってその杖、生徒に配布されるものですよね」


「あぁ、これはぱくった。それより、先生はそんなに影薄いのかよ」

 いやお前の影は濃い。どこの学校に学生服の上にマントを羽織っている奴がいるんだ。

 先生と呼ばれていたから、魔法が使えたりするんだろうか。


「それに、あんたのこと知ってるぜ。2年の目だろ」

 体が動かない。つーかこれ、あれじゃないか霊体みたいな感じ?

 幽体離脱していてーみたいな。


「だが、お前はこんなことが起きないために、居るんじゃないのか」

「すいません。完全に油断していました」

「油断ぐらいであの程度の魔獣に後れを取るわけないだろう」

 どういうことだろうか? 俺に魔法とかの知識が無いから話の内容も理解できない。


「それが、何度もやろうとしたんですが、杖が折れてしまって、それに魔石もなぜか砕け散りまして……」

 なんの話をしているんだ。

「確かに折れている。何をしたんだ?」

「それが何もしていないんですが……」

「さすがにそれはないだろう。杖が何もしていないのに折れるはずがない。それにどうやったら杖なしで炎獅子を燃やしたんだ?」


 これは悪い夢だ。この女、魔法使いか。体が動けば絞め殺してやるのに!

「あの、なんか不幸時間ってのがあって、それが終わったときに壊れてない魔石があったのを見つけて」

「もういい、別にこいつが嫌いでわざと見殺しにした、という訳ではないだろう。目が赤いしな。とりあえず、あとで職員室に来い。後で詳しい話を聞いてやる」


「分かりました」

 そして今気が付いた。手が生えてる。いや嬉しいがこれは怖い。完全に噛み砕かれてただろ。


「ところでこいつは、どうなんだ?」


「学園章は10枚所持です。私のを含めてですが」


「そうじゃない、お前の目ではこいつの力はほとんどないんだろ。しかしこいつは、帽子から鳩をだし、私たちが選んだカードを三回も当てて見せた。まるで手品のような能力だ」


 まぁ、それは手品だしな。


「しかしその枚数所持はなんなんだ? 確かになかなかの能力だったが、それだけじゃこの枚数は集められない。こいつの能力はなんなんだ?」


 そんなことより俺のちぎれた腕を治したのはお前か、マジで半端ねぇな。

 俺こんなとこ来なきゃよかった。気持ち悪い。

 

 何より、俺の腕がどうなってどうなったかが気になるがここはどこだ。

 さっきから背中冷たいし、痛い。

 

「私にもわかりません。髪の毛を拾ってこいと無茶ぶりをされましたが、それを何に使ったかは全く」 

「斉藤先生、何してるんですか? 廊下に生徒を放っておいて」

 白衣を羽織っているので、保険の先生だろうか? よっと俺を片手で担ぐ。


 いや痛ぇよ!!

 完全、今背骨軋んだ音がした! 

 ってかここ廊下か。廊下に放置されたのか、雑だな、扱いが激しく雑だな。


「まったく困ったものね、生徒をあんなところにほおっておいて」

 保険の先生だと思われるその先生は、俺を肩で担いで、廊下を進んでいく。

 その最中にそんな感じで同意を求められるが、俺からしたら、現在進行形で、あばらが軋んでいるので、困ったものなのはお前だと叫んでやりたい。


「それに斉藤先生の召喚した炎獅子に噛まれたんでしょ。でも斉藤先生がその腕、治してくれたのよ。彼の能力は超再生でね。彼に触れるもので生きているものなら、自分の体が、頭だけになっても一瞬で再生できるの。だけど痛みはすべたあの人にかえるわ。というか、貴方が一回死んだのは変わりないから結局それも無駄だったという事だけど。それの責任を感じてたのか、結構心配だったのか、あの人の親指噛みすぎでギザギザになっていたわよ」


 斉藤先生というのが助けてくれたのか。俺を殺したのは許さないが、不幸になってたことも在るし、感謝し無くてはならないかもしれない。  


「はい、保険室についたわよ」


 固いベットに投げられる。スプリングで俺の体が跳ねる。


「痛い」

「あら、喋れるようになったの? でもせっかくここまで来たなら、いろいろ試していかない? ここ以外では無いような薬がたくさんあるわよ」

 差し出された薬箱には、確かに見たことの無い薬草や液体の入った瓶がある。それには確かに興味がある。

 だが好奇心は猫をも殺す。いったいどのくらいの猫が、好奇心で死んでいるのかは知らないが、試さない方が健康に人生を送れそうだ。 


「飲まないが、効果は教えてくれ」


 む、予防線を張ってきたね。と笑ってよし、三つまで質問に答えてあげようといった。  

「もちろん、薬以外のことでも良いわ」


「俺は受かったのか?」

 やっぱり其処は気になる。教師の手助けを受けたから、不合格とかも十分にありそうで怖い。

 

「さぁ、まだ決まってないわ。そしてそれはここで決まる。時間切れといえども、あなたは学生証をたくさん持っていたし、受験生に紛れた生徒を、助けたそうじゃない」


 受験生に紛れた生徒?


 まぁそこはいい。 俺のために新たに試験とは、大変嬉しいが、今回は鳩を持ってないし他にもできるマジックなんてない。


 ここは嘘を吐き倒すしかないだろう。


「さぁ質問は後二つ、その二つであなたの合否が決まるわ」 


 質問の内容で、合格不合格が決まってしまうのか? くっ、これなんだ、自由度が高すぎてなんのこっちゃ解らない。


「3」


「2」


 なんかカウントダウン始まった!!


 ここは素直に質問するか。


「何を問えば俺が受かれるのか?」

「私がわからないことなら何でも、そしてあなたが知っていること」


 そんなの簡単だ。俺は円周率を1000の桁まで言える。

 しかし保険教師はパソコンを用意し始めた。

 こいつ、インターネットで検索する気だ。

 

  

「3」


 さっきからカウントダウン短くね。


「2」


「1」


 よし、ここはなんか藁人形の特殊な編み方3種類とかでいこう。これならインターネットには乗ってないはずだ。


「ちなみに、これはサービスなんだけど私の能力教えるね」


「私の能力は相手に問われたことを相手が知っていれば答えられる能力よ」


 能力の内容を数回、脳内で反復し、この課題が不可能であるという事を悟るまでそんなに時間は掛からなかった。


「さぁ最後の問いは?」


 いやこれも試験なんだから何かあるはずだ。俺が知っていることで、それはつまり相手も知ることになるのだが、あいつが知らないこと。


 いや、無いよね。


「ほれ、はやく」


 時間もないしもうこれでいいか。答えられなきゃいいんだよな。


「もし、運悪く8年間父親の罪をかぶって、牢屋みたいなところに入れられたとして、果たして出てきたとき、父親はなんて俺に言葉をかけ、俺はなんて答えたか」


「つらい過去がありそうだけれどまさか、そんなお涙ちょうだいで、受かれると思っているの?」

「言えるのか?」

「言えるわ」


「本当にお前に言えるのか?」

「いいわ、なら答えてあげる」


 もう忘れたかったんだがまぁいいか。

 ここらで復習しても。どっちにしろ、こいつには発音できない。


「あなたのお父さんは、私はいったい誰を殺したのかと問い。あなたは、人形って殺せるのかと答えた? なにこれ。答えてないじゃない。それに、質問を質問で返すのはマナー違反だと思うわ。なにより意味が解らない。それともちろん、残念ながら、不合格よ」


 意訳でも良いのかよ。

 やっぱダメか。発音できないから合格かと思ったんだが。


「なぁ正解はなんだったんだ?」


「あなたが答えを知らないものには答えられない能力なんだけど。合格できると思ってるの?」


 こいつ絶対許さない。別に何するってわけじゃないが許さない。


「三鷹先生、嘘はいけないな。解らないなら合格にするんでしょう」

「あ、斉藤先生」

「いや、先ほど意味が解らないと、あなたは仰った。不合格では約束が違うのでは?」


 さっきの斉藤先生か。此処の学校の人は高次元で喋ってるからか、話の内容がさっぱり解らない。

 だがこうも連続して普通じゃない奴が現れると気持ち悪いな。

  

 しかし、もっと言え。

 保険医は斉藤先生に盗み聞きですか? と露骨に嫌な顔をしている。


「あなたは、自分のせいで怪我をさせて、責任を感じているようですが、試験に私情を挟まないでください」

「私情を挟んでるのはあなたではないですか? こんな試験私でも無理ですよ。一体何があったんですか?」

  

 保険医はチラッとこっちを見た後、

「別に、ただの冗談です。ため口がうざかったので、つい」

 とため息を吐いた。

 つい、で不合格にされかけたらしい。


「それでは、合格でいいですかな」

「まぁ、ここは斉藤先生の顔を立てます」

 マジか。あきらめかけたぜ。

「では、君ついてきなさい。案内しよう」


「君、行く前に質問に答えてくれる?」


 俺は頷く。


「牢屋みたいなところに閉じ込められたって言っていたけど本当かしら? 辛くなかった?」

 いや、それはお前の能力とやらで解る事じゃないのか?

「いや、まぁその通りだが、実際はただの蔵だ。です。テレビもあったし、別に不自由は無かった」

「何をしたら8年も閉じ込められるの?」


「俺は何もしてない」

 そう、悪いことなど一つも無かった。ただ、マジョリティとマイノリティが入れ替わっただけだ。


「そう、別にあなたを最初から落そうとしたわけじゃないの。本当よ? 最初の質問で、私のバストサイズでも聞いていれば、合格にしたわ」


 それは一体どういった意味があるのか。逆にそんな奴は落としてしまえよ。


「まぁ、早く行きなさい。遊びに来てね?」


 だから、こいつら皆、全員何言ってるのか解らない。俺には見えてないものを全部知ってるような話し方だ。どうやら無事、合格できそうだ。これで安心して、作戦を開始できる。


 さて、俺たちを全否定するような能力者の巣窟。こんなとこぶっ壊してやるぜ。

 とりあえず、このさっきこっそり抜き取った薬草みたいなのを、学食かなんかに入れてみよう。




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