踊る理由を決めるは誰
放送室。涼は少し休んだ後に、学園の外までみんな一緒にワープさせた。
どこかの公園だと思う。其処にも黒い人形はまだちらほらと居たが、私たちを襲ってくる様子は無い。情報は正しかったようだ。
ワープする前、ニュースで、黒い人形について、魔力を追ってくること。魔力を吸い取ること。体力など、エネルギーなら何でも吸い取ってしまう事が解明されたとの情報を得ていたので、私の能力で、みんなの力を封印した。
私の能力は私が作った服、製織品を自分から身につけてもらうことで、その人が自分の力ないで出来ることを効果として付与できる。
元々空を飛べる人になら、もちろん力は消費させるが、空飛ぶ羽を作ることが出来るわけだ。
この能力で、みんなの力を無いものとした。響にはシュシュ、涼はお馴染みのかぼちゃの被り物、ノーヤさんには、距離感がつかめなくなるから止めた方が良いと言ったのに、どうしてもと言うので、眼帯を作ってあげた。私自身はリストバンドだ。
これを外せば、元通り力を使えるようになる。それまでは普通の人間とそう変わらない。
「特異点の定めか……(さすがSクラスです! 私都市伝説かと思ってましたけど、本当に凄いですよ!)」
「な、なんか新鮮だな、素直に褒められるの」
涼とノーヤさんの会話の内容は解らない。正確にはノーヤさんが何を言って居るのかさっぱり解らない。
まぁ、涼が褒められているということは解るのだが、果たして何を褒められているんだろうか。
「指標の思惑は何処に? 前世の記憶の在り処は? (あの、そう言えば、何で私だけと言うか、私を仲間に入れてくれたんですか?)」
「んー、いや、運命?」
あ、涼が何かを聞かれて口ごもっているわ。
きっとあれね。何で私を助けてくれたんですかとか聞かれたのね。
間違いないわ。あいつ、シルクハットにモノクロスカートを制服に申請し、さらに名前も黒崎ダークネスとか言ってたから、それがツボに嵌っただけで助けたからね。そういう事を誤魔化そうとあたふたしているに違いないわ。しかもあの訳の解らない話し方。涼は理解できるみたいだけど、それも含めてき、希少価値だ、とか裏で呟いてたのを私は知っているんだから。
「運命……いい響き(う、運命なんて、て、照れます)」
おかしい。
涼はかぼちゃの被り物を被っているのよ?
それなのに何なの? この良い感じの雰囲気に発展するわけ? そしてあの人はさっきから何を話してるの?
困惑していた私を響がちょんちょんとつつく。
「なんか焦ってますのぅ、つなぎさんや」
「うるさいわ」
足を今度は踏み砕いてやろうとしたが、あっさりと避けられてしまった。
「ここで、男の子を振り向かせる、必殺技を伝授してあげようか」
「……聞かせて」
「わぉ、マジで焦ってるじゃないですか」
今は耐えるときだ。
別に、その男を落とす技なんてものを教えてもらっても使う機会なんて無いが、天文学的な確立で、四年間一緒に居た私と、会って数時間のノーヤさんの二人で、何が違うのか解るかもしれない。
それにあんな風に、二人だけの世界で会話するのを止められる方法を教えてもらえるかもしれない。
「つなぎさぁ、なんか今、自分の中で、自分でも訳が解らない言い訳して無い?」
「……早く教えないと、明日から歩けない体になるわよ」
「解ったよ、余計な事は言いませんよーだ。耳貸して」
話は聞いた。
私にも簡単に出来ることだ。まず私がこのリストバンドを解く。
黒い人形が寄ってくる。
これは驕りなどではなく、実際に涼は私を庇おうとするだろう。
其処で逆に私が、涼を押しのけて身代わりになり、死ぬ。
死に際に、貴方のこと、嫌いじゃなかったわ……。と言う。
「完璧でしょ?」
「足を出しなさい」
私死んでるじゃない。
「そもそも、私は涼の事を嫌いよ」
「え、それ、マジで言ってるんですか」
何を不思議そうな顔をしているんだろう。
「雫選べ、与えられし者よ(先輩方、喉とか乾いてないですか? 私、買ってきます)」
ノーヤさんが私たちの方にいきなり、話しかけてくる。
でも何を言っているのかは、全然解らないのだけど。
「つなぎ、翻訳宜しく」
「無理でしょ」
小声でそんなことを言っていると、ノーヤさんは慌て出し、
「あ、あえ、の」
と、今度こそ訳の解らない音を出し始めた。
これは素直に涼を呼んだほうがいいわね。
「ちょっと、涼! って何処に行ったの?」
「…………自由を求めて?(あ、外だぁーってどっかいっちゃいました)」
いや、だから解らないって。
「私の能力が開花するときが来た様だね」
「そうね、迷子の捜索に最適ですものね」
響の能力は、確かニューロンシグナルだ。
たいそうな名前だが、テレパシーだ。ただ、その範囲と威力がBクラスになれるほど強い。歩くケータイ電話だ。
「んっと、なんか、豪遊だーとか言ってゲームセンターで遊んでるみたい」
まぁ、四年ぶりの外でテンション上がるのは解るけど、良くこの状況で遊ぼうと思うわね。
「雫選べ、与えられし者よ(あの、先輩方、喉とか乾いてないですか? その、他にもアイスとか……)」
※
「ゲームセンターに人がいない……だと」
これもあの黒い人形のせいか。皆が皆、外出を控えているんだろう。
せっかく四年ぶりの外なんだ。とりあえず皆にも危険は迫っていないし、ゆったりと遊ぼう。
俺は元々、家族も一般人だし、魔法も学校に入ってから一寸使えるようになっただけで、関係ないといったら関係ない。あの学校だって、事故で高校の勉強が暗号と化したからダメ元で受けただけだ。
よっしゃ、遊ぶぜ! ってことでみんなを軽く巻いてきたんだが、人がいない。
まぁいい。個体は生きてるし、CPU相手に格闘ゲームでもしよう。
それにしても、黒い人形か。結構強かった、いや、もちろん一体一体は倒せないほどではないのだが、多くなるとあの、体力を奪っていくような構造は厄介だ。
考え付く限り、全ての攻撃方法で、余計に力を使わせる。せめて、あいつらの動力源がわかればいいのだが、倒してしまうと跡形も無く消えるのは何でなんだ?
流れを見極めなきゃ成らない。
それは格闘げーでも鉄則だ。
相手の目的、手段、結果を理解して、対策を考えろ。
目的は解らない。手段はあの黒い人形だ。結果は……能力者の殲滅か? 明らかに構造が能力者、魔法使いを目標として攻撃を仕掛けるようになっている。
「世界征服?」
格闘ゲーは飽きた。やっぱりCPUだと、動きがワンパターンだ。
知らないゲームを探そう、物落ち系でもしようか。
ぷにぷに? あぁ、四つ同じ色を隣り合わせに配置すると、消えるのか。
それにしても世界征服……は違うな。支配するなら、表に出てこないとならない。あんな黒い人形では、能力者は殺しきれない。そりゃ、暮らしづらくはなろうが、流石に生き残ってる奴のほうが多いだろう。
私がこの世界の支配者だと行った瞬間に消し飛ばされる。
せめて無敵の防護力が必要だ。だが、この世界は結構インフレしている。地球を割れる奴がごろごろいるのだから、それはほぼ不可能だ。
「連鎖! フャイヤー、サンダー、ダイヤモンドブリザード!」
このゲームの魔法使い、色々常軌を逸しているな、属性魔法の種類が多彩すぎるだろ。一体何処で魔法を習ったんだ。
何となく、この人形が少なければ、能力者に対する無差別な恨みつらみを持つ科学者あたりの発明品ってとこだ。しかし、こんな数を一気に投入できるなら、金持ちがバックについてるとしか思えない。それもメディアに露出せざるえないほどの大金持ちだ。
うむ、かみ合わない。
金持ちと、黒い人形の標的が能力者であるってことは外せないよう要素だ。
「ふにゃにゃーにゃん、やられたワン」
ゲームの相手キャラが、負けを宣言した。
このキャラクターは犬なのか猫なのか。
金持ちの目的はなんだ? 今の金持ちは例外なく能力者だろう。それも結構高いレベルで無いと、今の社会では出世できない。
自分以外の能力者を潰して、自分の優位性を高めようとした?
「次がラスボスの間よ!」
お、やっときたか。と思ったら、案内役の女がラスボスだったぞ。
優位性を高めてどうするんだ? だが、そんなことをすれば、経済は混乱を招き、ダメージを受けるのは大企業だ。
「くっくっく、これが最終形態やー」
関西弁になったぞ。
「やられたぜよ~」
キャラぶれすぎだろ。
でも、今の奴もこんな感じだ。やることなすこと中途半端。一貫性が無さ過ぎる。愉快犯にしては強すぎる。本気にしては無差別すぎるし、弱い。何かをしたいという意思表示も要求も無い。混乱に乗じてと言った事も無かった。爪が甘いなんてものじゃない、その爪があれば何かしらのことは成せただろう。
「くっくっく、馬鹿め、お前は勝利を掴んだとは思っているようだが、これは小手調べ。せいぜい一時の幸せにすがっているが良い。――次回作に期待してください!」
「これだ!!!」
これはただの試験運用。だとすれば奴らが次に考えるのは、燃えすぎた火の火消し。
次で、一旦終わらせる気だ。
そして、人々に全てが終わりだと認識させ、その間に本命を準備する。
「なーにがこれだ!!! なのよ」
「痛い!」
後ろを振り返ると、つなぎが仁王立ちで、立っていた。
「こんな時にゲーム? ふぅ、もう私が言いたい事解るよね?」
「2P対戦したい?」
「違うわ」
残念だな。
「蹴りたい?」
「貴方、私を何かこう、変態に仕立て上げようとする悪意のある聞き方をするのね」
いや、足を振り上げて置いて、蹴りたくないは無いだろう。
「状況を説明してあげる。まだ、黒幕は捕まってないの。これからどうするか決めなくちゃなら」
つなぎを手で制す。
「……長くなりそうだな、だけど俺の中で答えは出た。次は間違いなく、一発でっかいのが来る」
「聞いてあげてもいいわ。私、人の思惑とか読み取るの苦手だから、貴方のほうが正しそうだし」
こいつ、他人の気持ちとか理解出来無さそうだもんな。バレンタインとか、みんなにチョコ型の人形やってるらしいし。俺は普通のチョコ貰ったけど、他の奴はこれ、どうすればいいんだ? って感じだろう。
俺は、ゲーム機に新しいコインを入れながら答える。
「ネクストステージは、ラスボスを、魔法使いや能力者が力を合わせて、愛と正義とハッピーエンドの甘ったるい茶番が展開される」
かぼちゃを取る。
このかぼちゃは、トラウマからの逃避で被っているんだが、周りはつなぎしか居ないんだからとっても良いだろう。
「俺達の選択肢は二つ。茶番に参加して、みんな仲良くハッピーエンドに付き合うか。もっと深くまで、トゥルーエンドに向けて動くか。ただ理由が無い、つなぎが決めろ」
「……私が?」
「そうだな。お前は正義感が強いから、他人を守りたいとか言っちゃうんだろ?」
つなぎは馬鹿じゃない。だが、正義感も強い。
言葉があれば、それを正しく理解出来る奴だし、俺との四年の付き合いも伊達じゃない。俺だけなら、もちろんこんなゲームには参加しない。どちらかが勝って、負けて、引き分けても、大勢の人が死ぬような奴は大嫌いだから、絶対参加なんてしたくない。
もちろん、つなぎが参加するなら俺も出なくてはならないだろう。
絶対に殺させない。
「……そうね、決めたわ。まずは家具よ」
「は?」
家具? なんだそれ。
「とりあえず新居を構えないとやってらんないわ。野宿は絶対嫌、ホテルもビジネスなんて泊まりたくないし」
「…………しばらく玉木先輩の家に泊めてもらおう。もうワンゲームやって良いか?」
「そうね。対戦してあげても良いわ。これ得意なの。携帯ゲームでやったこと在るわ。ふふ、驚かないでね、私、最高十二連鎖出した事あるのよ?」
「知ってるか? これ三十連鎖以上出すと、ずっとおんなじ台詞になるんだぜ」
「片手でしか、コントローラー触っちゃダメだから!」