表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱の英雄伝   作者: かぼちゃの骸
プロローグ
50/108

仲間



 最近は乱れた生活を送っていたので、まだ眠かったが、トリガーの言葉にはなんか逆らいづらい。朝、蟹の部屋のほうの壁をたたいて音を立てながら歯磨きをしていると、蟹吉が起きる音がしたので、急いで支度をし、教室まで走った。


 教室では、トリガーとあの、水をなんちゃらの人が居たので挨拶をした。

 瞬間、蟹吉が走って追いかけてきたのが足音で判ったので、急いで机に座って突っ伏した。

「おいてめぇ、蟹吉の安眠を妨害しやがって」


 蟹吉が机の前で仁王立ちしている。

「俺はずっとここに居たけど?」

「そんな嘘に騙されない、ちょっとこっちこい、ぼっこぼこにしてやるから」


 トリガーに目線を送るが、こっちを見てすら居なかった。

 すると、水をなんちゃらの人が蟹吉の肩を叩いた。

「蟹吉?」

「何? いくら酒市さんでも今の私を止めることは出来な

「こら! ぼっこぼこは駄目だよ?」

 蟹吉がうっと変な声を出して、ばつが悪そうにしだした。なんだ? 

「ほら、座って? トリガー君がお話してくれるから、ね?」


 蟹吉が俺の隣に座ってきたので、俺の疑問を述べてみた。蟹吉は目を見開いて、だって、なんて言い返せばいいか解んないし……と呟いて突っ伏した。

 どうやら助かったらしい、これはお礼とか言った方がいいのか? 

「黒独君だよね、何で教室来ないの?」

 そんな事を考えていたらあっちから話かけてきた。

「いや、色々あったんだよ」

 説明も面倒だし、始めのころは本を読んでただけだからはぐらかした。


「色々って、説明してくれないとわからないよ?」

「人助けしてたんだ」

 酒市さんはどうやら信じていないらしく、避難するような視線を投げかけていたが、今回だけだよ? といって自分の席に戻っていった。   


 トリガーが立ち上がって教壇に立つ。するとチャイムが鳴って、月が入ってきた。

「とりあえず、ひっきーが来たから初めからな、なんか先生が来なくなった」

 学級崩壊か、新しいパターンだな。

「あと、ここに着てない奴は、填最は除いてみんな鬱になって退学になるの待ちだ、あ、台屋だけはな

んかEクラスに上がった」

「何で? 何があったんだ?」


「台屋か? あいつはEクラスに家族が居て、同じ教室になるためにEのバッチを一つとったら、その家族ってのにバッチを9枚受け取ってだな、でも、あの家族っての苗字は違うし、それなりにレベルが高い女子だったから、

「そっちじゃねぇよ」

 なんかすごい喋り出したトリガーを止めた。 


 しかし、そうすると何故か、みんなが呆れたような顔でこっちを見る。

 蟹吉が見かねたように教えてくれた。

「あのな、お前だって死んだんだろ? なんとも思わなかったのか、蟹吉だってもうあんな感触は嫌なんだ。何度も死んだりしたらそりゃ、心を病むよ、それに力の差だって絶望的だしな」

 教室の空気が暗くなる。

 嫌な感じだ、能力者に虐げられるのはどこに行っても同じなのに。

「いや、そんな事ぐらいみんな知ってただろ」

「ま、それはそうなんだけどな」

 トリガーが明るくいって、

「今度な、なんか一年に三回ほどある体育祭の予選があるんだ、みんなどうする?」

 と話題を変えた。

「俺が非常識なのか? 何も判らないんだが」

 優しく教えてくれたトリガーの話を要約しよう。


 体育祭だ、トーナメント制のチーム戦、教頭先生が平等なルールを作るので、どのクラスでもがんばれば勝てるという触れ込みらしい。

 優勝チームにSクラスが居なかったことは無いらしいけど。

 

「優勝すると、クラスをひとつ上げるか、外に出て買い物に行って来ていいんだとさ、まぁ後者の奴はSクラス用なんだろうな」

 トリガーの言葉に頷きながら、皆がちょっと暗い理由がわかった。

「やっぱり強制参加なのか?」

「いや、違うんだが……」

 ? じゃあ、あまり関係ない話じゃないか。


「トーナメントでもな、勝ったチームのバッチを相手の人数分もらえるんだよ」

 話が見えない、いったいなんだって言うんだ?

「填最が入れば、、、勝てるんじゃないか?」

 何も得することが無い。リスクがでかすぎるし、いくら平等って言っても、いや、平等だからこそクラスが上のほうが強い。そこまで考えて、クラスの空気が暗いわけじゃないと気づいた。

 緊張感が漂っているんだ。

 そういえば、差別ってのはノーマルと能力者の間だけじゃなく、使えるのと使えないの、つまり、エリートと凡人の間でもあるらしい。

 俺は確認のために聞いてみた。

「お前らってさ、能力者が嫌いで、差別が嫌いで、ここで能力者をぶっ飛ばせば、何か変わるとか思ってる馬鹿?」

「嫌いじゃないだろ?」

 笑ってトリガーが渡した紙には、参加申込書と書かれていた。

「俺、ノーマルだけど」

「俺ら全員、能力なんて一発芸みたいなもんしか持ってないじゃないか、それに良かったな、蟹吉もノーマルだってさ」


 能力者を仲間にしないと勝てないこともわかってる、それで勝っても意味無いことも解ってる、理屈じゃないんだ、自分の手でぶっ飛ばせればそれでいい。


 俺はそこに名前を書いて、参加チームの欄になんて書けばいいんだと聞くと、それを今から決めるんだろ? と蟹吉に言われて笑った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ