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最弱の英雄伝   作者: かぼちゃの骸
世界ぶっ壊すよの章
101/108

彼女の名前は千条栞


 ※

 みんなからイチと呼ばれているのは、私がイチゴを食べ過ぎて寝込んだことがあるからだ。最初はイチゴというあだ名だったのだが、呼びやすくということで、イチになった。おかげで私はフルーツ全般が嫌いになった。


 


「吐きそう……」

 最初からこうすることは決めていた。

 死の魔法の詠唱は、トカゲの黒煮と蛙のミイラ、その他もろもろで作った真っ赤なスープを飲んだ私の吐く魔法の言葉と、鬼の承諾によってなりたち、鬼の命を払って点仔の命を奪う。もちろん魔力も使うので損するんだが、それでもその絶対の効果は保障できる。

 絶対に鬼の命は無駄にしない。完璧に魔法を完遂する。鬼はすごくかっこいい、これだけはどんな世界でも普遍でないと気がすまない。

「半所水の目新針やルソンどれソーの耳故を碁愛――」

 死神を召還する魔法。死神なんだから、絶対殺せよ、半端なことしたらゆるさないからな。

「そんなスプラッタ無駄なんだよ!」

「――蜃気楼」

 死神が増える。見かけだけだが、相手からすればそんなの関係ないはずだし、これで絶対に殺す。

「だから私は死なな……消えろ!」 

 点仔が手を振るだけで死神が霧散する。

「絶対に殺す」

 死神は再構成される。本当に使えない、そのたいそうな名前の分だけ仕事しろっての。

「いるか、パン、モノ」

「なんだ」 

「私もここで死ぬから」

「ん」

 作戦では、これより先に進むと新たな敵の襲撃やイレギュラーが避けられない可能性が高い。だけど、鬼の無駄死を生み出すくらいなら私は死ぬ。

 私は走って前に進み、魔力を開放する。

 ――誤解の内容にいうと、私の魔力と、ここにいる奴らの使ってる魔法の源の魔力は別物だ。この世界は物凄いファンシーな世界で、エーテルなんていう世界に散らばる仮想物質と自らの感情の共鳴によって、体の中に溜まり呪文によってそれを形作り、増長させ放つ。私の魔力とは常に犠牲だ、もしくは対価、人が神に、子が母に払えるもの全てにそれは当てはまるが、限りなくそれは少ない。命を返すか、心を戻すか、罪人を差し出すか。

 この場合の罪人は、神様が寛容すぎてまず見つからない。

 つまるところ、魔力の開放とは、寿命の無制限開放。


 相手の能力は今のところ、自分の出来ないことが出来ないのを自ら禁止するのと、死なない、ダメージを負わないというところだ。死神は魂を刈るはずだ、穴をつけるはず、もし相手にそれが当たれば。

「何でお前らこんなに目の敵にしてるんだよ、それなりの生活できてんだろ!」

 死神が二度目の消滅。さすがに後一回の復活は無理だ。というか、維持にドンだけ私を老けさせる気だ。

「お前らが誰かを嫌いだっていうなら解るんだけどさ、会ったことすらないでしょ私」

「煩い、さっさと死ね! 特にいうことはない、焔の魔法、火葬!!!」

 爆音が周りを包む。 

 馬鹿とかなんとかいった気がするが、決して私は馬鹿でも、これが無駄なんかでもない。視界を奪って、自分にどんな攻撃も効かないと思ってるところを、死神で殺す。死神を退けてるのは生理的なもので、まだ、それで自分が死ぬとは思ってないはずだ。こいつらは自分の能力を過信する。

 死神が鎌で横になぎ払う。鎌というのは、草を刈る農具だ。武器じゃない。その農具で刈られる点仔の首は滑稽だ。助けは……こないか。みんなが準備していたのに来てくれないのなら、力を隠すという意味でも私だけでやればよかった。

 でも何も一番先に死ななくてもいいのにな。解っていたことだが、鬼が死んだことに後悔が募る。火が消え、死神も消えたが、点仔は消えずにそこにいた。それどころか、生きている。点仔を誰だか解らない男が抱えて、守るように抱えていた。


 スーツ姿で、優しそうに笑うこの人は知っている、生と死を入れ替える奴だ。前の世界で、先頭に立って演説してた。自分のことを神といい、死んだものを生き返らせ、生きているものを殺すことを観衆の前でエンターテインメントしてた人。

「よくここまでやったといいたいところだが、俺が全てさらっていく。残念だったね。大丈夫ですか、点仔さん」 

 私はポケットに突っ込んだ、銃を構える。いるかの作った特別製だ。私でも狙いを定められる。

「? ノックデス」

 銃を二回、三回、と撃ち、全ての玉を打ち出した。

「……な、なぜノックデスが発動しない」

 男は、胸に穴が開いて倒れ、点仔も何もいわずに死んでいった。

 全部最初から決めていたことだ。誰かの介入が一番怖かった、だから鬼が一人で突っ込んでいったわけだし、予想よりもはるかに相手が出てくるのが遅く、また、少なかったが、これで鬼は無駄死にじゃない。モノの陰陽術、術を反転させることの出来る結界の発動だ。だが私もさっきまでので魔法を使いすぎた、寿命がもう残ってはいないだろう。

「死の魔法、処刑人」

 私の命を死神に渡す。多分、こいつだけじゃ、誰か一人を殺すなんてことは出来ないだろう、しかし、ただの嫌がらせのようなことでもやらないよりはましだ。それに、一刻も早く鬼に会いたい。数秒の寿命、ここで使い切る。

 



――千条栞、死亡。

  

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