表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱の英雄伝   作者: かぼちゃの骸
プロローグ
34/108

リボルトセレクト 12328888888888

 


感動した。

 魔法使いっていいものだな。


 能力者は嫌いだが、魔法使いとなら仲良くしてやってもいいかもしれない。

 うん。


 本を閉じ余韻に浸る。

 だが、ひとつ疑問があることに気が付く。

 

 と言うか疑問が確かになったと言うほうが正しいのだが、


「魔法使いって何だ? 」



 ◆




「魔法使いって何ですか? 」

 この国の首都で最も高いビル。


 その98階でとある学園、とりわけ超能力者を優遇する今の社会の象徴のような

学園の資料を読んでいた、山峡 武、会社員は生徒の資料を読んでいる内に、

不可思議なことに気が付いた。


「そりゃあ、特殊能力の内容が魔法みたいな法則性を持ち、

複数能力を持つ人の総称だったと思いますけど。」


 隣のデスクでその名簿を打ち込んでいた篠崎 可憐は手を止め、

そう答える。


「あ、いや、それは解ってるんですけど、数が多いっていうか。」

「あぁ、確かにそうですけど、この学校ってのは入試試験が特殊で、

戦闘能力が高いほど受かりやすくなってますからね。

能力も同じような人が集まるんじゃないですか?

あ、だからこうしてリストアップしてるんじゃないですか、

私の話ちゃんと聞いて無かったんですか~。」


 山峡の頬が、可憐に突かれる。


「いえ、そうでは無く。

魔法使いってのはこんなに居ます、決して少なくはないですよね。」

「えーっと、だから? 」


「なのに私は魔法使いなんて聞いたこともありません。」

「? 偶然じゃありませんか? 」


 山峡は財布を取り出し、中から名刺を取り出す。

 今の名刺ではなく、彼が前に勤めていた、この会社系列の小さな保険会社だ。

「保険も能力がどういうものかで、多少の保険金、また、

断るかどうかの基準になるんです。そして私はそこの管理職でした。

その私が一度も聞いたことの無い能力がこんなに多いなんておかしいと思いませんか。」


 可憐は、彼の電話番号を手に入れた!


「た、確かにそうですね。あ、この名刺いただいてもい、いいですか? 」

「いいですけど…、

「うーん、でも何か関係があるんですか。

そんなことより仕事しないと。」


 名刺をそそくさと鞄にしまい、そういって可憐はパソコンに向き直った。

「あー、すいません。勤務中でしたね。」


 違和感を無理やりしまいこんだ山峡は、また資料に眼を落とす。

 その中に、暗黒 月という名前を見つけ、娘のことを思い出す。

「まさかな、月はノーマルだったし、能力が出てもこの学校に浮かれるほどではないだろう。」

「はい、山峡さん何か言いましたか? 」

「あ、いえなんでもないです。ちょっと知ってる人と同じ名前を見つけただけで。」

「あーそういうのありますよねーって、真面目にやってください。

今日こそは飲みに行くんですから。」


 仕事は決して多い量では無かったが、山峡が落ち着かないと言って残業

をするので時間が取れず、まだ一度しか飲みにいってないことに可憐は不満を感じていた。

 

「おかしいですね。この魔法使いって人の家の情報がほとんど無いに等しいですよ。」

 見ると、山峡は会社のデータベースにアクセスしていた。

「何してるんですか、職権乱用ですよ。っていうかこの会社のデータベースとか

トップシークレットの塊なんですから、」

「これは、、、魔法使いと言うのは戦闘力が高いんですよね? 

だとするなら、あ、いや、これは変ですよ。

魔法使いであるほとんどの人が、わが社がつくった能力とは

ずれのある、能力を使っています。」

 

「えぇい。」

 可憐が山峡の頭を叩く。

「何してるんですか…。この学園の個人情報で既に普通の人は知ることが出来ない、

あ…。」


「そうです、つまり魔法使いは本物の能力者である可能性が高い。」

 しかし、可憐はそれをすぐに否定した。

「それは無いですよ。山峡さんはまだ知らなかったでしょうけど、

本物は脳の稼働率がノーマルとは違います。

きっと、能力の使い方でそう見えるだけですよ。

実際どんな能力として認識するかはって、仕事しましょうって

どうしたんですか? いつもは私に言ってるせりふなのに。」


 山峡は一人の生徒の資料を出す。


「そもそも能力とは我々が埋め込んだオーバーテクノロジーの総称です。

しかし、人間には使いこなせないため、どんな力が出るのかは

埋め込んだ時点では解りません。そうでしたよね。」

「そうですけど…、それもトップシークレットですよ。

外では言わないでくださいね。」

「彼はそれを足に埋め込まれた。しかし彼は足を破壊されているんですよ。

交通事故で。なのに魔法使いとしてこの学園に居る。」


「だからそれは、その人が本物の能力者なんじゃないですか? 」

  

 可憐には彼がなぜ取り乱しているのかが解らなかった。

「脳の稼働率を調べましたところ変化はありませんし、何より、

この、召還魔法ってなんですか…。」

 可憐が見ても活動記録、能力の欄にそんな記述は内容に思われた。

「召還魔法? 」

「ここです。」

 彼が指差したのは、彼の収支報告だった。

 この学園では、金の流通さえ管理される。

「召還魔法による魔獣の食費って書いてありますよね。」


 私たちの知らない何かがそこにある。

 召還魔法などと言った名前には共通意識として何かを召還するものだ。

 いったい何を?

「と、とりあえず会長に報告します。」

 

 ◆


 この国で彼に動かせない組織は無い。

 10数年前はそういわれていた。


 宇宙人などといった存在、いや、人類によって、わしの人生は狂った。


 今の彼を見て、人生で失敗をした人間だと言う人間は居ないだろう。

 しかし、彼は確かに挫折した。

 電話が鳴る、この電話の番号を知るためなら、億単位の金さえ動くであろう。

 実際わしと会うためには、億単位の金を用意しなくてはならない。

 別にわしが要求しているわけではないが、根回しと言うものが必要なのだ。


「か、会長、至急、連絡したいことがありまして。」


 秘書の焦っている様な声を聞く。

 その報告の内容は驚くべきものだった。

 しかし、それだけに愉快なものだ、私の挫折の原因は能力者だけではなかったとは。

「魔法使いは能力者でないというのか…。」

  

 


 面白いな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ