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アーサー怒る

10歳になったアーサーは武術・魔術共一通りの修行を終え、実戦として魔力に溺れた狂獣を狩るようになっていた。


理性を失いただ暴れるだけの獣を憐れに思いながらも、森を破壊し動く者は無差別に殺戮していく狂獣を倒しては土に返していった。


狂獣の討伐が無い時は、エルザやシロバンテインを相手に武術の練習や精霊王達から人間についての知識を得たりして過ごしていた。


これまでアーサーは神域から出ることはなく、討伐も神狼の森で行っていた。






ある日、神龍アレクがやってきてエルザと何やら話した後でアーサーに話しかけた。


「御子様、討伐があるのだが一緒に行くか?」


「狂獣なの?」


「今回は違う。吾と同じ龍族だ」


「狂ってないのに討伐するの?」


「一緒に行くなら仕度しろ。今度は剣も持っていけよ」


アレクの様子が、いつもと違うことを気にしながら洞窟から剣を取って龍の姿に戻っていたアレクの背中に飛び乗った。


何も言わずアレクは飛び上がり、神域の外に向かって飛んで行った。


「アレク、外に出ちゃうの?」


<ああ、今回は人間の村の近くだ。討伐前に見せたいものもあるからな>


はじめて見る神域の外をキョロキョロと見回していると、一つの廃村が目に入った。


アレクは高度を下げ、廃村の近くに降り立った。


<ここだ。よく見ておけ>


アーサーはアレクの背中から降り、村へと目をやりあまりの衝撃に震えはじめた。


<どうした。怖いのか?ここは昨日まで普通の村だったんだぞ>


「誰がこんな酷いことを?」


建物は壊され、そこら中に死体が転がっていた。


<これから討伐しにいく相手だ>


アーサーは何も言わずアレクの背に飛び乗った。


再び飛び立ったアレクがいきなり火球を吐き、何かを地面に叩き落しその傍に降り立った。


<ククク、神龍殿か……これは良い退屈しのぎができそうだ>


「お前があの村を襲ったのか?」


<ふん、何かと思ったら目障りな人間のガキか……そうだよ、俺様がゴミ掃除をしてやったんだ>


「ゴミ掃除?」


<弱いくせに数だけ増えたゴミだよ。お前も踏み潰してやろうか?>


怒りに身体を震わせアレクの背から飛び降りたアーサーは火龍の前に進み出た。


「お前のような奴に人間をゴミ扱いする資格はない」


<神龍殿が後ろにいるからって、随分威勢がいいな>


火龍は尻尾を振り上げてアーサーにむかって振り下ろした。


もうもうと上がる砂煙を見ながら火龍はアレクに話しかけた。


<神龍殿、何故人間など連れてきた。暇つぶしにもならんでわないか>


<愚か者め、御子様の力を侮るでない>


その瞬間、火龍の顔面に衝撃がはしった。


アーサーは尻尾を躱し上空に飛び上がり、落下の勢いを乗せて火龍の顔面に拳を叩き込んだのであった。


「暇つぶしだと?それだけの理由で殺戮を……罪もない人々を……」


アーサーの髪と瞳は金色に変わり、全身から強い力が噴出し手に持った剣も光輝きはじめた。


アーサーは地面を蹴り猛烈なスピードで火龍に突っ込み剣を突き立てた。


「お前のような奴は消えてなくなれ!」


突き立てた剣に力を注ぎ神気を解放した。


火龍はあとかたもなく消滅し、立ち尽くすアーサーは涙を浮かべアレクに問いかけた。


「アレク、なんでこんなことになったんだ?力で相手を討伐する僕は火龍と同じではないのか?教えてくれ……力ってなんなんだ」


<御子様、吾やエルザ殿と先程の火龍が同じに見えるか?>


「そんなわけないじゃないか」


<力とはあるだけでは何の意味もない。使う者の気持ち次第なのだ>


「どういうこと?」


<先程の火龍は己の力を『暇つぶし』という欲望の為に使った。

御子様は他者を守る為に使った、違いはそれだけのことだ>


俯いたままのアーサーに対しアレクはさらに言葉を続けた。


<力を持つ者は使い方を誤ってはいかんのだ。

御子様がその気になれば世界を崩壊させることもできるだろう、吾やエルザも敵わぬ程の力があるのだからな>


「僕はそんなことしないよ」


<人間の世界には吾等とは違う力があるというが、どんな力でも力を持つ者は責任を持たねばならんのだ>


「責任?」


<吾等は神より強い力を賜り世界の理を乱す者を討伐しておる。

過去には人間が世界の理を乱し討伐したこともある。

討伐された者の家族や仲間から恨みをかい攻撃されたことも一度や二度ではない>


「そんなの逆恨みじゃないか」


<それでも吾等は世界の理を乱さぬ者に攻撃を加えることはないのだ。

世を正すためには他者から恨みを買うこともある。

その全てを受け入れてなお揺らぐことのない強い心が必要なのだ>


「僕は力の使い方を間違えないよ。

人間が力の使い方を間違えたら、僕が正してみせる」


この日を境にアーサーは精霊王達から人間世界の権力、身分制度などを積極的に習い人間世界での己の身分についても自覚していったのである。

今回は少し長めですね。

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