お作法のお勉強
ムシャムシャムシャ
『神気』を抑えることが出来るようになったアーサーは、今まで以上に体力を消耗するのか旺盛な食欲をみせ肉に噛り付いていた。
『生命の女神』は、そんなアーサーに目を細めていたが、ふと横に控えていたウンディーネに話しかけた。
「ウンディーネ、人間は食べる時に道具を使うのではなかったか?」
「はい。食事は食器と呼ばれる入れ物にいれ、何やら手に持って食べているようです」
神も精霊も食事をするということがないので、詳しいことは知らないのだ。
「このまま人間の世界に行けばアーサーは恥をかかないか?」
「おそらく奇異の目でみられるでしょう」
「まあ!?それは大変。仮にもアーサーは王家の人間、恥をかかせるようなことがあってはなりません」
「それならば、上位貴族に加護を与えていた精霊を呼び集め教育させてもよろしいでしょうか?」
「お願いするわ。何処に出しても恥ずかしくない王子様にしあげてちょうだい」
「かしこまりました」
ウンディーネがかつて人間の貴族の生活を間近に見ていた精霊を集め、アーサー王子教育プロジェクトを発足させた。
大陸各国での違いも含め、礼儀作法、食事マナー、言葉遣い等々教えなければならない事が多くあることに気付き、教育カリキュラムを作成した。
食器やナイフ・フォークなどは地の精霊達が作り上げたが、問題は料理だった。
火の精霊達も見よう見まねで調理は可能だったが、食事をしない精霊達には味がわからないのだ。
仕方が無いので味付けは分量を正確に覚え、それを再現することにした。
翌日から王子様教育は始まった。
朝食をはじめ全ての食事は食事マナーのお勉強となった。
朝食後は礼儀作法の勉強。
昼食後は運動。
夕食後は人間世界の暮らしぶりの話。(精霊の視点なので、お金のこと等は抜け落ちている)
いささか3歳児には厳しい内容だったが、アーサーは素直に教育を受け入れた。
この食事のおかげで、アーサーは人間世界の食事はすべて美味しく食べることができたのである。