名探偵たちの午後
「腹減った。」
あーくそっ
もう昼時か。
独り言が漏れ出してしまう位に腹減った。
とりあえず教室戻れば何とかなるか。
きっと誰かが解決策を見出してくれているところだろう。
「お、黒独か、って黒独って呼びずらいな。
お前なんか考えろ。」
教室に行くと、ちょんm、では無くトリガーが話しかけてくる。
ほかには誰もいなかった。
「考えろって何をだよ。」
「自分のあだ名、呼びやすい奴。」
それ自分で考えて広めるのとか恥ずかしい奴だろ。
沈黙が続く。
いすに座ればいいのになぜか床に座っているトリガー。
それを見下ろすかたちとなった俺は何か居心地が悪くなってくる。
分かったよ考えればいいんだろ!
………
よし、考えたぞ。
「黒とかでいい。」
トリガーは少しの間のあと、
「だせ。」
死ねよぉぉぉぉぉぉぉぉ
「あーいや、待て。」
トリガーが顎に手を当て何かを考え始める。
「あだ名を自分で考えるのはやっぱ不自然だな。
あれだ、なんかお前、暗そうっていうか、眼に隈あるし、
なぜか藁人形が鞄の中に入ってたし、ひっきーで。」
「おい、待て、なんで俺の鞄の中身知ってる? 」
その藁人形は、昨日のハンバーガー事件の前に編んでおいた奴だ。
「あぁ、蟹っちがなんか見つけて遊んでたぞ。」
蟹っちというのは蟹吉のことだろう。
あいつ、、、今度あったらただじゃおかない。
その前に人の鞄を勝手に漁るとかどういう神経してるんだ。
あ、と何かを思い出したように俺に鍵を渡してくる。
「今日な、俺ちょっとねーちゃん探してたんだ。」
「あぁ、うん。」
何の話か分からないが、取り合えず頷いておく。
「そしたら寮母さんに会ったわけよ。これがなかなか美人なんだけど、
なんか荷物はこぶの手伝ってって言われちゃってさ。」
あー、わかるな、こいつなんか頼みやすそうなオーラ出してるもんな。
「そんで、、かぎ貰ってきた。お前で最後だから。」
「いや、何行ってるのか全然わかんないんだけど。」
えーっとめんどくさそうな顔になるトリガー、ムカついたので軽く蹴っておく。
「あーじゃぁこういえば解るか? かくかくしかじか。」
なるほど、昨日俺たちに部屋も飯も用意されていなかったのは、
斉藤先生が連絡するのを忘れていただけで、
そう勘違いした原因となった、ここに用意された布団は、
教職員が夜、学校にいるための設備だったってわけか。
そしてこれは部屋の鍵と。
つまり斉藤先生はこれからは斉藤と。
「解った。」
「マジでか! 」
何を驚いてるのかは知らないが、部屋があるのならそこで本を読もう。
図書館からここまでの距離も長かったが、この寮までも長い。
そもそも寮があるなんて知らなかったのだが、、、
おかしいな。
この廊下を右に曲がるはずなんだが、右が無い。
まぁ別に左にしか曲がれないなら左に曲がるべきだろう。
くそっ行き止まりか。
そもそもこの校舎どうなってるんだ、なんで行きどまりがあるのかが理解できない。
「あ、黒独君! よかったー、私道に迷っちゃったんだよぅー
ほんと困るよね。」
えーーーーっと、
確か、、、、、
「さぁ問題です! 私の名前はなんでしょーか?」
すごく悲しそうな顔で明るい声を出しやがる。
明らかに自分で自分のことを追い込んでいる、俺のせいではなく。、
しかし可愛そうすぎて、、、っていうか思い出してやりたいが、
ちょっと前に名前が出たはずだ。
思い出せ、確か最後に名前を呼ばれていた奴だ。
「あ、ヒントだしまーす。ほら、私髪の毛藍色だよ?
クラスの中で一番髪の毛長いよ? キューティクルだよ? 」
なんか必死だな。
しかしまったく思い出せない。
「うぐっ、もういいよ。ごめんねウザイよね。
うん私さ、小学校の頃から、重いって言われ続けてきたし。ぶつぶつ…。」
よし、思い出した!
「小口、、、、さんだろ。」
名前までは無理だったが、及第点だろう。
「名前は? 」
「ん? 」
「下の名前。」
いや、今のでもう終わりにしようぜ!
馬鹿だろ、馬鹿だろこいつ、もう無理だよ、
なんで泣きそうになってるんだよ。
明らかにお前が招いた結果だろうよ!
これはもう走って逃げてしまおうかと思っていた時、
赤い髪で、ツインテールが4組ぐらいずつ頭にくっついた奴が、
走ってこっちに来た。
「あり? 淑やかじゃーん、なんで泣きそうになってんの?
修羅場? 修羅場なの? 」
こいつなら解る。こんな目立つ髪形を俺はほかに知らない。
蟹吉だ。
本名蟹・蟹・蟹だ。
「あ、蟹吉ちゃん。
なんでもないの、ちょっと自分が嫌いになっちゃって。」
「おぉ、詩人だね、柿を食べたいけんちょーじってか。」
いろいろと突っ込みたいところだが、とりあえず建長寺は
けんちん汁だ。
「そんな事よりさ、迷ったんだけど。
迷宮入りしちゃったんだけど。謎を解くのは君だよ。名探偵、淑、や、か、さ、ん。」
ビシィぃっと指をさす、なぜか俺に。
「君はアーサー・ヘイスティングズ役だ。
さぁ、サポートしたまえ。」
「えっと、誰? 」
名探偵役の淑やかが、首をかしげている。
「こいつに名探偵は無理だろ。」
「確かに、淑やかには悪いけど私が名探偵になるしかないぜ。」
「いや、お前にもポアロは無理だろ。」
むすっと頬を膨らませる蟹吉。
「じゃあなにさ、名探偵はお前か、しょうがないな、
蟹吉のことをホームズって呼ぶならやってもいいよ。」
「あくまで俺は助手か。」
「そう言うなよ。帰国子女でかつ、成績優秀、可愛くてもう神!
なワタクシと同じ度胸を持つなんて無理じゃったんじゃよ。
でもお前はよくがんばった。」
ぽんぽんと肩をたたいてくる。
「いや、それは納得いかない。なぜなら明らかにお前は帰国子女って顔じゃないし、
馬鹿っぽく、なお且つ神ではない。」
「くそっ、可愛いってとこを否定しないことに少しドキッとしたぜ。
だけど、あんたが私より下だってことを思い知らせてやる!! 」
「わぁ、蟹吉ちゃんの中で黒独君の評価がお前からあんたに代わった。」
「受けてたつぜ! 」
あれ、俺ってこんなキャラだっけ。
いや違う、蟹吉にあてられて少し変になってただけなんだ。
あれから、右の壁に手を当てるという神業を使い外に出た俺たちは、
俺に割り当てられた部屋に入った。
「さぁ、頭脳と頭の良さ、さらにIQを掛けた勝負だ。
負けたほうは勝った方に敬語な。絶対だかんな。」
うーん、本が読みたいんだがな。
なんで受けてたつとか言ってしまったんだろう。
「はい、第一問! 栃木県の県鳥は?」
「オオルリ。」
「くっ即答か、、、なかなか熱ぃバトルになりそうだぜ。」
なぜか蟹吉は燃えている。
次は俺の番か。
「イカの足は何本でしょう。」
「ふっ十本って言わせたいんだろうけど、
残念だったな、イカには腕しかない。よってゼロっ本だよ、コロンボ刑事! 」
む、引っかからなかったか。
っていうかムカつくな、ゼロッ本って馬鹿っぽいのに。
「蟹吉の本気を見せてやるぜ。
さて、世界でもっとも多区取れる果物は? 」
「葡萄。」
「で、ですが! イタリアのローマにある観光名所、真実の口の顔の人の名前は? 」
「トリトーン。」
「うぐっ。」
「じゃ、バンコクの正式名称は? 」
「えーっと。」
さすがに答えられないだろう。
「第三問、バンコクの正式名称は? 」
蟹吉が鸚鵡返しに俺に問う。
「おい。」
「う、うるさい。そんなの言えるわけないね!
助手の癖に! 言えるわけ無いよ! 何なら行ってみれば、
「クルンテープ・マハーナコーン・アモーン・ラタナコーシン・マヒンタラーユタヤー・マハーディロックポップ・ノッパラッタナ・ラーチャターニー・ブリーロム・ウドム・ラーチャニウェート・マハーサターン・アモーンビーマン・アワターンサティト・サッカタットティヤ・ウィサヌカム・プラシット」
「………。」
「おい蟹吉。」
「何さ。」
「敬語だろ? 」
屈辱に震えている蟹吉。
「うっ、数学とかなら負けるわけ無いんだ!
苦手分野だったん
「敬語。」
「待ってよ。冗談だっ
「敬語。」
それまで黙っていた淑やかが、
「じゃ、私が反撃する! 」
と立ち上がった。
「問題ね、蟹吉ちゃんのフルネームは何でしょう。」
(ふっふっふ、私の名前を覚えてなかった人が、蟹吉ちゃんの長い名前を覚えてるわけ無いもんね。)
「蟹谷、キャンサー、吉蟹。」
「私の名前は覚えてなかったくせに!!! 」
淑やかさんは走って出て行った。
「いつの間にか蟹吉もいない。」
きっと出て行ったのだろう。
自由な奴だ。
あれそういえば蟹吉に俺、なんか言うことがあった気がしたんだけどな。