幽霊
「そういう事、他の人に聞くのはやめといたほうがいいですよ」
「というか、解ってるんじゃなかったんですか? 死ぬ能力です」
「おう、何してんだ?」
トリガーが職員室から出てきた。手にダンボールを抱えている。
「それ何?」
「これか? Bクラスが次の授業で使う資料」
「何でお前が運んでんの?」
「俺が教室で暇そうにしてたから、頼まれたんだろ?」
断れよ、というかBクラスの学級委員長はどうした、とか色々言いたいことはあったが、そういう事を言うと手伝わされるかもしれないのでやめた。
「職員室になんか様だったのか?」
「いや、ちょっと迷った」
「ふうん、俺結構詳しくなってるから案内してやるよ」
「お、おう、なんか優しいな」
別に普通だろというトリガーに、なんか手伝わなきゃいけない気がして、半分持つとダンボールを受け取った。
「ん?」
いつの間にか田崎が居ない、役目はおわったと帰ったのかと思って聞くと、トリガーは俺が来たときには居なかったろと言うので首をかしげる。
耳元で小さな声が聞こえた。
「人に、ぎっちゃん以外の男と一緒に居るのを見られたくないんですよ。人は死ぬと何になる?」
「幽霊」
「つまり私は?」
「幽霊?」
「どうした?」
トリガーに聞かれたのでなんでもないと言って歩き出した。見えない、触れない、の本格的な幽霊なんですと声がどこかからするが、俺は幽霊と話す趣味はないと、今度はトリガーには聞こえない声で返した。
角を何度も曲がって、階段を四つ上り、訳解らなくなったところでやっと目的に付いた。その間にトリガーに聞いたのは、廊下においてある物は不定期に変わるらしい事だ、あと廊下もちょいちょい増えたり減ったりするのだそうだ。
「俺じゃなくても、迷うやつ居るだろ」
「いや、ほとんどのやつは能力者だからな、みんな何とかなるんだろう」
あぁ、みんな瞬間移動とかしそうと思い、そうだなと頷く。
「そうそう、お前どうやって受かったんだよ」
トリガーが教室の中に入ってダンボールをおきながら言う、俺も隣に置きながら答えた。
「どうって、あれだよ、填最にあってなんか成り行きで」
あぁ、填最があれ作ったらしいよなと言う。
「他のやつはどうやって受かったんだろ、だってあれぶっちゃけ、総合クラスのみんなじゃ正攻法じゃ、雑魚子以外は、知っててもまず出れないだろ」
「お前はどうなんだよ」
「俺か? 俺はあれだよ、他のやつに頼んで一緒に出てきたんだよ」
「じゃあ、みんなそうなんじゃねぇの?」
そっか、いこうぜといって教室を出て行く、俺の部屋までく案内してくれるらしい。
「そういえば、教室来たほうがいいぜ、なんか色々イベントがあるし、知らないままだと退学になる可能性も高い」
解ったと言うと、ここだろといってドアを指差す。意外と近かったらしい。