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最弱の英雄伝   作者: かぼちゃの骸
世界ぶっ壊すよの章
108/108

最終回  108は能力の数




 ※



 ……私は世界のどうのこうのはどうでもいい。逆にそれがどうでも良くなかったら、私のフルムーンが発現したときにひっきーの考えを変えちゃえば良かった。

「愛してるよ、菫」

 何それ。

 告白? して二秒で吹き飛んでるんじゃねぇか。

 


 というか……今でさえ、能力なくなったけど、ちょっと前までひっきーの考えてること全てを掌握してたわけだ。そんな告白をされても信じられな……いや、よくよく考えると、あの感情が恋? いや、ないよね。さすがの私でも気が付くだろう。でも、恋愛経験無いからな。

「っと、そんなことを考えてる場合じゃなかった」

 私ってどう思われてるんだろう。

 目の前にはひっき―を叩き潰した、東大寺の門のところの像みたいなのが仁王立ちしている。

「雑魚が。最後まで、変なことに拘りやがる」

 雲が小さくなっていき、ひっきーの弟が地面に降り立つ。

 ぴりっと指先に痛みが走る。

「あー」

 この感覚は知っている。多分呪いだ、独特の痛みがある。でも何で最後の最後に私に呪いをかけたんだろう。無くなってから必要になるなんて、嫌な能力だ。ひっきーの考えが知りたい。前は気味悪がられたりとか、親の浮気を知ったりとかもう欝で欝でしょうがなかったのに。

 ひっきーは、能力者のいない世界を目指してた。私は? 私はどうすればいいんだろう。

 ひっきーの弟が、ワールドマネージャーってのを弾き飛ばす。

「結局は俺が最強究極至上神だ」

「なにそれ」

 結局というところになぜか引っかかる

「ん? あぁ、兄貴の……。だってそうだろ? 俺より強い奴はこの世にいない。兄貴はあんなくそみたいな世界に執着してたみたいだが、俺は絶対にそんなことはしない。全部捨てて、神になるんだ」

 能力は、前の世界。いや、今はほとんど前も後もないくらいに世界は近づいて、あとはひっきーの弟だけが変化なのだが、前の世界で不幸な人間に与えられたものらしい。それはきっと、力を持って、どの程度、世間を捨てやすいかの順なんだろう。この人は神様になるんだ。

「神になる。そうだ、俺には目的がない。何でも出来るからな。勧善懲悪、お前ら人間には興味はない、散々な思い出しかないからな」

「よくしゃべるね」

「そりゃそうだ。お前には神の言葉を伝えてもらおうと思っているからな。演説なんて面倒なことはしない。ただ、何も知らない人間が裁かれるのをお前がどうするかという問題だ。伝えなくても良いが、そうしなければそうなる。実に愉快だとは思わないか、実に神的だ」

 神様は……、神様を殺したら、それは英雄の仕事だ。

 私はナイフを取り出した。

「愛してるよ、ひっきー」

 ひっきーの弟にゆっくりと近づいていく。

 私はやっと、ひっきーの考えを理解した。この世界に神はいらない。

「そんな物騒なもん取り出してどうするんだ? まぁ、愛した人をってことだろうが、俺には理解できないな。死にたいのか」

 それに、もしかしたら前の世界になったらきっと、ひっき―も生き返るかもしれない。

 だって、神を殺した人間なんてきっといないはずだ。

「でも私も馬鹿だね、ひっきーを信じてどうするんだろう」

 再びひっきーの弟の周りに雲が集まる。

「まぁ、どうでもいいか。死ね」

 今度は竜の形になった雲がひっきーの弟の周りを回る。竜の頭に弟が乗って、こっちに突っ込んできた。

 しかし竜は私に目の前で霧散する。勢いはそのまま弟が転がって目の前でやっと止まった。

「何? 伝達パルスに齟齬が生じるなんてありえない。何が起きた、この世界にもう能力者なんていないはずだ!」

「焦り過ぎじゃない? 運が悪かっただけでしょ」

 ナイフを振り上げる。

 避けようとした弟は、砂か何かに手を滑らせ、額でナイフを受け止めることになった。

「そういうことか……」

「あっけなかったね」

「本当にいい思い出がないな、女には」

 血が額を流れる。

「私も、あんたら兄弟にはいい思い出がないよ」

 突き飛ばして、私は後ろを向いて歩き出す。 


 かっこよく去りたかったが、結局戻ってきて、ひっきーの死体を捜す。ないことが解ると、きっと遺体を見つけたときに流れるはずの涙が溢れ出した。


 涙も枯れて、何処ともなく歩き始めると、私の後ろがどんどん闇に飲まれていく。

「失敗か……」

 後ろから声が聞こえた。

「誰?」

「知りたいのか?」         

「はぁ。いいよ、もう疲れたし」

 足を止めて、闇に溶ける。

 



 …………



 周りを見渡す。

 世界は何処も変わっちゃいない。

 さっきまでのはもしかして夢?

「つっきー」

 世界は元に戻った。少しだけ不公平に元通りになった。

 私の名前はすみれ。だけどその名前は好きだ。一言で私に不公平に幸せが訪れたのを教えてくれたから。


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