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最弱の英雄伝   作者: かぼちゃの骸
学校ぶっ壊されるよの章
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祠堂家 家族会議




「黒の魔力って結局なんなんですか?」

「魔力の病気みたいなものだ」

 私は、首を捻った。

 此処は、名も知ら無い山の頂上だ。これから有名になることだろう。

  

 チューリップの配置を終える。

「黒の魔力は、魔力についてる細菌みたいなものだな。魔力にくっついて、魔力の力を駄目にしてしまうわけだ」

 それは解っている。だからあれだけ魔力を使う魔法使いに有効だった。

「次に全てのエネルギーを吸収するように見えるのは、其処に駄目になった魔力が残留するからだ。うーん、空気抵抗が大きくなるというか、無意識のうちに強大な魔力の付加が掛かる」

「そしてその黒の魔力は、ある特定の家の人間の体の中に内包されていて、それを奪うことで、完成したのがこの作戦ですよね。で、黒の魔力を作り出すという話でしたけど」

「あぁ、それか。このチューリップはな、黒の魔力を作り出す。簡単だ、黒の魔力は、魔力を駄目にする魔力なのだから、魔力を駄目になった魔力から取り出せば、黒の魔力だ。例えば火の属性魔法と、水の属性魔法はぶつかり合うと混ざり合う。アウフヘーベンということも在るのだろうけど、一般論だ。このように駄目になった魔力は簡単に作り出せる。それから魔力を取り出せば黒の魔力を作り出せる。もちろん、それには黒の魔力が必要だった。サンプルが無いと流石の私でも作り出すのは難しかった」

 どこら辺が簡単なのか、さっぱり理解できなかったが、説明を終えたこの子の顔が満足そうなので、いいだろう。


 チューリップが、芽を出し、花まで一気に咲いた。

「帰ろう、もう私たちの仕事は終わりだ」

 可憐がやっと、山を登ってくるのが見えた。

「置いて行かないでくださいよぉー」

 私は登ってきたときと同じように、研究者であるこの子をおぶって山を降りる。

「待て」

 突然目の前に、六人の黒いフードを被った人たちが現れる。フードの頭のところに、円と十字を組み合わせたような紋章が見て取れる。

祠堂まつりどうの一族か」

「まぁ! よく知ってらっしゃるわね」

 いくらなんでも早すぎる。

「我らが秘術。こんな事に使われるわけには行かない」

 


 ※


 

 時間は戻って、黒の人形、バルーンが学校を占拠したときまで戻る。

 夢塗 梓の部屋。

「さぁ! 如月さん、この窮地をどうやって脱するかを考えましょう!」

「その前にリリーってのを助けてやれ」

「……はい」

 ポンッと、びしゃびしゃに濡れたリリーが一瞬現れて、ポンとまた消えた。

「これでいいですよね」

 どうやら、今度はちゃんとしたところに還したらしい。


「帰る方法とかあるのかよ」

 夢塗が不安そうにしているが、ちゃんと手はある。情けなくも在るが、今回は活用するしか無いだろう。

「祠堂家は、はっちゃけると、影が薄い。多分電話すれば、暇しているだろうし、迎えに来てくれるだろう」

 家に電話を掛ける。

 もうすでに祠堂家に電話を掛けられるという時点で、家として、オープンすぎないかと思うが、もうどうしようもない。

「いや、流石に、この騒ぎじゃ、迎えにとか無理だろ」

「はい、こちら、黒魔法総本家、祠堂家です」

 夢塗の言葉に重なるように、家に繋がってしまった。というか、なんだその和菓子店みたいな対応は。

「迎えに来てくれ」

「んだよ、如月かよ。他の家から救援要請かと思って期待しちゃったじゃん」

 いや、残念がってるんじゃないよ。というか、父か。

「黒い人形に襲われたりしてないのか?」

「あぁ! まったく来ないね! 逆に町までいって二、三匹叩き潰してむなしくなって帰ってきたところだね! つうか、爺さんを迎えに行かせるから。切るぞ。お前と電話してると、誰かが助けを求めてくるのを取りこぼすかもしんねーじゃん?」

 本当に切りやがった。

 というか、家頭が電話番してんじゃね―よ。

「ひゃっはー、黒刺有限雷光!!!!!」

 電話が終わってすぐに、外が騒がしくなる。

 すぐに、祖父に電話をする。

「もしもし」

「どこにいる、孫よ!」

「俺を指標に転移してくれよ」

 すぐに、祖父が、部屋の中に現れる。

「本当に来た」

 夢塗が呆れたように呟くのが聞こえた。それもしょうがないだろう。他の家は、黒い人形と必死に戦っているだろうから。

 それには理由がある。俺の家は、日本は日本でも、孤島に立っている。流石に孤島まで、侵略しようと思わない、というか、祠堂家しかないのに、意味が無いといってもいい。


「む、ダークスロベザードか?」

 祖父は、俺達を見渡し、クローフードに気が付いたらしい。

「クローフードという名前らしい」

「こんにちわ。この姿では初めてですね、お爺様」

 祖父の、興味は其処には無かったのか、ドアの方に集まっている黒い人形のほうに行って、

「黒千道!」

 というか祖父よ、魔力は大丈夫なのか。ハッスルしすぎだろう。

「だ、大丈夫ですかね」

 クローフードも同じことを心配しているらしい。


「祖父、魔力は大丈夫か」

「安心しろ、もう逃げるぞ」

 俺達は闇に飲まれる。

 祖父の魔力に包まれた瞬間、祖父の、何で他の家は皆窮地に立たされてるのにわしの家はこんなに平和かなぁ! というやりきれない思いが伝わってきた。


 

 ※



 祠堂家、第二回家族会議。

 

 父と母、祖父と祖母、そして夢塗と、寝たままの茂部、クローフードが今、円になるように座っている。

 まず、父が立ち上がった。

「さて、此処から遠く離れた日本列島では今、黒い人形の襲撃により、混乱の極みにある! あの黒い人形は正直厄介だ。魔力を吸い取るだかなんだかで、倒せば倒すほど、魔力が急激に消費されるらしい。しかぁし! 我々祠堂家に共通する、他の家に負けないというものはなんだ!」

「はい! それは、干渉されないという、徹底とした精神、つまり馬鹿げた修行。滝に打たれて三日過ごすとか、一ヶ月絶食したりとか、他の家では絶対にやってません!」

 クローフード……そんなふうに思ってたのか。

「……そんなことしてんのか。と言うか、私がここに居ていいのか?」

 夢塗が尋ねてくるが、そんなことは知らない。父が連れて来たんだからまぁいいんだろう。

「そう、干渉に対する抵抗力! つまり我々は魔力など奪われはしない! ただ、ここで大手を振って自分から世界を救いに言ってしまうとマッチポンプとか言われそうだ!まぁ、我々もネガティブな感情を力とするので、正直戦い続けるのは無理だ。なので議題はバン! どうやったら目立てるか! はい、其処の夢塗家の君、どうしたらいいと思いますか」「私? あ、いや、やっぱこう、悪の親玉みたいなのを倒せば、英雄みたいな……」

「それだ!」

 恥ずかしい。こんな親を持って俺は恥ずかしいよ。

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