シロバンテイン誕生
アーサーが神狼の森にきて、あと2ヶ月で3年になろうとしていた。
アーサーは毎日『アーちゃん公園』で森の小動物達と追いかけっこをしたり、滑り台で遊んだりと楽しそうに過ごしていた。
エルザとウンディーネは洞窟の入り口から、それを見ながら話をしていた。
<ウンディーネ、森の小動物ではそろそろ追いかけっこも難しくなってきたのう>
「そうですね、エルザ様。アーサー様の動きが随分早くなってまいりました」
<そろそろ魔狼達に相手をさせたほうが良いのかの?>
「子供の魔狼なら丁度良いかもしれませんね」
「あ~ら、丁度良かったわ」
エルザとウンディーネの後ろから突然声がかかった。
「『生命の女神』様、いらっしゃってたのですか?」
「可愛い坊やを見に今来たところよ」
<女神殿、何が丁度良いのか?>
「そろそろ坊やに従者をつけようと思ってたのよ」
「従者でございますか?わたくし達は用済みでございますか?」
ウンディーネは泣きそうな顔をして女神に問いかけた。
「そうじゃないから、泣きそうな顔しないの。
坊やは15歳になったら人間の世界に帰すことにしたの。
その時、精霊王達は常に顕現するわけにいかないでしょ?
だから、いつも傍にいれる者をつけようかななんてね」
「そ・そういうことでしたら」
「エルザ、子供を授けるわ。
名はシロバンテイン、神狼として充分な教育をなさい」
<畏まりました>
2ヶ月後、エルザは白い毛の子供を生んだ。
黄金色の神獣は『世界の守護者』、白色の神獣は『神の使い』なのである。
アーサーは生まれたての子狼をキラキラした目で見ながら、手をだしたり引っ込めたりしていた。
<アーサー、触ってもよいぞ>
アーサーはそっと手を伸ばし、頭を撫でてみる。
今度は鼻先に手を持っていってみると、乳と勘違いしたのか指先に吸い付いてくる。
アーサーは満面の笑みを浮かべてエルザに振り返った。
「かわいいね~」
<この子はそなたの従者じゃ>
「じゅうしゃ?」
<いつもアーサーの近くにいて、助けてくれる者のことだ>
「おともだち?」
<可愛がってやってくれ>
「おなまえはないの?」
<シロバンテインという名じゃ>
「しろばん……シロ」
<好きに呼べばよい>
こうしてアーサーにはシロと呼ばれることが決定した。