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最弱の英雄伝   作者: かぼちゃの骸
プロローグ
70/108

ジャジャジャックランタン!



「まぁ、とりあえず一発は打たせてやる。邪魔はしない、それでいいだろ?」

「ん、ラスボスさんがそれで良いなら」

 私は距離を取る。

 これで、涼と天使が距離を取って向かい合う形。それを、私とこの綾って子が見守る感じだ。

「綾さん、私は涼ほど寛容じゃないからね、何かしようとしたら止める」

「わ、解ってますわ」

 釘を一様刺して、私に出来ることを探す。といっても一つしかないのだが。

 涼の力は、自分の常識を押し付ける、ローカルルール。しかし、私はそのローカルルールとやらが、効果を発揮したのを見た事が無い。あぁ、ちなみに私の能力は馬子にトチ狂うほどの衣装。名前はぼそっと呟いた事しかないが、そういう事だ。Dクラスの名に恥じぬ能力の全貌は誰にでも、なんにでも、自分で作った服を着せられるというものだ。もちろん着る人が着るという事が条件ではある。

 だから、つまりは、どんなデブにも腰がくびれた服を着せる事が出来て、外から見ればそのデブが腰がくびれているように見える。

 ちなみに私は、三センチしか誤魔化してない。

 他にも、行動制限にも使える。これも自分で着るという宣言しないと切れない私の洋服じゃ、意味無いけど着る人の力以下のことなら基本なんでも出来る能力が私の能力だ。

 洋服関係で、一攫千金も夢じゃないが、どうせなら青春を謳歌してこようとこの学校に入ったら、何故か入学式からEクラスに入り浸っていた涼に出会った。そして興味本位で話しかけたのが運の尽き、何故か仲良くなったと勘違いして変な腐れ縁が出来上がった。

 涼は車椅子で、脊髄の何番だっけ? まぁ、忘れたがそんな感じのところの神経が死んでるから、立ち上がることは一生不可能だと言っていたので、私がズボンを作ってやって、車椅子に銀のマントを着せて見えないようにしてやったのが決定打だったのかもしれない。

 ちなみに、月のうさぎも伸鋼のゴーレムのぬいぐるみを涼の粋にそれを着させただけだ。普通それは動く事も、また、不思議パワーを身に伝いるはずも無いが、常識確変の力を持つ奴の息だ。そして私の精巧なぬいぐるみの見た目から、ぬいぐるみの常識としては自分は本物だ。そしてその常識を、他に押し付ける。まぁ、涼の力半分以下のものしか作れないが、それでもかなりのものだろう。

 しかしこの馬鹿は、ありのままを常識として認識するせいで、常識の押し付けをしても何も変わらないのだ。こんなの笑い話にしてもあんまりだ。

「――神聖ナルをツネと、粛罪を求めよ、ラッパはナッタ、七日の神よ、今こそ許可を――」

「おおふ、何憑きか知らないけど、シンクロ率120パーってか。なんか恐ろしい声が混じってるぜ。地球は大丈夫かよ」

「ふぇ? さぁ、神の許可は取りました。いつでも終末を迎えられるよ? 準備しなくていいんですか、先輩?」

 天使とか言うこの姿は、もう人のものではなかった。

 白く光る翼が生え、天輪が洞窟を昼間のように照らす。

 天使……、そのものだ、見たこと無くてもそう思わせるものがあった。     

「まさか、こんなに早くこれを脱ぐときが来るとは思わなかったぜ」

 ほんっと馬鹿なんだから。私は縫っていたかぼちゃの頭を仕上げる。今度は、能力封印を付与した。

「つむぎ、新しい顔だ!」

 ……何も言うまい。

「馬子にもトチ狂うほどの衣装」

「さぁ、いつでもいいぜ」

「構えたりとかしないんですかぁ」

「……さっきから、俺の事なめすぎだって。まぁいいや、じゃあ」

 お前が言うなって感じだが、涼が銀のマントを腰に巻き、ふんっと気合を入れる。バリッと破ける涼の袖。

「黄金率。見ろこの筋肉!」

「……」

 大きく膨らんだ上半身を見せ付ける。隣の子の半眼で睨みつけているので、私まで恥ずかしい。

「はぁ、じゃあ、行きますねー」

 ちょっと引き気味に、そう宣言する。それはこの人とはもうこれ以上関わらない様にしようとする気持ちの表れか。

 涼は、自分の常識を他人に押し付けようにも、手から火でるんだすげ―って性格だ。これが出るわけ無いだろって思えるたら、全ての能力は涼の前では無力になる。だけどそうは人生上手くいかないものらしい。しかもそれだけじゃない、涼は自分の手から火が出たらそんな訳ねーだろって突っ込んじゃう奴なのだ。

 ちなみに涼は三つの能力を持っている。一つは常識の押し付け、これは自分にしか押し付けられていないのだが。

 そしてそのかせが外れた今の涼の能力は二つ。一つは、あの筋肉だ。涼は鍛えた筋肉を好きなように出し入れできる。――残念な事にあの筋肉は自前らしい。

「天罰――終末のラッパが鳴り響いちゃうバージョン!」

 何処から伴く爆音が鳴り響き、超高速で魔方陣が構築されていく。目にも留まらないスピードで魔法陣が完成し、それが円を描くように――どうやら一つの魔法陣になるようだ。

「うわぁ、リアルな奴」

「手加減無しで行きます。先輩もSクラスなんですよねっ」

 Sクラスの中でも能力の効果自体はダントツの弱さだけどね。

「涼、大丈夫なの」

「骨は拾ってくれ」

 カチッと音がして、鳴り響いていた爆音が鳴り止む。

「世界神断罪!!!」

「ちょっと私たちも巻き込まれるのではなくて?」

 大丈夫という前に、光に包まれる。ほんとに今年の一年はやばい奴が多い。 

     

 ※


 光が迫ってくる。これは強いな。まぁ、歩かないでいいのは良かった。しかし俺が、こいつと同じ学年だったら負けていただろう。

 避けることはできない。そんなことしたら、世界がやばい、学校がやばい、先生の視線もきっとやばい。なにより、この洞窟を必死に作ったつなぎの機嫌が絶望的なものになる。

「レンタルジャック――勝手にお借りします」 

 部活の先輩だったモヒカンの玉木先輩に、筋肉のよさを教えてくれた進藤先輩、そして二年のときに脱落していった同級生の、眉を全部そっちゃって全然生えてこない百乃さん、国語が得意すぎて授業を持っちゃった中川、そして苛められてた田中先生――俺に力を! 後一応、お前だけ名前を言わないのもあれだから、つなぎも力を!

「キープアウト!」

 キープアウトのテープを出現させる能力だ、Eの能力だが……まぁ効果は無い。

「超殺ありえないくらい背水のサークルサークル!」

 そのまま俺の上腕二頭筋を信じて飛んできたのを手で受け止める体制をとる。ありえないくらい背水のサークルサークルは足がじめんに張り付いて、絶対に動かせなくなる技だ。というか、これまでで一瞬。

「痛くないシンドローム!」

 痛くないシンドロームは痛くなくなる。そのせいで百乃さんは眉を全部切り落としてしまったんだけど。だがこのままだと俺の体が消し炭になる事実は変わらない。

「自己解釈トランス!」

 自己解釈トランスは、体の破壊を痛みに変える。だがそれを全部破壊するほどの威力だ、流石Sクラス、このままだと俺がやばい。力だけで能力を無効化されそうだ。

「馬子にもトチ狂うほどの衣装! からのハイパーストレスゲシュタルト崩壊!――――ハイパージャックトランストチ狂うアウトサークルシンドロームぅぅぅぅぅ」

 ゲシュタルト崩壊は自分の魔法を、破壊するようにぐちゃぐちゃにして、どんな魔法も暴発させる先生の能力。 


「ジョウキヲイッシテイル」  

 そうなんだよ、これ、常識じゃ考えられないんだって。

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