二度目のバッチ争奪戦
今日は土曜日、
私、大葉 翠は、大会場、バッチ争奪戦、正式な名称は通常戦闘試験、を受けていた。
ルールは簡単だ、この会場にいるであろうほかの生徒の意識を奪う。
そうすると、相手の持つもっともランクの低いバッチを一枚頂ける。
しかし、何もしなくても三時間後には、試験は終了する。
既に二年生となり、一ヶ月に一度は受けなくてはならないこの試験にもなれた。
入学当初からCクラスである私は、非戦闘を貫いている。
BクラスAクラスに上がると奨学金や、特別待遇なるものが在るということだが、
このまま卒業するだけでも、お金に困らない生活を送れる。
危険を冒さないほうが確実にお得なのだ。
「ここら辺でいいんじゃないですかー。」
前を歩いていた、親友さん、いつも敬語じゃなくていいのに、と言っているのに、
私がへんな話し方を変えれば考えますよー、と言って聞かない、が私のほうに振り返って声を掛ける。
私って変な話方なのかとカルチャーショックを受けた。
しかし、どこが変なのか見当も付かないので直しようが無い。
「賛成。おやつ、おやつを食べよう。」
私の親友、彼女の名前は鈴木 サチさんは、去年からの友達だ。
なんといってもおやつを作るのが得意で、クッキーを作ってくれる。
逆にクッキーしか作れないのが玉に傷。
森の中の多少開けたところに腰を下ろす。
私たち二人のコンビは、この試験を生き抜くのに凄く都合がいい。
まず、彼女は能力者で、能力者が寄ってくるとすぐ解る。
そして私、魔法使いだ。植物関係に特化した魔法使いの家で、自分で言うのもなんだが、
かなり強いほうだと思う。
基本は、能力者に出くわさないようにして、もし出会っても私が倒す。完璧だ。
「今日は、ちょこクッキー作ってきましたー。」
出されたチョコを無言で食べる。
その間に紅茶を入れてくれるので私はただ、幸せに浸っていればいい。
「あ、北東の方向から誰か来ますよー。Eクラスぐらいですかね。」
む、私のおやつタイムを邪魔するとは、私はルービックキューブを出して、魔法を発動させるための
手順で、画を揃えていく。
「レベル81、連結無し、プラントパペット。」
ちなみにレベルって言うのは、時間のことだ。
発動するまでの時間が多く掛かるほうが、レベルが高い。
だから、強さとは関係ないし、魔力の消費量の目安にはならない。
連結って言うのは、、、魔法を混ぜて使う時に使う。
別に、魔法陣と呪文が正しければ、いちいち言わなくてもいいのだが、魔法のイメージが混ざる
と危険なので、一応言うことにしている。
蔦が私のキューブから伸びていき、地面に到達すると、2mぐらいの人型に形を為し、
北東の方向にいる人を追い払いに行った。
「何時見ても気持ち悪いですね。」
サキがそう言う。
馬鹿な、あんなに可愛いものはコアラ位しかいないはずなのに。
「それは、貴方の目がおかしい。」
「そ、そうですか。」
私の勢いに押される形で意見を引っ込める。
「あと一時間ぐらいですねー。」
気まずくなったのか話題を変えるサキ。
別に気を使わなくてもいいのにとは思うが、そこが彼女のいいところでもあると思う。
その時、私の背後でガサガサと藪を書き分ける音がした。
「翠さん! 」
サキの声に反応して、私は臨戦態勢を取った。
サキがここまで近づくのを許したってことは、総合クラスの人だと思うが、油断は禁物だ。
「「「あ。」」」
私たち三人の声がシンクロする。
黒独 尊君だ、なんか隈がひどい。
顔から血は出ているし、制服もところどころ血で濡れている。
今にも倒れそうな顔をしているのに、目だけは残虐な光を伴なっていて、なんだが怖い。
「くそっ、」
尊君は、私達を見ると、逃げ出そうとしたんだろう、走り出した。
しかし、数歩も行かない内に、サキが反応しなかったので、魔法の流れ弾だろう、実際こんな事は起きないのだが、
光の玉を尊君は食らって、私たちのほうに飛ばされてきて、そのまま反対側の藪に突っ込んでいった。
「だ、大丈夫ですかー。」
心配そうにサキが駆け寄っていく、サキも知り合いなのだろうか。
私は安全のために、新しいキューブを出して、プラントパペットを三体ほど新たに出してから尊君のほうに駆け寄った。
サキが固まっている。
そして私も固まった。
「うわっ誰だ! ってデカっ!」
そこには、尊君が立っていた。
さっきとは似ても似つかない姿で。
可愛い、抱きしめたい。
私たちが大きくなったわけじゃないとサキが尊君を手鏡を渡した。
それで尊君は自分の姿を見ると、呆然とした後、こっちを見て、
「どうにかならないのか? 」
と半ば、呆れたように言った。
さっきまで怖かったが、そんな気配はもう無くなっていた。
魔法がどう作用したのかは解らないが、幼くなってしまった尊君に、何か声を掛けなくては、
と思い直した私は、何を思ったのか、
「そのままでも、私はいける。」
とおかしなことを行ってしまった。
「えーと、翠さん? 」
サキが蔑む様な目で私を見てくる。
「ち、違う。そうじゃない、私の話を聞いて。」
「あ、うん、そう言う趣味も人ソレゾレダカラダイジョウブ、私たちお友達だよ。」
待ってー、完全に誤解しているよサキ。
「あ、お前ら会ったことあるな。」
可愛い声だな、もう。
尊君が、私たちに向かってそう言う。
サキはどうやら、入学試験で怪我人などを出さないために400人ほど配置される試験官が足らず、
参加した時に、担当が彼だったそうだ。
「今、俺ちょっと不幸なんだ。あっちいけ。」
ふてぶてしい所もいいとか思ってしまう私はもう末期かもしれない。
また、魔弾がどこからか飛んでくる。
しかし、プラントの一体が、手を伸ばし防いでくれる。
「サキ、どこに敵いる? 」
「それが、遠すぎてわかんないんですよねー。ってか此れあれですよね、
私もやります。」
珍しくサキが杖を出して空気中に図を描いていく。
彼女も魔法を使える、そうでなくては相手の能力の力量を図れる能力だけじゃCクラス
までには成れない。
「レベル122、使うから時間稼いどいて。」
三桁か、繊細な魔法、トラップ系かな?
しかし呪文を唱えながら魔法石を並べているサキの邪魔をすることに成るので、質問できない。
変わりに尊君に質問することにした。
「何がどうなってるのか詳しく。」
「あー、助けてくれのか? 」
当たり前! こんな可愛い子を一人に出来ない! と叫びたいところだが、それはいろいろとやばい気がするので、
「ハンバーガーのお礼。」
と言った。
尊君を狙ってるとしか思えない攻撃が四方八方から飛んできた。
サキはそれを予期したのか。
「レベル18、大樹の壁。」
私たちの周りを気が囲む。
もうキューブが無いし、魔力も使い切ってしまった。
だが、これで後30分は持つだろう。
私はクッキーの残りを口に詰め込む。
「翠さん、意地汚いよ。」
サキに咎められた。
五月蝿いな、なんか今から忙しくなりそうだから、食べとくんだよ。
なんか、尊君がこっちをじっと見てる。
あぁ、やばいな。もう私、末期でいいや。
「尊君、何? 」
「尊って言うな、それよりも凄いなお前。」
褒められたが、なぜか咎められているような気分だ。
こういう事はよくある、ここでは余り無いが、高校とかでは私の力に憧れるとか言っといて、
実際に力を見せると引かれてしまう事がよくあった。
「ごめん。」
謝ると、尊君は薄く笑う、何か赦された気がした。
「何で謝るんだよ。」
そんなことを言いながらも、嬉しそうなのは気のせいだろうか。
って言うか、かわいいなぁ。
「レベル122、連結無し。女王蜘蛛の巣。」
女王蜘蛛の巣はサキの十八番だ。
不可視の蜘蛛の巣が張られその糸に触ると魔力が吸い取られるやつだ。
「うわっ治った。」
尊君が成長していた。
「残念。」
つい零してしまう。
「不謹慎だよ。」
サキに窘められる。
だけど、心なしかサキも残念そうだ。