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オルフェウスの影  作者: 里中 汪


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17/17

【特殊案件2】遮断された生存ルート 10/14

9月22日 PM8:16

@埼玉県三郷市 TAGソリューション(株) AGVエリア


 片瀬の提案は、人生で1度も聞いた事のない恐ろしい内容だった。

総務部の若田部さんへのメール文面は、全て山浦さんが用意した。

AGVエリアは異様に静かだった。認証カードに反応するとAGVは退散した。

警察などの外部の人間も、既に全て撤収している(ように見える)。

この色んな意味で危うい芝居は、本当に成立するのだろうか。

責任の重さに足が震え、心臓は激しく脈打っていた。


「水野さん、お疲れ様です」

本当に来た。若田部さんだ。返事をしようとしたが、声が出なかった。

「メールの件、嫌がらせにしても度が過ぎています。私と菰池さんが

事故に見せかけて佐久間さんを殺した、だなんて」

「……すみません」

謝ってどうする。熱烈指導された演技を遂行しないと、山浦さんに叱責される。

「いや、!わ、分かっている。以前から佐久間さんと不倫関係にあるという

噂もあったし、君が菰池を利用して殺害したんだ!!」

若田部さんは余裕を崩さず、背後で手を組んでいた。

「殺人なんて不可能ですよ。明日、脅迫されたと社長に報告しますから」

掲げられた左手には、小型のボイスレコーダーが握られていた。

本来なら震え上がる場面だが、この芝居の責任は全て山浦さんにある。

綻びが出る前に畳み掛ける。

「君は佐久間さんの認証カードを細工し、ここから高温室に追い込み殺した!

最近のAGVの夜間運転は明らかに異常だ。自首しなければ、明日警察に言うよ」

「証拠はあるんですか?」

相手に動揺の気配はなかった。こんな茶番、全く意味がない。

「AGVを菰池がイジったログと、君と菰池が最近親密だったという証言を

僕がすれば警察は動くはずだ」

「まだ警察には言っていないんですか?」

「うん」

「あなたの話は妄想でしかないですよ。本当に迷惑だからやめて下さい。

社長には明日報告します。失礼します」

若田部さんの表情は、能面のように微動だにしなかった。計画は完全に失敗だ。


 去ろうとする彼女とすれ違う瞬間、右手に何かが見えた。

小型のスプレー缶だ。気付いた瞬間、胸元に何かを素早く吹きかけられた。

声を出そうとしたが、彼女は既に走り去っている。

認証カードを見ると灰色に塗り潰されていた。

その時、AGVの運転音が聞こえた。音と反対方向に逃げようとしたが、

そちらも複数のAGVが迫って来ていた。

ーー佐久間さんも、こうして追い込まれたのか。


「上手くいきましたね!名演技でしたよ」

山浦刑事が、苦々しい表情の若田部さんを伴って姿を現した。

AGVは再び認証カードを認識し、規則正しく退避して行った。

安堵すると膝が抜けて、その場に座り込んだ。


 山浦さんは狙い通りにいった嬉しさで、満面の笑顔だった。

「片瀬くんの提案のおかげで、決定的な証拠もゲットしたよ」

自分の認証カードが指差された。

「シールじゃなくてスプレーが出るとは思わなかったけどね。

若田部さん、佐久間さんにも同様の行為を行ったことを認めますか?」

「…ここまで嵌められると、言い訳出来ないわ。全部認めます」


 疲れた表情の片瀬さんも現れた。山浦さんのように紅潮はしていない。

「容疑者を確保できたところで、今日はもう帰ってもいいですか?」

山浦刑事は少し考える素振りを見せた。

「うん、いいよ。お疲れ様。明日の朝、また電話するよ。

水野さんはすみませんが、まだ捜査にご協力下さい。」

この短時間で仕事1年分のストレスを味わった気がする。

もう2度と、警察や事故調査員とは関わりたくないと思った。

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