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最弱の英雄伝   作者: かぼちゃの骸
学校ぶっ壊されるよの章
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図書館陥落




「あ、そういえば、どうやって此処まで来たんですか? 廊下に出ると、黒い人形に襲われるでしょう?」

「外に出たのか?」

「出てはいません」

 ねずみ憑きの能力を舐めないで貰いたい。食費の節約以外にもちゃんと使えるのだ。

「ウィークポイントセンスです。……自分が死ぬのをを見れるっていうなんと言うか、神様は私を嫌いなんでしょうね」 

 ……使えるでしょ? もう私は何回自分の死んだビィジョンを見せられたことか。

「家を出るときに交通安全で死ぬ自分を見れたりするわけ?」

「あぁ、そう言うんじゃないんですよ。要は妄想です。黒い人形か、私もそれなり強いし勝てるかなと想像すると、その妄想が勝手に進んで私が死ぬんです」

「それなりに強いんだ」

 あ、絶対信じてない。この姿になると誰も信じてくれないんだ。これでねずみの姿で言うと信じてもらえるってのも変な話だと思う。此処は私の取って置きの自慢話を披露しよう。「宿女家って知ってます?」

「雑魚子の家だな」

「魔法の大きな家のとっても強い家頭さんが魔導書、あ、昔の人が魔法を詰めいれた魔力を供給すれば魔法が出る奴なんですけど、勝手に持って行かれてしまった時がありましてね、今思うと、何でそんなものを家頭さんが持ってたのか解らないんですけど、私はそれを取り返しにいったんです。ですが、門前払い、知らぬ存ぜぬで、お茶も出してくれません。其処で私は家頭をさっきの魔法で打ち破り、見事、本を取り返したという実績を持ってます」

 まぁ、寝込みを襲ったんですけど。

「へー」

 なんかあんまり驚いてない。この話をした人は皆、まったく信じないか、私を尊敬するかのどちらかなのに珍しい話だ。そういえば、黒独がどうやって此処まできたのか聞いていない。もしかしてめちゃくちゃ強いんだろうか、でもそんなふうには感じない。というかウィークポイントセンスでも、私と戦って私が死ぬのは確定できない。

「どうやって此処まで来たのか答えてもらってないんですけど」

「あぁ、それか。黒い人形はどういう原理かまでは良く解らないが、魔法を侵略するというか、なんだろうな、打ち消すらしい。魔法が効かないわけでは無いんだが、魔法が当たっても威力が弱くなっているという」

 えーと、どうやって来たのか聞いたんだけどな。

「つまり、どんな結界も長時間黒い人形に触れていれば打ち消されてしまう。これは魔法の家が襲われているのから見ても、言える事だ。そしてここの図書館に仕掛けられてるやつも廊下に効果を発揮してるんだよな」

 えっと、確かに、廊下で来れる人と来れない人を分別している、これは本を傷つけられないためでも在り、この学校の方針でもある。そして廊下には黒い人形が沢山居る。でもまぁ、ここに掛けてあるのは他の教室と違って、魔力元が最高峰の魔道書から借りたものだ。そう簡単には……不安では在るので、魔法陣を確認すると……薄い、魔法陣が灰色になってる!

「黒い人形は魔力と能力者を指標に襲ってくる。俺はそんなもの無いから襲われなかっただけだ」

 此処には魔道書が、しかも飛び切りのものが沢山ある。その魔力保蔵数はぴか一だろう。もし、迷いが解かれてしまったら一斉に黒い人形たちは此処に終結し、私が大切に保管していた本をぼこぼこに殴りつけるのかもしれない。というか、まず私が危ない。

「ちなみに、近くの廊下に半端ない数の黒い人形が」

「もう言わないで!」

 とりあえず、この長年愛用してきた図書館の部屋は捨てなければならない。とりあえず本だ。

「我、クロードンベリン館長の代理。姿映鏡」   

 図書館の姿が一気に様変わりする。天井はものすごく高くなるし、広さも三倍くらいにはなる。隠されていた本が全て姿を現した。

「ごめん、手伝って欲しいんだけど!」

「冷や汗酷いな」

 もう、何でそれを早く言ってくれないんだ。本が壊されても館長に殺され、そうじゃなくても死、時間が凄く無い!

「絶対本を傷つけないと誓って。積み上げても、ボコボコニだから」

「前もボコボコにされたけどな」

 一寸前にこき使ったことを言ってるんだろう。だけど、都合がいい、なかなか筋が良かったのを覚えている。

「速く! 此処からそっちの本棚にある。手袋して! スタンって書いてある本持ってきて、玄関近くにそっと置いて! 終わったら翼の上巻とジキルを全部とその一つ隣のモードを同じく配置、あとは森って本があるんでそれを私のところに持ってきてください!」

「……管理番号とか無いのか、一つの本棚にどんだけ本が詰まってるんだよ」

「そんなものを付けられるわけ無いじゃないですかぁ!」

 最後は泣き声だ。

 本棚という本を引き抜く。

 本を収納できる本だ。だが、それにも魔力保蔵量には限界がある。普通の魔道書なら無限に収納できるといわれていても、此処にはそうじゃないのが多い。

 一体何冊捨てなきゃならないのかを考えると泣きたくなる。私の人生何回遊んで暮らせるんだろう。国が買えるぞこの。

 貴重なものが入ってる本棚ごと一気に本棚という本に入れていく。それはいいのだが、これでもこのままでは時間が掛かりすぎる。この本棚という本は、改訂版が二冊出ているので、合計三冊作られた。その三冊全てがここにはあるが、このままでは、蔵書の半分入れたところで限界が来そうだ。

「森持って来たぞ」

 意外と速い! しかもちゃんと両手で本を持ってる。

「才能ありますね! 今度この本たちが無事だったら、私の助手で働きません? 自給は四百円しか出せないですけど……」

「それよりさ……逃げる算段は付いてるのか? ワープが使えるんならワープしたほうが早いだろ」

「ワープなんて、本の力が強すぎて無効化されますよ! そんなことよりこれで本をしまってください。此処の本棚からあっちまでが特に重要な本ですから、ページを捲ってくれればいいですから」

「いや、だからどうやって逃げるんだよ」

 解っている。魔力を人形が追ってくるのなら、もはや持っているだけで痺れるほどの魔力にまで膨れ上がった本棚を持って外を歩いたら、完全に囲まれて、リンチにあうだろう。だから。

「逃げません。迎え撃ちます、というか、何処に行っても危険でしょう。ですから、本を一箇所にまとめ無きゃなりません。というか、テロの目的がこの本である可能性はかなり高いです」

 ニュースでは魔法の家も襲われてるという話だったが、此処に来た目的とそれは別物かもしれない。

「填最って奴が空間を作れるんだ。其処まで逃げ切ればいいんじゃないか? というかそのつもりで来たんだけど」

「無理です。上下で上に置くと本の重みで空間が崩れます」

 だからゆがみの中で保管してたのだ。そうでなかったら、誰にも入って来れない空間を作り出してその中で保管している。そうすれば、私もバイトとか、仕事を見つけて、三食でビスケット一枚なんて食生活を送っていない。

「? あ、来たぞ」

 扉を置けて、黒い人形がなだれ込んでくる。

「四つ目の睨みは全てを跳ね返す。形成されし大剣に柄は無い。裏切る事の無い忠義を示す。瞳を開け、忠義を尽くせ、装備心霊――オリジンスペル――フーラル・コレストレイ。空剣」

 まず、先遣隊だろう。二十人を一気に空気で作った剣で力押しでねじ伏せる。

 これが魔力を侵略される感覚か。剣の形を維持するだけでもかなりの魔力を使う。

 目を四つとも開けて、本を捲っていく。黒独はちゃんと配置していてくれたらしい。まずはスタンだ、転ばせる魔道書、本の全てに目を通す事が魔法の詠唱になる。ジキルの中の二重のページを開く。これで、二重に呪文を唱えられるはずだ。

 モードと森の本を同時に開いて音読していく。

「迷い、もとめられぬ客人よ、世界の一説――――仲間に引きいれよう」 

「燃えろ、来たれるときには遅かった――――穂守れ火」

 さらにスタンも読み終わり、本を閉じる。

 黒の人形は全て転び、それを越えてきたものは、転んだ人形から生え突き出した木によって突き刺され、最後に火によって燃やされていく。

 しかしそれでも、魔法が殺される。黒い人形は死んでいった仲間たちの屍を越え、一斉に入ってくる。

 人形の腕が伸びる! 目で軌道を変えるが、その曲がった軌道の先で本が破壊されていく。

 考え付く最強の防御の壁もこんなに簡単に越えられた。  


 私の魔力ではこれが限界だ。

「逃げよう」

「空剣!」

 黒独が私の手を握って、連れて行こうとするが、私はクロードンベリン館長代理、プライドも誇りも命も全てここにある。

「スタン!」

 此処から先は引くわけには行かない。

「お願いです。本棚の三冊、重ねてでもいいから安全なとこに!」

「重ねると、ページがくっつくから止めて欲しいな。そもそも大前提として、お前が諦められるように我らが抵抗をしていないというのに、なんなのだ」

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