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最弱の英雄伝   作者: かぼちゃの骸
世界ぶっ壊すよの章
102/108

補欠組み


 ※

「よし、急げ! 走るぞ、みんな」

「ちょ、あの、何が全然訳解らないんですけど!」

 鬼さんが死んだ。イチさんも死んだ。誰か知らない人も二人死んだ。

 あー、もうやだ。さっきまでパンさんの家でごろごろしてたのにいきなりバイオレンスじゃなってるよ。うわーなんだよこのへんななまりは前の世界のあれか。嫌だ、嫌だぁ、体洗われたことがあるとかいろいろ嫌だぁ、どんな関係だったのかはっきりいわないパンさんもいやだぁ。

「急いで回るぞ、いるか! 次はどこだ!」

「東北だ!」

「すいません、東北って何ですか!? 怖い! なんか遠い! 怖い!」

 ここは冷静に、物事を考えよう。自分でも流されすぎだ。今だって駅に向かって走ってるし、この人たちが悪い人だとは思えないけど、やってることが最悪だからな。まぁこの黒い人形騒動がおさまったら多分生き返るからいいか。

「喧嘩ですか? それなりに理由はあったんでしょうけど、暴力はいけないことです、というか、駅まで走るんですか! 私が運んでもいいですよ」

「まじか! 頼む、青森県まで!」

 ……遠い!

 しかし私の魔法で、盛岡駅までいく。がらんとした駅に今度は一人の男が本を読んでいた。

「はぁ、はぁ。きつい……、あれ、誰でしょうか?」

 黒い人形事件で、人通りが限りなく少ない駅になっているので、一人ということは不思議ではない。けれどもこのあふれ出る魔力で、こんな街中にいるのは不自然だ。

「あいつだ! よし、ここは俺が」

「やめろよ、お前がやると、いるかたちが不慮の事故で死ぬだろ! パンは最後だって」

 そういいながらいるかが大……砲……? 

「えっちょっそれどこから出し」

 私の疑問は、爆発音でかき消されてしまった。

「因果応名、七点是空大乗結界!」

 うわぁ、モノさんも性格変わったなとは思ってたけど、いまどきそんな名前の魔法誰も作らないって感じのを大声で……。

「君たちは、うん、僕のシナリオが気に入らなかったのか」

 攻撃全てを跳ね返したらしく、煙の中から颯爽と歩いてきて、私の前に止まった。

「へ?」

 距離を超越した!? 私とは結構はなれて多と思うんだけど、というか、魔法も感じなかったけどどうやって……。いや、違う。これは精神偶像だ、ここにこの人はいない。自分の精神体だけを三次元上の別の座標に映し出す高等魔法。ランクにすると、BからA。魔力の中継供給が可能な点で、遠距離攻撃の幅を無限にまで広げられる。

 撃ち滅ぼすには本体への攻撃もしくは、精神偶像を専用打ち消す魔法、もしくは精神破壊で倒すしかない。

 なかなか厄介な魔法だ。何よりも、汎用性の高い魔法を打ち消す魔法が使えないことだ。魔法の作用点が、術者に存在するのだ、魔法で岩を動かして、その岩に魔法打消しをかけても元の場所には動かないように、この魔法は打ち破ることがすごく難しい。

「君たち、話をしないか。僕は決して君たちが嫌いなわけじゃない。むしろ、君たちは実に面白い。自らの死を覚悟して何かをなそうとするのに、その原因過程全てが自分中心のものだ。神風アタックを自分のためにやるのは、並の人間には出来ないはずだ。さぁさ、お茶でも出すから、僕と話をしよう、そのために僕のほうから出向いたんだしね」

 みんなの攻撃がやむ。私のことは一応、攻撃しないようにしてくれるのか。

 だが、それもなんだが、前の世界の証明みたいな感じで複雑だ。 



 話し始めた男は青い髪の、大人びた口調で喋る中学生だった。  

 宇宙は僕が作った。とかいっていた。

 馬鹿馬鹿しいので、聞かないことにして一応精神偶像を打ち消す魔法を組み立てることにした。

「ん?」

 ウィークポイントセンスだ。このままここにいたら死ぬ。

「パンさん、いるかさん、モノさん、立ってください。何か来ます」

「――交渉は決裂だな。君たちには、僕の能力、シチュエートと戦ってもらう。これは別に嘘でもないんだが、君たちはテロリストという設定だ」

 




 ※


 シチュエートの能力者。いきなり幸運だ。こいつを倒せばこの世界は、元の世界に形を戻す。全ての設定は無に返す。これでちゃんとした世界で死ねるんだ。


「まずは、僕の作った世界の何が不満なのか教えてくれ、並べく努力してあげてもいい。僕は自分だけが幸せならいいなんて考えはないんだ。みな平等に不幸を与え、それを乗り越えた先の幸福を手に入れられるようにしている。その点では僕は神よりも平等だ。さぁ、何でもいってくれ、この完璧な僕の世界に何の不満があるというんだ?」

「お前が作った世界ということが不満」

 俺がそういった時、ふーらるが突然俺の袖を引いた。

「パンさん、いるかさん、モノさん、立ってください。何か来ます」

「そうか、じゃあ交渉は決裂だな。君たちには、僕の能力、シチュエートと戦ってもらう。これは別に嘘でもないんだが、君たちはテロリストという設定だ」

 最初に現れたのは、真っ赤な服を着た異様な集団だった。

「じゃ、僕は見てるよ」

 真っ赤な服、二十人ほどのその服には、胸のところに大きく砂時計がかかれていて、一人だけ見覚えのある顔があった。

 ――名前なんだっけな。確か鈴木……。 

 ちょっと思い出せないが、翠と仲のいい奴だ。

「黒独君がこんなことをする人だなんて思いませんでした。理由を教えてくれませんか?」 

「いや、ここにいると気が狂いそうなんで、家に帰るだけだ」

 相手は魔法使いだ。

 いるかに合図を送って、ポケットから受け取っていた黒い人形、ピエロを放つ。今地球は能力者なので、その能力に反応して、対魔法属性の人形を生み出せる。一気に膨らむようにたくさんのピエロが襲い掛かる。

「しまっ」

 二、三人の血が飛び散る。しかしやはり簡単にはいかないのか、他の奴らは消えてしまった。ピエロは魔力を察知してすばやくそれを追っていく。

「あいつが魔法使いでよかった」

 他の能力者だったら対処できない所だった。  

「さ、早く話してください。きっと聞くも話すも涙の話が、聞けると思ってハンカチ用意してきました」

 振り返ると……あ、今思い出した鈴木サキだ。

「私を舐めてません?」

 俺の他の三人は解りやすく縄のようなものでがんじがらめにされていた。

 ピエロがそんな簡単にやられるはずがない。他の奴らが囮になったのか。

「まぁ、ほら、私は信じてるんですよ。一度命を助けてもらったこともありますし。私だけでも信じます」

 サキは自分の台詞が恥ずかしかったのか、こっちに背を向ける。

 ……手はこちらで組まれていたので、ちょうどかばんの中にあった藁で、それを縛った。

「ちょ、何縛ってるんですか!? 人がいい感じで……。えっ? これって私仲間になるパターンの典型ですよね? 自分の家を友達のために裏切る敵なフラグ立ってたよね!?」

「さぁ、他の奴らの拘束を解け、そうしないとお前の髪をばっさり切る」

「地味に嫌なことを! わ、解りましたよ……」

 みんなの拘束が解ける。

 最初に口を開いたのはふーらるだった。

「あの黒い人形って、パンさんがやったんですか!? 犯罪者じゃないですか! っていうか、意外と簡単に召喚できるんですねあれ……というか、私の本!」

「これは魔法じゃない。いるか説明」

 いるかは立ち上がって、めんどくさそうに頭をかく。

「お前らに説明してもって感じなんだが、これは空気中の分子で構成される一瞬生命体の連続発現現象を利用した新しい機械の形」

「うわわわ、もういいです」

 ふーらるは聞きたくないと、でっかいねずみの耳を折りたたむ。

「それって耳だったのか」

「他に何に見えるんですか?」

「いや、飾りかと」

 というか、耳を折りたたんでもでも声が届いているのはいいのか。

 それよりも、厄介なのはシチュエートの能力者だ。ここで時間をあまり使いたくない。

「逃げましょう」

 ふーらるが今度は魔方陣を作った。

 確かさっきのと同じものだから、移動用の魔法だろう。そんなことを考えるうちに、外の景色が入れ替わり、どこかの丘の上に移動した。

「突然どうしたんだ」

「敵がたくさん来ます」

 縛ったサキは置いてきたらしい。姿は見えなかった。

 その時、雲の様子がおかしいことに気が付く。雲の形が球体になっていた。

「敵がたくさん……ね」

 雲で出来た球体は目のようだった。眼球が空に浮かんでいるように、異様な光景だったが、それが俺たちを見据えると瞬きをしてもとの雲に戻った。

 いるかが長い髪をくしゃくしゃにかき回す。

「まずいなぁ、おかしいなぁ、チューリップをあの二人に渡してやったのになぁ、失敗したのかなぁ」

「そうでもないよ、こっちに来てるのは、世界の命運を握る戦いからはずされちゃった補欠だからね。ども」

 懐かしい顔がそこにあった。

 翠だ。その後ろからぞろぞろと、月とか、雑魚子とか、知らない顔もあったがたくさん出てきて、同窓会みたいだ。

「いるか」

「はい」

 いるかにロケットランチャーを借りてぶっ放す。

 そして、俺たちは一目散に駆け出した。さすがにあれで吹き飛ぶようなことはないだろうが、少しの時間稼ぎにはなったらしい。林は翠の顔を見てからでは警戒してしまって、入りづらく、ふーらるの魔法で移動した。  

 しかし、シチュエートのやつが近くにいるのだ。このチャンスは逃せない。シチュエートの奴の居場所を突き止めたのは、イチだ。自分の能力で自分に一番の魔法能力を与えているから、解ったらしいのだが、イチでなければもう見つけることは出来ないだろう。つまり今しか、あいつを倒すチャンスはない。

 ふっと俺の足が止まる。

 みんなが、足を止めて俺のほうに振り返った。

「どうした、パン?」

「いいからいけ」

 みなに先に行かせるが、どうやら俺はこんなところで足止めをくらわなきゃいけない運命らしい。

 そういえば月もあの中にいた。

「知ってましたか? 私の能力ってフルムーンっていうらしいんですよ」

 月だ。

 フルムーンという能力を使いこなすようになったのはやはりシチュエートの影響だろう。

「一人か?」

「一人で十分だからね」

「偉くなったな」

 ふふんと勝ち誇ったように笑って、足の動かない俺の目の前までゆっくりと歩いてきた。

「四つん這い」

 体が勝手に動いて、地面にひざと手を付く。

「よいしょっと」

 月は俺の背中に座った。

「くそ重っ」

「えっ嘘っ。嘘だよね、私、軽いほうだよね!」


 

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