武術修行 火編
「御子様、今日は吾がお教えしよう」
「サラマンダー、よろしくお願いします」
「まず、火の型をお見せする」
物凄い勢いで突きや蹴りを繰り出し、アーサーも目で追うのがやっとだった。
「サラマンダー、すごいねぇ~」
「そ・そうか?ならもう一回……」
「……もう少し、ゆっくりやってよ」
今度は充分目で追える速さで型をみせた。
「御子様、火の技は相手の近くで連続攻撃をすることが得意なのだ。
防御よりも攻撃に力を注ぐこと、相手に攻撃する暇を与えない連続攻撃が特徴なのだ」
「防御はないの?」
「防御の基本は風や水と同じだ。ただかわすだけではなく、それを攻撃に変えるのが特徴だ」
「防御を攻撃に変える?」
「そうだ、相手の攻撃の勢いを利用して、こちらからも攻撃する。
例えば、相手の拳を打ち砕くとか、拳を逸らせてこちらも拳を放つとかだな」
「難しそうだね」
「今まで人間で習得できた者は数少ない」
「僕にもできるかな?」
「御子様ならば必ずできると信じてる」
サラマンダーは早速アーサーに型を教え、鍛錬を始めた。
アーサーが一通り型を覚え、何度も繰り返しているとアーサーが難しい顔をしていた。
「御子様どうした?」
「う~ん、この動きって風の技を組合せはできそうだけど、水の技とは難しそうだね」
「よく気付いたな。風は火を助けるが、水は火を消すからな」
「へぇ~、武術まで相性があるんだね」
「水のゆったりとした動きと火の激しい動きは正反対だからな」
「火の技って風や水みたいに、身体を捻ったりしないんだね」
「そうだ。直線的な攻撃が多いな」
「それじゃあ、かわされたらどうするの?」
「御子様、吾を打ってみろ」
「えいっ!」
サラマンダーは簡単に避け、アーサーは体制を崩した。
「ねっ、こうなっちゃうでしょ」
「では、今度吾の攻撃を避けてみろ」
「ふんっ!」
アーサーが避けた途端、猛烈な体当たりがぶつかってアーサーは吹き飛ばされた。
「御子様、拳を避けられたら、肘、肩、頭を使って攻撃をするんだ。
拳だけが攻撃方法ではない。
相手との距離に合わせて攻撃方法を変えていくのだ」
「すごいや、サラマンダー」
「少しは分かってくれたか?」
「うん、最初から拳だけって決めちゃだめなんだね」
「そうだ。しかし、頭で考える時間はないから、身体で覚えるしかないぞ」
「うん、僕いっぱい練習するよ」
ちと短すぎましたね