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存在しない駅

作者: 紫栞
掲載日:2025/12/06


誰もいない駅。


その駅はもう長く人が立ち入っていないような雰囲気で草が生え、支柱はカビていて、駅名は酷く汚れて見えなくなっていた。

駅員室らしき小部屋もカーテンが閉まっていて人の気配は感じられない。

そういえばなんでこの駅に来たんだろう?


友達とご飯を食べに出かけ、その帰り、いつになく酷い睡魔に襲われていた。

外の寒さに凍え、電車の足元からの暖房は眠気を誘った。

そして気がつくと眠っていたようだった。

そして目が覚めると見知らぬ駅に止まっていた。

誰かに声をかけられた気もするが、それすらも夢だった気もした。


なんとなくずっとドアが開いてたので終点なのかなと思って降りた場所が荒廃した駅である。

電車も人の気配がまるでなく、しばらくそこに放置されていたかのように草が絡まり、鉄は錆びていた。


ここにいてはダメだという感じがして、罪悪感を感じつつ、帰る時にお金を払えばいいやと思い改札から外に出る。改札もただタッチする機械がぽつんとあるだけで扉などはなくあっさりと出入りすることができた。


町を歩くが人の気配がまるでない。

ただ、時々雑草が生い茂り、手入れのされていない民家が建っていた。

鉛色の空は私の気持ちを映すかのように今にも雨を降らしそうだ。

不安な気持ちを断ち切って信じた道を進む。

頼みの綱のスマホも電源が入らず方向も分からない。


30分くらいはさまよい歩いただろうか、遠くに光が見えた。

人がいるなら道を聞いてみようと光を目指して歩き出す。


そこは民家で暖かな灯りが漏れていた。

インターホンを探すが見つからず、ひとまず声をかけた。

すると中から小柄で白髪のおばあさんが出てきた。

優しそうな人で安心する。

驚いたような複雑な顔をしながら迎えられ、家に上がる。

「どうやってここまで来たんだい?」

今まで起きた事の経緯を話すとおばあさんはうんうんと相槌をうって聞いてくれた。

そして最後まで聞き終えると「この後は祭りがあるから外に出てはいけないよ。戻れなくなるから。それと窓を覗くのもやめた方がいい」

どういう意味かわからなかったがおばあさんはそれだけ言うと支度を始めた。

「鍵は絶対に開けたらダメ。静かに過ごすんだよ。家のものは自由にしていいから」

そこまで言うとおばあさんは急いで家を出ていった。


日が暮れて辺りは真っ暗になった。

そしてしばらくするとどこかから太鼓の音が聞こえてきた。

気になって窓に駆け寄るがおばあさんの言葉を思い出して思いとどまる。

部屋の隅で小さくなって様子を伺っているとどんどん近づいてきて鈴の音も聞こえてきた。

自分の知っている言語ではない言葉で歌を歌っている。

そして窓から見えた人達はみな狐のお面を被っていた。

全身鳥肌が止まらない。

そんな時ドアを叩く音がした。

初めは優しく、返事をしないでいるとどんどん強くなっていく。

私は震えが止まらない。

もう声を出したくても恐怖で声も出ない。

足も言うことを聞かず立ち上がることもままならない。


どのくらいドアを叩かれていたのだろう。

短い気もするし長い気もする。

諦めたのか鈴の音も太鼓の音も遠のいて行った。

全身からは冷や汗が出ている。

安堵から脱力した。


そして冷静になり、なんだかおばあさんを待っていてはいけないような気がした。

持ってきたカバンを持って慌てて靴を履いて玄関を出る。

辺りに人の気配はまるでないのに街灯だけがやたら明るく道を照らしていた。


人のいない民家を抜けて元来た道を戻る。

何度も足がもつれて転びそうになる。

後ろを振り返ることもせず走った。

駅も明かりが付いていてさっき朽ちていたはずの電車は見当たらなくなっている。

改札を通り逸る気持ちを抑えて電車が来るのを待つ。


電車が来るかどうかは賭けだったが思いのほか早くホームに滑り込んできた。電車に乗り込むと待っていたかのようにすぐにドアが閉められる。

発車後、電車の窓から町を振り返ると、狐のお面をつけた着物姿の人が町いっぱいに立っていて静かにこちらを見ていた。

全身に鳥肌がたつ。

そしてその奥、踏切に1人老婆が立っていた。

「あと少しだったのに」

聞こえないはずの声が頭にこだました。


踏切の先はトンネルでトンネルを抜けると開けた街並みが広がっていた。

辺りはまだ夕方でたくさんの人が自由に出歩いている。

スマホもいつの間にか使えるようになっていた。

友達からは起きてるかー?とメッセージが送られていた。


あれは夢だったのかと改札を出ようとすると改札が閉まり係員までとのアナウンス。

「通れなくて」と伝えると、

「お客さん、存在しない駅からの入構記録が残ってますよ」と言われはっとして顔を上げるとどこかおばあさんの面影のある顔の駅員さんが微笑んでいた。

久々にまた小説を書こうという気になって書きました。

実はおばあさんはいい人で帰り道を教えてくれるというパターンと、おばあさんも向こう側の人ならざるもので逃げなければならないパターン、どちらにしようか悩みました。

ただおばあさんは何となく悪者な感じがしてきたので後者にしました。村の設定はは人喰い村で、駅に着いた時点で人間が来たことはバレているみたいなイメージです。おばあさんが匿ったのは独り占めして食べようとしたから。祭りは人間(食べ物)に感謝を捧げるためという裏設定でした。

後味の良い感じのホラーがかけて満足です。

ちなみに私はホラー苦手なので推敲しながらゾクゾクしました。

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