魔術って簡単?
「アーサー様、今日から魔術も練習していただきます」
「魔術って風を起こしたり、火を出したりするやつ?」
「さようでございます。
他にも、魔力を使って体を強くしたりする技もございます」
「身体を強くするのはできるよ、ほら」
とアーサーは神気を解放した。
「それは魔術ではございません。神の力です」
「えっ、違うの?」
「神の力『神気』は普通の人間は持っていません。
魔力を使って身体を強くする方法を覚えなければ、人間の世界に行けませんよ」
「はぁ~い」
「では、はじめに神気を抑える練習をした時に、もう一つ身体の中に力があったのを覚えてますか?」
「うん、おへそのあたりにあったよ」
「それが魔力です。目を閉じて魔力を感じてみてください」
ウンディーネは、アーサーが目を閉じ魔力が膨らんできたことを感じとっていた。
「神気で身体を強くしたように、魔力で同じようにしてみてください」
アーサーの身体から魔力があふれ、風に煽られたように髪がたなびきはじめた。
「目をあけて身体を動かせてみてください」
アーサーはトントンと飛んでみたり、走ってみたりした。
神気ほどではないが、普通の状態の数倍の速度で動くアーサーを見てウンディーネは頷いた。
「アーサー様、それが魔力での身体強化です」
「すごいや」
「今度は、魔力を手に集めてみてください」
アーサーはジッと手を見て集中すると、手のひらが薄く発光しはじめた。
「その魔力が氷になるように想像してみてください」
「なんだか手が冷たくなってきたよ」
「その氷に周りから力が集まるように考えてから、氷が空に飛んでいくように考えてみてください」
アーサーの手の光が大きくなり、はじけるように空に飛び上がった。
飛んでいく氷の塊を見てアーサーが「バーン」と声をかけると、氷の塊は四方に飛び散ってしまった。
「アーサー様、今のは?」
「氷がバラバラになるように考えたの」
「それは氷が飛んで行った後ですか?」
「うん」
ウンディーネは驚いてアーサーを見つめた。
一旦身体から離れた魔力に干渉するのは、超高等技術で上位精霊でも難しい技なのだ。
「アーサー様、もう一度氷を飛ばしてみてください」
アーサーの手から氷が飛び出すのを確認して問いかけた。
「アーサー様、飛んでいる氷の行き先を変えれますか?」
アーサーは氷を指差し、右左と指先をふると同じように氷の塊が進路を変えた。
「それだけ魔術が使えるなら、もうお教えできることはありません。
あとは、火とか風、土を使い分けるだけです」
この後、『知の神』から空間魔術を習い、遠くにある物を転移する魔術や空間をつなげる魔術を習得した。