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最弱の英雄伝   作者: かぼちゃの骸
学校ぶっ壊されるよの章
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回りすぎた歯車



「くつろぎすぎじゃん」

 俺の家、と言っても本家からぱくって来た金で借りている部屋だ。安いマンションを借りていたんだが、そうすると、何処からか嗅ぎ付けてきた本家の人間によって大家が買収されて追い出されてしまう。大学の寮に入るときに、何故引き払わなかったのかというと、寮に入らされるなんて知らなかったし、学園の外には出れない。そもそも忘れていた。

 部屋の中には、先に蟹吉が家が無い! とか言うので、そもそも家があるほうが珍しかった。強いほうから襲われているので、対策を取る前、つまり魔力、能力を追ってくるという性質が解る前までは結界など、逆に黒い人形を招く結果になっていた。 

 そんなわけで学校に居る奴らはほとんど家無き子だろう。町並みも、あまり建築物に変化は無いが、人通りはぐっと減ったように見える。流石に外出を控えている奴もいると思うので時間がたてばもう少し増えるとは思う。

「肉が来ない。漫画も無い。蟹吉は寝るしかないじゃん」

 そう、蟹吉は今、俺の家に居る。後は時雨と庸介も来た。俺達は黒い人形に素通りさせられるので、普通に帰ってこれた。他のみんなも、ばらばらに帰って行った。庸介も一人暮らしで、帰り道が一緒だというので、一緒に帰ってきたというか、流石に歩きは無いのでバスの中で一緒だった。こういう災害の後は治安が悪くなると時雨が主張するので、纏まって帰る事にしたのだが、能力も魔法も使えば自滅する世の中で、そんなことをする奴は居なかった。しかし、庸介の家はぺちゃんこに潰されていて、成り行きでどうしようもなく俺の家に来た。

 時雨は親は外国にいるらしい。

「友達なんて君しかいないんだ!」

「蟹吉も友達になるよ!」

 がしっと抱き合って、親友になったらしい二人は当然のように俺の家に上がりこんだ。


 家に帰ってから、時雨が図書館はどうなったかなと言うのでフーラルさんのことを思い出して、急いで戻ったのだった。

「お邪魔します」

 最終的にねずみの姿になってくれたフーラルさんは、俺の手に乗ってくれてもいいのに頑なにそれを拒み、おずおずと部屋に入ってきた。

 他の二人で買い物に行ったらしい。庸介は黒い人形を爆発させたとか聞いていたので、能力に黒い人形が寄ってくるんじゃないかと気になったが、本人曰く、そうだったら総合クラスに入れられてないよということだった。話し方の雰囲気も何か変わっていた気もするが、俺の勘違いかもしれないので言わなかった。

「少し見直しました。なるほど、籠を隠してある様子は無いですね」

「籠?」

「いえ、なんでもありません」

 変なフーラルさんだ。そんな事よりも俺が学校に行って帰ってきた間で結構な時間がたっている。何をやっているんだろうか。もう帰ってきてもいい頃はとっくに過ぎている。

 迎えに行ったほうがいいかもしれない。

「蟹吉、二人とも遅のはなんでだか連絡着てるか?」

「あー、スーパーとか開いてないから、隣町までいってるんだって。でも、もうすぐ来ると蟹吉は思う」

 そんな話をしていたからか、時雨と庸介が沢山のビニール袋を抱えてやってきた。

「幾分か値段が上がっていたので、買いだめをしておいたほうが良いと思った。それで遅くなった」

「すき焼きだー」

 すき焼きの鍋など無いので、普通にそこ深い鍋をガスコンロに掛けた。というか、すき焼きってどうやって作るのか知らない。

「誰かすき焼き作り方知ってる?」

 蟹吉の声に誰も応える奴はいなかった。

 ちょっとしたミーティングが始まった。

「最初に肉焼くの?」

「どっちでもいいのでは無いだろうか、途中で肉を入れるのだから」

「なんか面倒だな。たまごにいちいち漬けなくていいだろ。入れちゃおうぜ」

「卵入れたらご飯も入れよう」

「あの、なんか色がおかしいんですけど」

 まぁ、美味しかった。

 それに自分の部屋を狭く感じたのは初めてだ。 

「これからどうする? 蟹吉は親を探そうと思うけど、宛てがないんだよな」

「いや、まず部屋を探せ、職も探せ」

 なんだか、パジャマと着替えを広げ出したので不安になり口を挟む。

「僕は、親は無事だけど、帰ってくるなって言われた」

「……いや、何も言えねぇよ」

 複雑な家庭環境を垣間見せられても困る。



 ※

 

 

 上手くいきすぎだ。

 私は今となってはしがない保険会社の管理職であったはずだ。

 そして今回は黒の魔力、魔道人形バルーン、ピエロの試作機のテスト運転のはずだった。完璧に足が残らないようにし、架空の人物が行なった事だという情報もダミーとして何通りも用意した。

 結果は魔法の大きな家と言われるものの拠点はほとんどが壊滅。戦闘訓練紛いの授業をしている魔道学校もほとんどが機能を停止し、職員にもかなりの損害を与えることができた。バルーンもピエロも私は機械屋では無いのでよく知らないが、黒の魔力を詰め込んだロボットだ。黒の魔力というものが、魔法にかなる有用だと言うことで、あらゆる機関に黒の魔力を奪取する、これも黒の魔力を詰め込んだロボットを配置した。

 特に黒の魔力が例の学園で突然大量に奪えたので、大量投入が決定した。

 基本的に黒の魔力には、減るという概念が無いらしい。黒の魔力は使えば逆に増え、ダメージを受ければ受けるほど増える。そして際限なく相手の魔力を吸い取るというので、減らないわけだ。もちろん、限界を超えた威力の攻撃では壊れるのもしょうがない。しかし、その攻撃をしたものは体力も魔力も大量に消費するだろう。

 そんなカでの数の暴力だ。

 理想では無敵だったが、実地をやるまで私はそんなに上手くいくわけが無いと思っていた。

 だがどうだろうこれはやりすぎの感も否めない。

「渋い顔ですねー。眉間のしわが増えますよ?」

「いや、やりすぎかと」

「もう、その台詞、今日だけで何回消費する気ですかー」 

 からかうように、可憐は笑い、しかし私の気は晴れなかった。

 今はいいかもしれないが、これでは流石にもう止められない。

 家が潰れたとはいても、数人は逃げるなりなんなりしているだろう。


「そうじゃなくても、今日は大成功祝宴会なんですから、笑って笑って! まぁ、大とかいっても二人しかいませんけどね……。でもでもイエー!」

 問題はこれからだ。

 能力者ってのも、魔法使いも、大物は言われている通りなら、私たちを消し飛ばせる。特定されたら終わりなのだ。

「イエー」

 チキンレースが一気に暴走した。せめて第三の魔道人形が出来るまではこんなに大事にするべきではなかった。

「イエーってやってくださいよ。私が痛い子みたいじゃないですか」

「い、いえー」

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