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最弱の英雄伝   作者: かぼちゃの骸
プロローグ
67/108

クローフード





 どうも皆さん。私の名前はダークスロベザ―ドです。如月さんとはもう、心よりも深い所で繋がった、もはや私は如月だと言っても過言ではないのです。周りの人は、私はただの契約に縛られた使い魔だと言いますが、こんなものが無くとも私と如月さんの絆は断ち切れません。

 それに私は知っています。如月さんより強くて、高潔な方はいません。だから絆が断ち切れるような心配はしなくてもいいのです。なぜなら

 私は、今、如月さんのご学友である茂武一さんと、夢塗梓さんを背に乗せています。ご無礼の無いようにしなくてはならないのですが、何故如月さんはこのような姿で私を召喚したのでしょう。とても大きな犬の背を平べったくしたようにしたのが、今の私の姿です。歩くたびに揺れるので、もう少し、と言うか人型で召喚して欲しいです。そもそも私は元々の姿が人に似たような姿ですし、とりあえず声帯の発達したものの形にしていただければ、色々出来るのにと思います。ものすごく快適な馬車でも呼び出しましょう。

 声帯があれば、如月さんと話すことが出来ますし、何より魔法が使えるようになるので多少、形が私の元の物と違っても修正が出来ます。

 いえ、まぁ、如月さんが求めてくださった形に文句はまったく無いのですが、それでももうちょっと可愛く、というかこの形にしても、ちょっと前の巨人のようなものの時も、無骨というか気持ち悪いのは、遠慮したい――っは! もしかして如月さんの趣向なのでしょうか。だとしたら、やぶさかではないのですが。如月さんと出会ってから一度も役に立ったという実感が無く、さらにお話できないのは辛いです。断腸の思いです。

 というか、多分如月さんは、私が女の子である事すら知らないでしょう。

 む、夢塗さんでしょうか。何故かは解りませんが、攻撃されている感じです。これは精神干渉でしょう、なかなかに強力です。触れた相手を眠りに落として操るといったものでしょうか、まぁ、私には効きません。ふっふっふー、私はこれでも別世界では、女王といわれ崇められていたほどの実力者ですからね。小娘がっ!って感じですよ。ですが、まったく気にも留めないという態度は、少し失礼かもしれません。精神干渉も足の動かし方のリズムを入れ替えるだけのものですし、多分私に干渉できるかどうかを試しているのだとは思いますが、ここは効いてるように見せた方がいいと思われます。

「これってさぁ、お前の全力?」

 あ、私ですか? 倍プッシュされても余裕です。と答える前にどうやら如月さんに話しかけているようなので、口を慎みます。そもそも私、これじゃあ唸るくらいしかできません。それにしても、少し如月さんに対して馴れ馴れしいんじゃありませんか? 不服です。

「意味が解らん」

「いや、だからね? これを倒せたら、あんたより私は上だって証明できたりしない?」

 いいですねそれ。コテンパンにしてやりますよ。例えこの姿でもなんとかしてみせます。


「止めといた方がいい。ストロベリーは貴方が、如月君の友達だと思っているから、あえてその干渉を受けているだけ。貴方はそれで御しやすいなどと勘違いしたのかもしれないけど、流石にそれ以上は抵抗されるし、多分怒らせる」

 あうう、小粋さん、邪魔しないでくださいよ。

 例えこの姿でもやるときはやるのです。いいとこを如月さんに見せるチャンスでしたのに。

 そもそも、元の姿とは違う形では召喚されないはずなのですが、私が如月さんのため、無理やりこっちに来ているので、この変な姿は私のせいでも在るのです。多分私が元の姿以外での召喚を拒否すれば、如月さんはきっと私の本当の姿を見つけ、本当の姿での召喚をしてくれるはずです。解っています、そっちのほうがお互いにとって良い事くらい。

 でも呼ばれたら来ちゃうでしょ? 来ちゃいますよね?

「なぁ」

 あぁ、何か解りませんが如月さんが私のことを心配そうに見ています。

 大丈夫です。ありがとうございます。

 声がうめき声のようになってしまう事は残念ですけど。

「降りろ、夢塗。お前の能力なんて知らんが、俺のダークスロベザ―ドに危害を加えようとした罪は重い」

 如月さんが私のことを心配してくれてます。はうっっと危ない。もう少しで膝が崩れるところでした。ぐっと来ました。

 あぁ、そういえばなんで皆さんは如月さんの凄さに気が付かないのでしょうか。ランク付けがなされたようですが、上から二番目というのが気にくいません。こんな言い方はあれですが、如月さんは優しすぎるのです。夕闇とか最弱呪文じゃないですか! 相手にあんまり痛い思いをさせないように、魔力をいっぱい使う超正義失効とか使って、いつも動けなっちゃっていつも実力よりも下に見られてるのです。こんなの、過小評価です。そんなところがかっこいいんですが、私はもどかしい思いでいっぱいなのです。そもそも黒魔法の使い方が、遠慮しすぎです。もっと――


 あ、如月さん、私は大丈夫ですから、そんな体力を使うような事をしていただかなくてもいいんですってばぁ。


「じゃ、ストロベリーは借りていくから」

 どうやら私は貸しだせれてしまうみたいです。如月さんは私と離れたくないと思ってくださっていることは、長年の付き合いなので感じ取れます。ですが、感じ取れるが故に、如月さんの家のしがらみ、ひいてはお立場というものが、在るのも私はちゃんと理解しているつもりです。ですので、私は自ら如月さんと離れ離れになる事を了承しました。

 私たちは寸での別れを惜しみ、抱き合った後、二手に分かれることになります。

 抱擁の際、如月さんが私に魔力を与えてくださり、感激です。正直、使い道は無いのですが、大感謝です。

 そういえば、この魔力を与えるという技、私はかなりの高等技術だと思うのですが、これも何故か評価されないので不服です。


「ねぇ、ストロベリー? 貴方、今の状況に不服は無い?」

 二手に分かれ、私の前を歩く、小粋さんが唐突に話しかけてきました。とりあえず言いたいのは、私は今喋れないのに、この人頭おかしいんじゃないかって事と、私の名前は如月さんに貰った大切なものなので、間違えないで欲しいという事です。

 ですが不服はあります。これも自らの蒔いた種と言えるでしょうが、やはり人型、とりあえず喋れる形で召喚して欲しいです。

「正直、私は貴方の境遇を嘆いているの。貴方の力はそんなものではないはずなのに」 

 小粋さんはまるで、私の状況がすべて解っているように話しかけてきます。

「私は全ての事象を、魔祖で構成されているという事を理解した。解らない文字もあるけど、その文字を書き換えれば大体の事は出来る。そしてその書き換える力を私は持っている」

 これは、どういった意図で話しかけているのでしょうか。とりあえず私の事を、相手にしているということは疑いようが無いでしょう。流石に独り言であるという事はないはずです。ですが解りません、私に何故話しているかがです。

「私は、出会った人はとりあえず、その人を構成されている魔祖を見ることにしているの。それを読み取れば、その人のスリーサイズから、初めて食べた食物まで、何でも解り、それを書き換えてしまえば、その人の性格から変えてしまえるわ。まぁ、一時的なものだけど……それで、貴方の情報はこれ」

 小粋さんはバックから、板を出して、それを砕きます。そして、スクリーンを出して、身振りでも私に見るように促しました。

 私は文字が基本的に読めません。日本語は、如月さんとずっといたので話すことも聞くことも出来ますが、文字だけは使い道が無いので読めないのです。

 たくさんの文字を滑らせて、小粋さんは此処を見て、と指差します。

「さっきは書き換える力を持っているといったけれど、それも完璧ではないの、さすがに時間が経つと元に戻ってしまう。忌々しい事に貴方を元に戻すには書き換える項目が多すぎて、時間が来てしまう。でも私は諦めなかった、だからこの学校にも来たのよ、掘り出し物も見つけられたし本当に良かったと思ってはいるんだけど……、貴方、私の使い魔にならない?」

 嫌ですけど。

「あぁ、説明不十分だったわ。貴方の容姿が私には解っている。黒い髪で、長髪。身長172センチ、真面目なお姉さん系でしっかり者のように見えるけれど、実は内心ではいつもおどおどしてて、その控えめな露出でゼロに等しいドレスでも隠しきれない大きな胸、きっと私が使い魔にしてエッチなお願いをすると、顔を真っ赤にしてふへへぇ」

 如月さん助けて! 

「大丈夫、私がきちんと調教して如月君なんて忘れさせてあげる。貴方はどんな手を使っても私のハーレムに入れる」

 調教!? 

 き、如月さんのところに逃げよう。如月さんなら守ってくれるはずです。そうです、家の立場も考えなくてはいけないと思いますが、如月さんと私の絆のほうを取ってくれる筈です。それにこの形はそれなりに走ることに長けていそうなので、好都合です。

「このフィールドを書き換えた。私以外は、通路を戻る事はできない」

 ――戻れない。動けない私に、じりじりと小粋さんは近寄ってきます。

「契約を途切れさせないことには、私との契約は結べない。後は感情の問題だけど、如月君がやられた頃にはきっと貴方は自分から私の使い魔になりたいと言っているはず」

 如月さんがやられる? 契約はたしかに如月さんが死ぬまでというものですが、まさか、これは全て……いえ、私は何も不安ではありません。だって如月さんは負けませんし、相手がどんな手で来ても、私も絶対に屈しません。そうです、私は一人でも如月さんの使い魔です。使い魔が主人に助けを求めるようでは格好がつきません。

「とりあえず如月君が、あまり良く解らない形で召喚しなくてよかったわ、さぁ、力を抜いて? 怖くないわ、すぐ気持ちよくなる」


 如月さん、何故かものすごい恐怖を感じます。

 んっ

「あぁ、内ももが弱いのね?」

 そ、そんな事無いよ!

 如月さん! 早く来て!!



   

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