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最弱の英雄伝   作者: かぼちゃの骸
プロローグ
3/108

呪術師


 俺の家は呪うことを仕事にしている。藁人形とか作ってるわけだ。


 特別な力なんてない。誤解されがちだが、呪いってのは何の才能も必要では無いし、あったらあったで他の呪術師には嫌われる事だろう。

 もちろん俺もここにいるような奴みたいに、魔法も超能力も使えない。

 まぁ確かに、俺は人とは違うかもしれない。だが、努力と時間の浪費を代償に恨めしいあいつを転ばせることが出来る様になったくらいで、それなら直接蹴り飛ばした方が早いと思ったりもする。



 なのに何故こんな胸糞悪い、能力とか魔法とかの学校にきたのか?

 俺は許せなかったのだ。

 呪いなんて信じなかった人間が魔法や超能力を、いきなり出来るようになったこと。当然のようにそんな奴をあがめたて始めたこと。前からいた俺たちみたいな奴の力は相変わらず信じようとしないってのに在ろうことかそれらを崇めたてるようにしていること。


 この悔しさがわかるか?解らないだろう。これに賛同してくれたやつは一人しかいなかった。それはそうだ、他の奴らは何かしらそういったものが多かれ少なかれ使えるのだから。

 そいつはたった一人の親友だ。

 俺と同じ職業の奴らさえ賛同はしなかったことに賛同してくれた。


 いま俺は能力を開花させた奴らが集まる大学に編入した。ここで俺の力を見せつけてやる。

 基本、あいつらを見下せればそれでいい。たとえ何も見せつけるものがなくたって。


 どうやってここに俺が編入できたかって?手品を見せてこれが俺の能力ですって言ったら、180点ももらえた。


 なんてちょろいんだろう。それなりに緊張して、手汗がやばかったが能力者なんてこんなものだ。誰もがよく分からないものに点数をつけることなんて所詮無理だったのだ。

 そもそも、よく解らないとは畏怖の対象になるべきなのに。


 あとは筆記試験だ。全然簡単だった。


「あのーすいません。わ、わたしえっと、、こんにちわ?」


 誰だろうか、俺は能力持った奴と仲良くなんかならないと決めているんだが。どうやって切り抜けようか。噂では能力者はなにかムカついた事があると、火球を投げてくる野蛮人らしい。

「あれ、聞こえませんでした?お、おーい」


 無視だ無視。


「私そんな強くないっていうか、たいした能力持ってなくて仲良くなれる人捜してて……」


 いや、お前にはきっと鉄のハートとかいう能力がありそうなんだが、なんでこいつ一人で話し続けられるんだ。

 だが能力を持ってないのか……それならば、返事をしないのは少し気の毒だろうか。

「こんちわ」


 試しに返事をしてやる、俺の性格はそこまでねじ曲がってないからだ。

「わ、喋った。あ、こんにちわ」

「……」

「…………」


 これは俺が返さなくてはならないのだろうか。そもそもこいつは誰だ? 何で話しかけてきた?

 そんな時スピーカーから放送が入った、どうやら成績優秀者のあいさつが終わったらしい。聞き流していたので気が付かなかった。

 それよりも、もう沈黙に耐え切れなくなりそうだったので本当に助かった。

「「毎年のことですが、入学者が定員を上回りましたので今から最後の試験を始めます。ただ今から、レクリエーションとして配布した学生証を奪い合っていただきます。今から6時間後に2つ以上の学生証を持っていた方を合格とするので、がんばってください」」


 なんだそれは。定員? 確かに合格基準の600点越えの方は皆さん合格。というのを見たときからおかしいだろとは思っていたが、この学校の教師の奴らが適当な入学試験をするからそんな事態になるんだろう。

 それとも俺みたいに入った奴を淘汰するための試験なのか。そうだとしたら優秀なのかもしれないが、これはかなりまずい状況だ。


 俺は何も出来ない。


 呪いってのは数日前から準備してやっと、相手を転ばせる位の力なんだ。もちろんこっちも相応のものを差し出せば準備時間は短縮できない事も無いが、なんせ元が転ばせるくらいの威力だ。使い道が本当にあるのかどうかも怪しい。

 最終兵器の呪いのわら人形はお守りとして持ってきたが相手の名前がないと使えないし、もし使えたとしてもかすり傷、もといかすり傷を負った気にさせる程度のものだ。


 まだ目的は何も達していないのにこんなところでリタイアなんて御免だ。


「に、逃げましょう。ここにいたら死んじゃいますよ」


 さっきの奴が俺のてを握って、ひっぱりあげようとする。さすがに死ぬことはないだろうと思っていると、なんだあれは。



 竜が炎を吐いている。召喚術ってやつだろうか。

 話には聞いている。これでも俺は才能ってやつの情報収集はしたのだ。だがでかい、あれは本当に人間の業なのか。


「ここにいたら丸焼きですよ!!」


 俺は能力者ってのをなめてたかもしれない。もうズボンが焼けた。

 こいつが手を引っ張り上げなかったら体じゅう大やけどをしていた所だ。


 俺は、見知らぬ女子に連れられ、体育館の外に出た。そういえば気になることがある。

「なぁ、なんで俺のことを助けようとするんだ?」


 自分で言っといてなんだが、俺は実は屈折した性格かもしれない。

「知りませんよ、逆に私が教えて欲しいです」

 こうして俺はドラゴンに丸焼きにされることだけは免れたのだった。


 


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