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最弱の英雄伝   作者: かぼちゃの骸
世界ぶっ壊すよの章
103/108

勝ち負け 

   

   


 


 俺の目の前に、ケータイが落とされた。月のものだろうと重い、覗くとニュース番組が映っていた。

 町の中から黒い人形が消え、代わりに大きな花が出現したというものだった。花はチューリップのことだろう。あの会社にいたいるかの知り合いの二人はうまくやったらしい。チューリップは崩壊するまで周りの能力や魔法の元となるものを吸い取っていく。このまま放置すればシチュエートなどの能力を吸いきってもとの世界に戻るし、もし、チューリップが破壊されても大きな力が行き場を失い地球ごと破壊するほどの爆発が起きるらしい。

 まぁ、そこまでうまくいくとは思っていない。チートな能力が大量生産されているんだ、どうにかしてチューリップの破壊だけで爆発させないような方法を作り出すだろう。チューリップが完成すると、黒い人形達は二次目標としてそれを守ることが設定される。町の中から黒い人形が消えたのはそういうわけだ。

「ひっきー、私は最初っから」

「背骨が折れる」

「今いい話をしようと思っていたところなのになんて奴だ!」

 月は俺の中から降りて、俺も立ち上がった。

「俺の意思はないのか」

 立ち上がろうと思っていないのに、立ち上がってしまいげんなりする。

「自由に喋ってるじゃん。……まぁ、いいんだけどさ」

 本によれば、フルムーンの能力は思考を読み取り、自分の思考を相手に植え付け、その通りにしてしまうようなことだ。俺が正確に本の内容を読み取れているのかは解らないが、おおよそこんな能力のはずだ。つまり俺の思考で嫌なところがあれば、例えば俺がこいつをぶん殴ろうと思えば、月がそれを読み取り、変えてしまい、俺はそんなことを考えさえしなかったことになる。

 多分……、今のも殺すのところをぶん殴るに変えられたかもしれない。 

「正解だけどさ……、いい加減私の話を聞いてよ」

 それでもこんな質問をしてくるのは、こいつの人柄だろう。

「お前さ、そういうのに能力使うなよ」

「ちょっと待って! 濡れ衣にもほどがあるよ? それでもこんな質問をしてくるのはのくだりは何も操作してないよ、疑いすぎだよ……」

 そうか、だったら本当に月はいい奴だな。

「いまのは……」

「ちょっとぐらいいいじゃん。それよりも私の話を聞いてよ! いくからね、私と……パンドラって名前なの? あぁ、パンって呼べばいいのか、炭水化物君みたいだな。顔を分けてよ」

 俺の思考を読み取ってしまうことで、全然話が進まない月。俺には時間がないんだけどな。

「なんだよー、久しぶりじゃん。もっと雑談しようよ」

「いいけど」

「あれ? いいの?」

 まぁ、自分の意思なんてあってないようなものだ。

 とりあえずは、まだ俺は死んでない、月がそんなことするわけじゃないじゃないか、五月蝿い! ちょっと、俺の思考を変えるのやめろ、もう訳解らない。

「じゃぁ、聞いてよ。私の能力は、目を見た相手の思考を読み取り、思考を伝える劣化テレパシーな訳だったんだけど。こう言うとテレパシーってかなり強いね、五月蝿くてしょうがないよ」

「あぁ、五月蝿くてしょうがなかったな」

「その私の進化した能力フルムーンだっけ? 物知りだねひっきー。もはや私は思考だけに留まらない、私の目を見たことのある相手の脳を支配するフルムーンを持つのだ!」

「自慢しにきたのかよ」

「違うよ、もう、私の見せ場にいちいち茶々いれないで」

 いい加減棒立ちもつらい。


 その時、後ろのほうで大きな爆発音とともに、風が俺の頬をなでるように吹く。

「あ、終わったね」

 ニヤっと月が笑う、勝ち誇ったように。


 

 ケータイ電話が鳴る。

「出ていいよ」

 月に言われるよりも先に、画面を開いていた。

 メールはいるかからだった、あの爆発はいるかが起こしたものなのだろう。メールの文面は立った一言、

「死んだ」

 ケータイの画面を閉じる。

 いるかは特にまめな奴だ。自分が死ぬってことまで報告してくれなくてもいいんだが、モノとふーらるは生きているんだろうか、世界がまだ壊れていないということはシチュエートの奴はまだ倒せちゃいない。口の中に血の味が広がって、無意識に口の中をかんでいたことに気付く。

 いや、本当に倒せていないのだろうか。そもそも俺は何故、シチュエートの奴の能力がそいつが死ねば消えるものだと思っていたんだ?

 もっと疑うべきだ、能力の全ての可能性をしっかりと推考するべきだ。

 フルムーンは俺の脳を支配する。

「ん? 何か誤解してない? だから私は最初から、つまり一番最初に会ったときから」

 首根っこを後ろから掴まれる。

 引きずり込まれるように抱きしめられ、紅茶のにおいがしたと思ったときには、地面に転がっていた。

「思い出した」

 声がした上を見ると、ふーらるは腕の生えているであろう右手から血を流してそのまま倒れこんだ。

「記憶が戻ったんですけど、まさか私が本当にねずみだったとは思いもしませんでしたよ、飼い主様」

 顔色がどんどん青くなっていく。

「ふ、ふーらる? 死ぬなよ」

「自分は死にたいくせに。あ、全部聞きました。あと、二人ともシチュエートの人と道連れで死にました。がんばってくださいね」

 ――蘇我いるか、黒衍字白、フーラル・コレストレイ死亡。



       

   


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