図書館
総合クラスにはカリキュラムが存在しない。
カリキュラムが組めない学生がこの総合クラスに編入されるからだ。
ホームルームのあとは各自解散。
つまり常に俺は自由行動と言うことになる。
希望すれば定員割れしていないような授業には参加できると言う
特権があるが、俺には関係の無い話だ。
聞いてみると、魔法、能力精査、能力向上、術製作などの独特のものから、
国、数、外国語などの至って普通のものもあったが、サボれるならサボっておこう。
みなが授業している廊下を歩いていく、教室に入るための二つの入り口
についている窓から覗くと黒板に見たことのない文字、
その下にアルファベットが並んでいる。
アルファベットを拾って呼んでみる。
「らぐばぁりおん? 読めないな。」
ほかに読み方は無いかと、ほかの言葉でも読んでみるが成果は無かった。
先生と眼が合った、手招きをされる。
遅刻してきた生徒か何かだと間違われたのだろう、
その動作でいくらかの生徒が俺のほうを見る。
ここに居たら目立ってしまう。言葉の意味は気になるが授業を受けようとまでは思わない。
逃げ出そうと扉から離れると、その扉から月が出てきた。
「…気持ち悪い。」
口を押さえて具合が悪そうだ。
しかし、こいつは隙を見て眼を見てくるから安易に近づか無い。
「…ひどい。」
恨めしそうな声を出してくるが気付かない振りをすることにした。
「具合でも悪くなったのか? ざまぁみろ。」
「……ざまぁみろとか。」
なぜか呆れられた。
「…魔法語。」
教室を指差す。
どうやら、魔法言語とやらの授業だったらしい。
魔法なんて魔力が無いと使えないのに、物好きな奴だ。
「…あんなの人間に発音できる言葉じゃない。」
そこまで言って吐き気を催したのだろうか、走っていってしまった。
よく解らなかったが、好奇心は猫をも殺すと言うことだろう。
「まぁいいか。」
それよりも今日は宿女、初日に斉藤先生の話に一人笑っていた沸点が絶対零度で
雑魚臭がしたあいつだ、に貰ったパンフレットにあった図書館と言うところに
行こうと思っていたことを思い出す。
そこには10万冊以上の蔵書を誇る大図書館と書いてあった。
「10万冊以上の蔵書か、入学試験からして馬鹿だと思ってたけど、
馬鹿だな、同じ本が50冊位あるのか? 」
思わず笑みをこぼしてしまう。
別館丸々ひとつが図書館だ。
扉を開けると荘厳な雰囲気、高い天井、そして壁に敷き詰められるようにある本、本、本。
「おぉ。」
中央にはカフェにあるような丸い机がたくさん置いてあり、
奥にも本棚が並んでいる部屋がある。
最高だ。
「ここに住みてぇー。」
「いいですよ。」
誰もいないと思っていたが、カウンターに頬杖つきながら文庫本を読んでいる
司書さんだろうか、がいた。
眼はほんの文字を追っているので実感が薄いが、
ほかに人はいないので俺に言ったのだろう。
しかし、そんな冗談にいちいち反応して張られない。
片っ端から読みたい。
図書館に行くと大体知っている本があるものだが、ここにはそれが見当たらない。
さすが、無駄な蔵書数を誇る図書館だ。
と言うか、全体的に古い感じの本がおおい。
ここはそういうコーナーなのか。
ちょっと古文書っぽいというか、大切に読まないと本が破けてしまいそうだ。
とりあえず、ギラナドの魔術師という本を一冊引き抜く。
「取ったー、第八部まであり本の重さが一冊で2キロあると言う超ヘビー級の古典
を取りやがったーーー。ためらいが無い、躊躇いがありません。」
ぼそぼそと司書が話している。
周りに誰もいないので聞こえるがそうでなければ聞こえないような声の大きさだ。
ほかにも二、三冊欲しかったので、ほかの本棚を回って、他殺スイッチと曲がった運命、
独裁者の歩兵、後、目に付いたので、亀でも解る魔法の使い方を手に取った。
「独裁者の歩兵は私も好きだー、魔法の指南書を取ったぞ、さて彼は
授業をサボって指南書を読みに来るなんて真面目なのか真面目でないのか解らないー。」
「実況すんな! 」
ついに言ってやった、ブックカバーが付いていて何を読んでるか知らないが
顔をこっちに向けてないと言うか、こっちを見ずに淡々と俺の実況をしてくるあいつに言ってやった。
「図書館ではお静かに。」
「…。」
俺は大人だからな、何も言わないぞ。
ならべくカウンターから遠いところに座り読み始めた。
とりあえず、魔法について俺は何も知らないからな。
亀でもわかるから読むか…。