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最弱の英雄伝   作者: かぼちゃの骸
プロローグ
6/108

メイド怖い

 俺は鈴木サチの案内で、林の中を進んでいた。

 それにしてもこの能力は便利である。何しろ能力者であれば、近づいてくれば相手より先に気付くことが出来る。これによって林の中を進んでいる俺たちは一切の敵に会わず進んでこられている。


 確かに、ほかの使い道は? と聞かれるとかなり困るが、ダンジョン系RPGならパーティに一人は欲しいキャラクターだろう。


 それに、話によると、能力が才能として開花しても気づかなかったり、間違った解釈をする人も少なくないらしい。


 俺にはない可能性だがこいつには少なからず残されていることだろう。

「む、前方に力の反応です。ここは迂回しましょう」


 実に便利だ。そういえば能力の名前は勝手に決める奴が多いらしい。魔法だと早い者勝ちなのだろうが、超能力とか、それ以外の特殊なものなら、自分だけの名前を勝手につけるのだ。


 俺はこいつの能力をこっそり心の中で、能力者発見器となずけた。

 そういえば、俺をのしたあのもっさり坊主頭は、自分の能力を黄金の右とか言っていた。あれも超能力だ。


 せいぜいスプーンを曲げるくらいのものだと思っていたが、完全に不意をつかれた。


 次ぎ会ったら、ささっと、避けてやろう。そう、俺は油断していただけなのだ。


 超能力は、予備動作のあまり必要のない力の全般だ。これは魔法と比べると力は弱く、精神力が力の源となる。

 基本としてスプーンを曲げるくらいならだれでもできるらしい。


 だが、それには手を触れずにと言う、条件は付かない。


 ちなみに、魔法はこれも精神力が力の源となるが、それによって作った文字をもとに、そこに自分の言葉を乗せて発動する。またそれも大きく二つに分けられ、純粋な力だけを発現する人と、物や獣を召喚する人がいるのだ。


 だがこの二つに当てはまらない奴もいる。

 超能力ではあるのだが、厳密には特性みたいなものだ。

 それは、精神力に影響されない力を持つ。

 

 例えばこいつはそれなんじゃないだろうか、見るからに、気合を入れると良く見えるって類ではないだろう。


 その時、先行していた鈴木が手招きしてきた。

「見えましたよ。」

 なるほど、あれが緋色か、長い髪に銀の鎧をまとっているので分かりやすい。

「よし、とりあえず様子を見るぞ。」

「いえっさー」

 なかなか乗りのいい奴だな。

しかし問題はこれからどうするかだ。

「そこにいるのは誰だ! 」


 なるほど、もう見つかったらしい。準備も何もしていないんだがな。


「挑戦者か、ふっふっふ、やっと私の力を見せる時が来たようだ。さっきからメイドにばっかり倒されて私戦ってないから、この時を待ってたのさ! 」 


 迷子になったのは良い誤算だったな笑う緋色。


 なんか思ったのと違うが、こいつが緋色に間違いない。だが、あのもっさりのように、いきなり襲いかかって来ないだけかなりいい相手だ。


「私の名前は、千代緋色いざ勝負だ! 」


 前言撤回だ。緋色がとうっと手を大きく振ると剣が現れた。


 それがダイヤをバッサバッサと切れる剣か、


「とうっ」


 投げた!!


「あぶねっ」

 とっさに避けたが、後ろにある気がバッサバッサと切られていく。これはやばい。


「ってかあったたらどうすんだ! 馬鹿か!! 死む!! 」


 噛んだ。しかしそんなことにかまってられない。正直この相手に俺が勝つにはまだ一つ足りないものがある。

 今は時間を稼ぐしかない。


「避けたからいいじゃないか。ていっ」


 また新たに2本の剣をあれは召喚だろうか手品のようにぽっと出して、投げつけてくる。木の陰に隠れようにもまったく何もなかったように切って進んでくる、 剣にどう対応すればいいのだろうか。


 それに相手も投げ方が素人だが俺も素人だ。


 これは当たる。そして死ぬ。

 あぁ、左の腕が熱い。かすっただけでも切れ味が切れ味なのかかなり痛い。


「いってぇな」

 だがうずくまっている暇はない。えい、とかほいっ、とか言って剣を投げてくる殺人鬼がいるのだ。


 呪いってのは、基本何もできない。だがリスクを払えば使い道はある。 


 それにやっと恨みを晴らす時が来た。

 悪あがきだろうがなんだろうがやってやる。


 鞄から素早く札を取り出しそこら辺の木に張り付ける。

 そして手ごろな茂みに身を隠す様にして移動する。


「む、なんだそれは、私の名前が書いてあるな」

 これは、気になる札という我が家伝統の中でも俺が、[呼び子の呪い]から派生させたオリジナル。これに名前を書かれるときになってしょうがないという代物だ。


「えいっ」

 緋色は掛け声とともに木ごと真っ二つに切ってしまう。


 あぁ、そういう事しちゃうんだ。 

 あれ作るのにかなり時間かかるのにな……。

 

 だが打ちひしがれている時間はない。どうやらあれは効果が薄いようだ。

 人により個人差があるのでしょうがないだろう。

 挫けるな俺、一枚2900円作るのにかかっているが、挫けるな。


 今度は木の札と五寸釘それに俺の血を垂らす。これでインスタントノックされるドアだ。


 ノックされるドアとは相手を夜にドアから音を立てさせ、不眠症にする呪いだが、インスタントにすることでただの音がする板となる。

 

 しかし物は使いようだ。茂みに隠れながら思いっきりそれを投げる。

 

 聞こえなかったらそこで終わりだが、あれは作るのに1時間と30分そして俺の血が必要だからぜひ役立ってほしい。


「「コン、コン、コン」」


「あっちか、えい、とうっ」


 願いは通じたらしく、あらぬ方向に剣を投げつけている。


 どうだこれが呪いの力だ。みんなもやってみるといい。準備にかなり時間がかかるが。

 誰だ、今他のもので代用すればいいとか言った奴は!

 そうじゃないだろ! 泣くぞ!


「見っけましたよ。すごく大変でしたー」


 サチが戻ってきた。こいつには緋色の髪の毛を探してもらっていたのだ。

 見つかるかどうかは賭けだったが、こいつの能力で何とかなったらしい。髪の毛に残っている力をたよりに見つけてきたらしい。


 実はこいつすごい奴なんじゃないだろうか。感謝は後でするとして、これで完璧だ。

 

 呪いってのは準備さえ完璧であればかなりの力を発揮する。

 藁人形 特別性の釘 相手の髪の毛 名前 星座 そして 人体のツボの知識さえあれば誰にでもできる。


 まぁ、この人形を作るのは骨が折れるが。

 素早くわら人形にそれらを書き込み、髪の毛を括り付ける。


 これで呪いのわら人形の完成だ。しかし、実際は君たちの思っているような効果は呪いのわら人形にはない。


 これは、藁の編み方や材料が比較的簡単なものなので、藁人形にくぎを刺すとそこに対応した体の部位が、注射に刺されるぐらい。一瞬いたってなるの程度しかない。


 これだけ準備してこの効果かよ、と言いたくなるがこれが俺の全力だ。

 だがこの角度で、ここにくぎを突き刺せば……

「えっなにこれ、えっ、あっ」


 緋色の戸惑うような声が聞こえる


 成功した!


「よし、いまだ! あいつの鞄から学生証を奪うぞ」


 藁人形をせっせと作って釘を打ちつける俺を、微妙な目で見ていたサキには何が起きたかわからなかったらしく、


「えっなにがおきたの? 」

 オロオロとしているが関係ない。緋色の鞄から学生証を奪う。  


 かなり入っているな。どれだけ他の奴を惨殺してきたんだよ。


 ちなみに俺が今やったのは、足がしびれるツボを刺してやったのだ。ダメージとしてはほとんどゼロだが、この使い方なら、1時間は足がしびれ続けるはずだ。

 呪いの勝利だ。体内にあって、普通では押せない人体のつぼを押すことが出来る。


「き、気合だぁ」

 起き上がった!

 まぁ足がしびれる程度なので、がんばれば普通に動ける。


「学生証はすでに奪った、ぜ、全力で逃げろ」

「いえっさー!! 」


◆◇◆◇


 もう30分は時間が経っただろうか、実はもう三日とかたっているんじゃないか。だがはぐれたメイドが戻ってきてくれた。

 最初は、謝っていてくれていたんだがなぜかどんなことがあったを説明していくごとにドンドン態度が剣呑になってきた。


「それでお嬢様は迷子になったあげく、そこで足を抱えて何をやっていらっしゃるのですか?」


 メイドが怖いよ。それはもう説明したじゃん。


「えっとなんか、足つっちゃったみたいでなんかめちゃくちゃ痺れてて・・」


「それであなたは、学生証8枚はあったはずなのにすべて奪われたと」


 なんか言葉遣いが少し乱暴になっていないかと思ったが、指摘したら火に油を注ぐようなものだろう。


「いや、なんか事故っていうかその…ごめん」


 平謝りするしかない私、だって怖いもん。


「まぁここに来る間に12枚は奪って来たので大丈夫ですけど、」


 さっすがケルベロスさんです。っていうか私ってやっぱ足手まといだったのかな。


「終了までここで隠れましょうか、教育係として説教する必要もありますし」


 あと二時間あるんですけどー。











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