表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱の英雄伝   作者: かぼちゃの骸
プロローグ
18/108

鬼対竜




 そこはもう、体育館とは言えなかった。

鉄骨は剥き出し、嫌なにおいが漂って、完全に火事の跡だ。


「はっはっはー。」


 中にひとがいる。後姿だけが見えている。

そしてそいつは、笑いながら、倒れた。 


「おう、黒独。とりあえず魔法使いってのには勝ったぜ。」


 奥から、よく知った顔が現れた。焦げていたが。

 いや燃えていたといったほうが正しい。


 もう制服の袖はないし、こうなんかいろいろ大変なことになってはいたが、

こいつが勝ったというんだ。

 勝ったのだろう。


「なにを。われはまだ負けては…いない。

われの名を借りココに存在を記せ。」



 しかし、負け犬はまだ負けを認めない。



「ドラゴン!!! 」


「「グァァァァ」」


 青いドラゴン。その頭の上に負け犬は乗っていた。

どういう仕組みかはわからない。

 召喚術ってやつだろうか。

 しかし今になっては意味をなさない。


 鬼が笑っていたからだ。

 どんなピンチもこいつが笑ってれば何とかなる。…はずだ。

  

 俺が、ヤンキーに絡まれていた時も、犬に追いかけられた時も助けてくれた。

そしてあいつは言っていた。

 俺は銃には負けないと。

なんたって伏虎は最強の武術だからだと。


 魔法や超能力なんてものが現れる前は。


「噛み砕け! 」


 まっすぐ、大きく口を開け、鬼にドラゴンが迫る。

  

 鬼は、思いっきりドラゴンの上に載っている負け犬めがけて、

大きく振りかぶって石を投げた。


「ふぎゃ、」


 負け犬にヒットすると同時に、ドラゴンは煙と化した。


「さぁ、帰るか。」


 勝利を収めて、満足したのかそんなことを言い出す。


「いや、この学校に入るんじゃなかったのかよ。」


「忘れていた。」


 どうせそんな事だろうと思っていた。

 俺はいいといったんだが、負け犬にも、学園章をわけてやった。

 いい戦いだったからだそうだ。

どうやら、二人で6時間ずっと戦い続けていたらしい。


 他にも巻き込まれたのか気絶した奴がいたが、

俺は鬼をむかえに来たのだ。助ける義理などない。


「…すごい。…何の能力なの? 」


 それまで何も言わなかった月が鬼に尋ねる。


「誰だ。」   


 月は俺のことを指さし、


「…友達。」


 鬼が怪訝な顔で俺を見るから、しょうがなく、

頷いてやった。


「うん。そうか、名前はなんて言うんだ俺は鬼だ。」


 それにしても変なことを聞く、そんなこと聞かなくても、

月にはわかっているはずだ。


(いや、心を勝手に見るのは、失礼でしょ、目を合わせなければ

いいんだし。) 


 俺に失礼だから。


「…月。」


「つき? 」


「…そう。」


 無視され始めた。

 そしてお前は、それキャラ作ってんのか。


(ち、違うよ。人と話す時はいつもテンパってこうなっちゃうんだよ。)


「ない。能力などない。俺が出来ることは努力のみ。」


「…本当に? 」

 

「なぁ、黒独、お前喋らないな。どうしたんだ? 」


 月のせいで喋る必要がなくなってつい無口になっていたらしい。


「いや、なんでもないんだ。

早くいこうぜ。受付にはまだ時間があるけど、こんなとこでゆっくり

してたら、燃える。」


 そうだな。といって俺たちは校舎に戻った。


 負け犬は置いて行った。

 気絶したまま起きなかったらそれはそいつのせいだ。


 そう、基本俺たちにやさしさは必要ない。


 そうにきまってる。

 まぁどうでもいい。

 すべてはこれから、これからだ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ