亀でもわかる魔法講義
読み終わった。
亀でも分かると書いてあるだけあって解りやすかった。
魔法のオリジンは点を書き、魔力を注入するものだった。
次のその点を増やしていって線でつないでいったのが、攻撃魔法と言う
魔力をぶつけるものだ。
そして魔法には4つあるらしい、攻撃魔法、属性魔法、空間魔法、召還魔法だ。
また点を広げ円にし、その中に書き込むことで多様性を足していったのが
属性魔法、これが最も魔法らしい、火を出したり水を操ったりする奴だ。
ちなみに攻撃魔法は魔力と言う本質は変わらないことに注意だ。
次に空間魔法、これが難易度が最も高い。
空間そのものに魔法を刷り込み、効果を与える。
例には、動けなくなったりと行動に制限を与えたり、
ダメージを食らったりする事もあるらしい。
召還魔法は、モンスターを出せるらしい。
ほかには特に書いていない。
まぁいいか。これは知ってるしな、
鬼と戦っていた奴がそれだろう。
あ、鬼はあの後どうなったんだ?
連絡が無いな…。
そういえば、俺の思ってたのと違うのは回復魔法ってのが無いところだ。
あと錬金術ってのは魔法じゃないらしい。
「ん? 箒で空を飛ぶのは何魔法なんだ? 」
「それは攻撃魔法、魔力そのものを推進力にしてるから。」
いつの間にか司書が後ろに立っていた。
驚きを外に出さないように尋ねることにした。
ここで動揺すると舐められる。
「魔力ってのがあれば誰にでもこれ使えるのか? 」
「おっと、おねいさんに質問かな。いや忙しいんだけどな、
でも可愛い後輩のためだしな、しょうがないなー。」
こいつ嬉しそうだな、どんだけ暇なんだよ。
「あ、じゃあいいです。」
「はい、実際魔力は誰にでもある、だけど魔法を使うには
正確な図形を作る能力、あ、これは別に手書きじゃなくてもいいのだけれど、
これが必要。」
そういってポケットからルービックキューブを取り出してガチャガチャやり始める。
よく見ると線が引いてある。
「後は、言葉、魔法言語が必要。」
そういって何かつぶやく、
そして唱え終わるとともにルービックキューブが丸に一本線が入っている図形を作り出す。
「あと、魔法自体がその人の家が代々秘密裏に受け継ぐものだから、
そういう家に生まれないと無理。」
そういうと机から花が生えてきた。
「うわっ。」
「本当は魔方陣を見せるのはご法度。しかし、素人が見ても解らないものだから。」
今度は紙とペンを出す。
「魔法言語、魔法陣どちらかだけでも発動はできる。
魔法言語だけだと時間がかかりすぎる。
その点魔法陣なら早い、しかし少しでもずれたらできない。
書きにくい個所を言語でカバーする程度。」
今度はすごく複雑な図形だ。
紙が黒くなっていく。
「はい。」
紙をわたされる。
また花が生えてきたと思ったら大きくそれが口を開け、顔を食われた。
「痛い痛いいた、、。」
「はい。」
また何かやったのだろう。
今度は植物がきれいさっぱり消えた。
「馬鹿か! 」
思わず怒鳴ってしまう、散々だ。
何かよだれみたいなのでべたべただし。
「…、何かしら抵抗が出来るものだと思っていた。めんご。」
「でもこれは貴重な体験、普通魔法なんてくらえない。」
こいつ…。
「いや、ホント仲良くしようとした。悪意無し。」
「なんで仲良くしようと思ったんだよ。」
「昨日の見てた。ハンバーガ―食べたい。仲良くしてれば誘ってくれるかと思って…。」
な! こいつなんで。
しょうがない。
「食べたいならやる。」
ポケットに入れていたのでつぶれているが投げてやる。
「あ、いや、そういうつもりじゃない。」
「いいよ、別に。」
口止め料だ。面倒になるのは嫌だしな。
それにたぶんあんな無謀な事はもうしない。
「…ありがと。」
教室で読むか…。
「あ、そこのカードに書名と名前を書くといい。」
言われたとおりに書いて、司書に渡す。
「あ、いや、私、司書じゃないから、司書さんに渡して。」
? だってこいつカウンターの中にいたし、他に人などいない。
「はいはい、私ですよっと。」
カードが奪われる、ちっこいネズミがそこにいた。
呆然としていると、
「どうも」
一礼してカウンターの中に消えた。
「ひ、非常識だ。」
何かいろいろ崩れた気がする。
図書館からもう一刻も早く出ていきたい。
「あ、私、2年Cクラス、優等生の大葉 翠。」
自分で優等生とかいうな。
別に名乗られたからって俺は名乗り返したりはしない。
そのまま出ていく。
「尊くん、なんか困ったら手伝う。」
しまった。さっきのカードに名前書いてたのを見せてしまったんだった。
これだから、嫌いなんだ。
自分で何でもできると思ってる。
どうしようもない事の方が世界には多いってことを解ってないんだ。
だから、だから、だから、その名前を呼ぶんじゃない!