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最弱の英雄伝   作者: かぼちゃの骸
学校ぶっ壊されるよの章
75/108

黒崎黒(ダークネス)本当の名前は捨てました 

「皆来ないな」

 洞窟の最奥。

 手持ち無沙汰になった私は、涼と二人きりに戻ったそこで、トランプをやっていた。

「あなた、苛められてるんじゃないの?」

「流石にそれは無いだろ、あ、ロイヤルストレートフラッシュ」

「流石にブラフね、勝負」

 二千円を叩きつける。

 私の手はフルハウス。お互いに交換は二回だけなのでかなり強い手だ。しかし、涼の手札には赤い五枚が完璧に揃っていた。

「……死ね」

「こわっ」

 まぁいいわ。どうせこいつにゲームに勝てると思ってないし。オセロでもチェスも将棋もカードも全部、研究ってレベルでやりこんでるし。暇なんじゃないの?

 そんなことより、もう絶対こいつに服は作ってやら無いわ。こいつに筋肉を出す隙は与えない。本当に黙ってれば、いえ、筋肉好きでなければ、それなりに見られる顔だというのに。というか、それなりの顔でなんで顔を隠したがるのかしら。このかぼちゃ頭に何のこだわりがあるのかしら。何回聞いてもロマンだ! とかしか答えないし。いえ、もちろん、それが答えということも無いことも無いというか、その可能性はかなり高いけども。

「解ったよ、そんなに凹むなって、はんで付きでやろうぜ。将棋やろう。俺歩と王一枚だけでいいぜ」

「それで負けたら、私がただの馬鹿みたいじゃない。やるわ」

 とりあえず、飛車の前の歩を動かせばいいのよね――――

「――負けたわ」

「こっちがびっくりだわ」

「なによ、こんなことで、人間の価値が決まると思わないで!」

 そうそう、能力とかは流石に勝てないとして、勉強も、こいつの方が頭いいけど、運動なら、いや、下半身不随のこいつと比べるのは流石に……それにこいつの上半身化け物だし、勝てるとはいいづらいわ。あっそうね。

「裁縫もろくに出来ないくせに!!!」

「裁縫で人間性が決まるのか」

「そうね、裁縫やってる人に悪い人は居ないわ!」

「まぁ、確かに裁縫好きの大悪党とか知らんけど」

 なんとか丸め込めたわ。?

 裁縫出来てよかった。

「それにしても来ないなみんな」

「そうね、心配なら、放送係の響さんに連絡を取ってみましょうか?」

「頼む」

「響さん? いる?」

 私は虚空に話しかける。

「「あ、つむぎ? 大変! ってかごめん! 連絡遅れた、あのね」」

「落ち着いて」

 放送の向こうで、深呼吸の音がする。

「「十分前、校内で、テロ発生。一瞬で校内のいたるところに、体長二メートル、腕が何処までも伸び、全身が黒、魔力反応マイナスの危険な化け物が出現。レベルはC相当、しかしかなりの数で、BクラスAにも被害者がは少なくありません。そして問題はセーブロード、つまり校長が襲撃から姿の消失。私はここで、避難誘導をします。だから気にしないで、短い付き合いだったね……」」

「そう」

「「あ、ごめん。その、できればかぼちゃさんと一緒でしょ? Sクラスが居ると心強いかなー」」

「へー」

「「ごめんなさい、まだ見つかっては無いんだけど助けに来てくれる? ほんとは外に出るのが怖くて怖くて」」

 まぁ、助けに行ってやるか。

 でもいうと面白くないので、返事はせずに、交信をきる。

「お前……今の話本当か?」

「さぁ、でも本当の可能性は高いわね。どうする? 逃げる? 私は助けたい友達が居るんだけど」

「ふざけんな! そんな祭り、この俺が目立たずに居られるものか……くそっこんな事なら筋肉を仕上げてくるんだった……」

 ムカつきが最高潮に達して、本当に涼の頭に風穴を開けてしまいそうだわ。

「とりあえず全員助けるか」

 まぁ、そういう事を素で言うところは褒めてあげてもいいわ。

「でも、貴方、何度も言うけど魔力無いでしょ」

「大丈夫だ! 元々あってないようなもんだろ?」

「いや、ジャックで借りれるのは皆雑魚でしょ? あの合わせ技打ちまくってたら死ぬわよ」

「筋肉があるだろ!」

 あぁ、こいつ馬鹿だったっけ。

「とりあえず何処に行くか決めて。私の友達は放置して大丈夫でしょ、Bだし」

 あっと涼は叫んで、荷物をがさがさやり始める。というか其処私の荷物なんだけど。

「これだ!」

 それは私の注文書だった。

 私は学校の中で制服では戦えないという人のために特別な服を作っている。実際、スカートだと戦えなかったり、学ランがすぐ破けるという能力者は多いのだ。

 その注文書は、蟹っぽくという注文書の次に困った奴だった。

 発注者は、Eクラス、黒崎黒ダークネスさんだ。設定が細かすぎて、作るのが大変だった。何より知らない言葉を調べるところから始めなくてはならなかったのだから。

 あぁ、不味いな。これは思ってみれば完全に涼のつぼに入っている。

「この注文やばいだろ。なんだ? 時計屋の帽子って! 後この服すげぇよ、だって制服の体をなして無いじゃん!」

「貴方好きそうだもんねそういう娘」

「好きだな、こんな絶滅危惧種、絶対友達になって欲しい」

 なんかムカムカするわね。

「解った、早く行きましょう。でもその前に蹴らせて」

「なんでだ!」

 

 ちょっと待ってくれと待たされること二秒。ちょっと強く蹴りすぎたかしら。痛そうにしてるわね。

 取り出してきたのは、結局使わなかった私の作品たちだった。

 そしてそれに、涼は口をつけて、一気に吸い上げた。

「魔力少しは回復した。えっと、十パーはいったな。よし、一気に行くぜ――ランタンの灯火!」

 こいつ、自分用に魔法作ってるわね。そんな時空移動魔法聞いた事も見たことも何よりこいつの趣味全開だわ。

「付いてきな、あと後ろ向くと出られなくなる仕様だから」

 本当に無駄なことばっか好きね。

 って、なんか後ろからおどろしい声が聞こえるけど、これも絶対こいつの趣味ね。


 ※


 うわぁぁぁ。なにこれ、日ごろから機関がとかいってたからバチあたってこんな怖い思いしなきゃならないのかなぁ。

 黒い敵が三対。完全に囲まれてしまった。

 でも、やるしかない! これも遅れてきた入学試験かもしれないしなぁ。

 私の病気に唯一理解を示してくれたおばあちゃんに買ってもらったお守り代わりのカッターを取り出す。せっかく、エリートに成れそうなのに田舎に帰ったら皆に気を使わせちゃうしさ。

 おし、いっちょやるべよ!

「断罪の剣よ、我に力を分け与えん、漆黒の宴の狂乱に怯えよ――右腕の封印を解く!!!」


挿絵(By みてみん)


 これ恥ずかしいなー。でもこれで行かないと能力発動しないし。がんばるっぺさ。

 私の能力は思春期フルスロットル。こんな言葉を常に呟いて、いや、叫んで無いと駄目で、効果は、カッターの歯が何処までも伸びるという奴だ。おばあちゃんに貰ったカッターは特別大きいのでこれでも戦える。……はず。

「さて、これだけの人数が来るということは、遂に私の力を機関の連中が危惧し始めたか。だが、遅かったな、私の能力は覚醒した。歓迎しよう、お前らは……餌だ」

 大きくカッターを振り回す。

 パリンと音がして、歯が欠ける。

 力が足りない。もっと痛いこと言わないと。私の能力はカッターの耐久性も上げるのだ。

「くっくっく、やるな、見くびっていたようだ。だが、闇に生きる私に、力押しは通用しない。いったいどうやって私をしとめるつもりだ? 子猫たちよ」

 腕が伸びる。カッターの切っ先をそれに合わせるが、それを思いっきり砕いてそのまま私の方に進んでくる。それに後ろの二人? も腕を私のほうに向けているのが見えてしまった。

「いやっ」


 ※


「ハイパージャックトランストチ狂うアウトサークルシンドローム!」

 颯爽と現れる俺。かっけぇ。

 黒ちゃんが、うん、これは完全につぼったな。笑い出さないように気を付けなくてわ。

 そう、囲まれてたところに颯爽と現れ、一掃してやったぜ。

「誰だ? 名を名乗れ、私は黒、元の名前は捨てた、闇に生きるものとして当然のことだ(どなたですか? 私は黒っていいます。助けてくれてありがとうございます)」

「ちょっと、御礼も無いの?」

「え、あ、」

「俺はジャック・ザ・ランタン。俺と同じ道を行くものさ。同士よ、これは戦争だ。生死の境を飛び越えることは出来ん。死ぬなよ……安心しろ、俺は味方だ(助けに来たよ、あと、君の言葉は理解できるから安心して)」  

 キター。この言葉で、まさか、会話できるときが来るとは! 

「状況を説明してくれ、私はこの世界戦は始めてでな(すいません、よく状況が解ってないんですけど説明してもらえますか?)」

「新しい機関の宴が始まっちまったようだぜ。今から其処の女の友達、俺達の失ったもんを取り戻しにな、お前も俺の背中でも追いかけな(テロが始まったらしい、今からこいつの友達を助けに行くから、いっしょに来るといい)」

「所属は?(あの、なんで助けてくれるんですか)」

「前の世界線を覚えてないのか?(俺達はもう友達だろ)」

「ふっ(うわぁぁぁ、私初めて友達出来ましたよぉ。だって皆ギスギスしてて、都会って怖いところだと思ってたけど。そんな中で助けてくれるなんて、私、泣きそうです)」

「ふっ(おおげさだぜキラッ)」

「ねぇ」

 つなぎがまったく会話に入ってこないと思っていたら、俺の袖を不安そうに引っ張ってきていた。

「私、バベられたのかしら。不安になってきたのだけれど。其処のあなたもあなた、普通に喋れないの」

「あ、え、と」

「黒を苛めるなよ」

 むすっとつなぎは膨れた。

「なんか釈然としないわね。私が悪いみたいじゃない」 


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