武術修行 風編
アーサーがウンディーネから武術を教わり始めて1年が過ぎた。
シルフやサラマンダー、ノームは防御の基本が身につくまで指導を禁止されていた。
防御が下手だと怪我をする危険があるからだ。
シルフはシロや他の魔狼と追いかけっこするアーサーを見ながら、そろそろ自分達も教えて良い時期かもしれないと思い、試してみることにした。
「アーサー、アタイも仲間に入れてよ」
と声をかけ追いかけっこの中に乱入していった。
シルフは飛び掛ってくる魔狼をスイスイとかわし、アーサーの横に並んだ。
シルフはアーサーに向かって横に手刀を一閃すると、アーサーは少しかがんでかわした。
シルフは手刀の回転をそのままに足払いを放った。
コロコロコロ
アーサーは見事に足を払われ転がった。
「あれぇ~ なんで転んじゃったんだろ」
「あはははは つ~かまえたっ」
シルフはアーサーを抱きしめ頭を撫でた。
「アーサーはアタイの手刀を目でみて避けたでしょ?」
「うん」
「だから見えてない足元を払われたのに気付かなかったのよ」
「だってシルフの動き早いんだもん」
「目で見てから避けるんじゃ見えないところから攻撃されたらどうするの?」
「う~~~~ん わかんない」
「じゃあ 見ててね」
シルフは懐から布を出して目隠しをして広場に立った。
「シロバンテイン、好きなように攻撃してごらん」
シロは物凄い速さでシルフの周りを駆け回り、飛び掛っていったがヒラリヒラリとかわされてしまった。
「シルフ すっご~~~~い」
「目で見なくても避けれることが分かった?」
「どうやってやるの?」
「それをこれから練習しよっか」
「うん」
「それじゃあ、ウンディーネに習ったことを思い出してみて?」
「え~~と 相手の力の向きを変えて重心を崩す」
「力の向きは、どうやって知るの?」
「動きを目で見てたらわかるよ」
「アーサー、目を閉じてみて」
アーサーが目を閉じたのを確認すると、シルフは一歩踏み込みアーサーの顔面スレスレに拳を放った。
「なにか感じた?」
「踏み込む音と顔に風が当たったよ」
「そう、目だけじゃなくって音とか風とかを身体全部で感じとるの」
「難しすぎるよ~」
「そう簡単にできたら鍛錬なんていらないわよ」
「そうだね」
「アーサー、右手を前にして構えて」
アーサーの右手の甲にシルフは自分の右手の甲を合わせた。
「最初はこれからはじめよう。アタイの動きを手から感じ取ってみて?」
ゆっくりと右手を前にだしたり、引いたりしてみせた。
「これなら分かるよ。力の向き」
「いっぱい練習して、身体全部で感じれるようにしようね」
「うん」