千代 緋色
私はそんなに弱いんだろうか。
一時間に及ぶ説教を受けて私の自信は赤点すれすれの地点まで、
落ち込んでいた。
私は、数年前、一人で宇宙人達を撃退した。
それでマスコミには、ヒーローのように扱われ、
その記事を見ると私の能力はすごいことになっている。
確かに私の能力は、ダイヤモンドさえ切れる剣を作れるが、私には切れない。
剣は使い手を選ぶのだ。
それだけではない、初めの一回の時は地面から剣が生えてきて、
私自身もすごく強くなったが、そんなことはもうおこらない。
でも、無制限に剣を無制限に作り出せるというのは、自分でも
かなりすごいと思う。
その証拠に、この学校でも私はいちばんの成績をもらった。
それだけじゃない。
私はかなり強固な鎧を作り出せもする。
なんかテレビでは核爆弾でも破壊できないみたいに言っていたが、
本当だろうか。
少なくとも私は試していない。
そもそも放射能とか絶対防げない。
だってこれ、結構脇とか隙間あるし。
試験の残り時間は1時間とちょっと。
地面に正座したままそんなご高説を聞きつづけた私の頭はパンク寸前で。
生まれて初めて心からの土下座をしてしまった。
実際はあまり内容は入ってきていなかったが、
正座がきつかった。
男なら軽々しく土下座なんてするもんではないが、
私は女の子なので許してもらおう。
「まだ、話の途中ですが。」
「そこを何とか。」
「本当に反省していらっしゃっているのですか。」
「もうほんとに限界です。」
とても深い深いため息をついた後、
それではどこかゆったりと座れる場所を探しましょうか。
と言って、メイドは学校の校舎のほうへ歩いていく。
土下座しても説教され続けるのかと暗い気持ちになったが、
まぁ地面よりは楽だろう。
少しは説教の内容もちゃんと聞き取れるだろうし。
学校の校舎に入ろうした時、すいません。と声をかけられた。
メイドさんが体を私とその人の間に入れて、臨戦態勢に入ったのがわかった。
私は、この人の本職は軍人か何かだと思っている。
まだ試験は終わっていない。
帰った人ならたくさんいるだろうが、まだ試験をあきらめていない人もいるだろう。
そんな人に襲われる可能性は大いにあるのだ。
「何かご用でしょうか。」
この写真なんですけど、ここに写っている人見ませんでしたか。
そういって、出してきた写真には私から学園章を奪い去った人だった。
そういえばこの人のせいで、こんなに怒られているのだ。
なのに、私だけ怒られるのはおかしい。
そう思うと怒りがわいてきた。
解っている。あんなところで私が転んだのがいけないんだ。
だからって全部持っていくことはないじゃないか。
2個ぐらい置いて言ってくれてもいいのに。
そうすれば私も怒られずに済んだんじゃないか?
まぁ私も剣で切ろうとしたけどさ。
「私は存じ上げません。」
メイドさんがそう答えるとすぐに、そうですかと言って、
身を翻して林のほうに走って行ってしまった。
私、知っていたのにな。
なんとなく罪悪感があったが、私には関係ないことだ。
お説教が嫌だったので、ぐずっていたら三階まで来てしまった。
ここまで2人ほど、人に出会ったが1人は私を見るとすぐに逃げてしまったし、
もう一人は全身血だらけで、30代ぐらいの大人がいたが、
私は大丈夫だ、試験に集中しなさい。と言われたし、明らかに私たちより年上で、
マントも羽織っていたので、教師なのだろう、と思い放っておいた。
なんとなくこの学校に入るのが不安になりだしていたが、
ここまで来たのだ。やめるのはもったいない気がする。
結局、理科室みたいな大きな教室があったので、
そこに座ることにした。
「さて、話の続きですが。
お嬢様がなぜあんなところでうずくまっていたのか、
もう一度状況を確認しましょうか。」
「いや、なんか足がつっちゃって。」
またじとっとした目を向けてくる。
そんなことで、と言いたげである。
かなり憂鬱な気分だったが、じっくりと話てやろうと意気込んだ所で、
後ろのほうの机が動く音がした。
「どうかなさいましたか。」
気になって席を立とうとしたら咎められた。
直接そういったわけじゃないが、なんとなくそう感じる。
ここは座ってたほうがよさそうだ。
しかし、後ろを向いてみても何もない。
きっと何かの拍子に机とかが音を上げただけだろう。
それよりも私は、どうやって墓穴を掘らないように話をするのかに必死だった。