消火できるわけないだろおおおおお!!
「本郷さんが……僕の手をそっと握っている」
その瞬間、心臓が爆発した。いや、ほんとにドカーンって音がしたんじゃないかと思うくらい、胸の奥が熱くなった。
(な、なにこれ……手汗? いや違う、全身から汗出てる! 滝汗だ! これじゃまるでサウナ合宿だろ!!)
顔は真っ赤、心拍数はマラソン後、頭は完全にショート。俺の理性は今、火山噴火の直前だ。
「わ、渡瀬君……顔、真っ赤」
本郷さんが小さく笑った。くそ、可愛い。なんでそんな破壊力ある笑顔するんだよ!
「なっ……なんでもない! なんでもないから!」
思わず叫んで手を引こうとするが、逆にぎゅっと握り返される。
「離さないよ。だって……渡瀬君って、意外と安心するんだもん」
教室の空気が完全に固まった。
「……おい」
低い声。香春の目が細くなる。水無月さんの頬はピクピクしている。高峰さんは扇子をカチリと閉じた。
「おいおいおい……」相模原まで口を挟む。「これはもう……修羅場だろ」
俺は必死に言葉を探すが、頭が真っ白で何も出てこない。
(やばい。完全に囲まれた。これはもう、戦国時代の合戦で四方八方から弓矢飛んでくる状態だ!)
――汗が止まらない。手汗と全身汗で、俺の体は今、ぬるぬるスライム化している。
「何? 二人は結局そういう関係なの? 本当にきもいんだけど」
水無月さんの冷たい声が突き刺さる。
「僕と一緒に二人で新しい生徒会を作るんだよね」
本郷さんが、さらっと爆弾を投げてきた。
「はい?」
……え? 初耳なんですけど。
「それはどういうことかしら? 私に対する謀反ととらえて良いのかしら?」
高峰さんが扇子をバシンと閉じ、目が据わる。
「ち、違う! というか俺、そもそも忠誠を誓った覚えないんですけど……」
「いいですわ」高峰さんが妖しく笑った。「臨時の生徒会長選挙があるのでしょう? そこで、はっきりさせてあげますわ――私と本郷さんの“格の違い”というものを!」
「ひぃっ……僕、そういうバチバチ無理だから……怖い……」
と言いながら本郷さんが俺に抱きついてきた。
「うわぁっ!? な、なんで抱きつく! 緊張感すごい場面なんだけど!!」
教室の空気はさらに張り詰める。
――いや、正直言って爆発寸前。火薬庫の真ん中に火炎放射器をぶち込んだような空気だ。
「高峰さん! 私はあなたを応援しますわ!」
水無月さんがすっと立ち上がる。「こんな汚らわしい人たち、思い知らせてあげるわ!」
「水無月さん! 俺は別にそんな……」
「言い訳はみっともないわ!」バッサリ切り捨てられた。
「行きましょう、高峰さん」
「ふふっ、頼もしいわね」
――え?
あんなに仲が悪かった二人が、まさかの急接近!?
「おいおいおい……」相模原が震え声でつぶやく。「これはもう……連合軍だろ……」
俺は青ざめながら考えた。
本郷さんの火種が強すぎて、場の空気はもはや「生徒会抗争」どころじゃない。
……これ、下手したら校舎ごと爆破されるレベルだぞ!?
(どうする? 俺に……消火できるわけないだろおおおおお!!)
――臨時生徒会長選挙、波乱の予感しかしない。




