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陰と精と超と悪  作者: 南蛇井


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19/27

爆発して死んで頂戴!!

翌日、生徒会室。俺はおそるおそる切り出した。

「――あの、高峰さん。来週いっぱい、ちょっと“超能力協会”の関係でここに来れないんだけど」

「別に問題ありませんわ」

即答かよ!

もうちょっと驚くとか、せめて眉ひそめるとか、なんかあるだろ!?

「……もう少し困るふりぐらいはしてほしいんだけど」

「でも困りませんし」

完璧な論破。

こっちは心苦しくて説明してんのに、これっぽっちも揺るがないのかこの人。

「じゃあさ……喧嘩とかしない? 俺がいない間に」

「しませんわよ。もめる原因になっているあなたがいないのですから、喧嘩する理由がありませんわ」

「そう……俺がもめる原因……」

ズシンときた。胸に。

いやまあ、そうかもしれんけど!もうちょっとオブラートってやつがあるだろ!?

「……渡瀬君が、もめる原因」

横から香春が追い打ち。

ちょ、やめろ!ダメ押しやめろ!!

「香春さん……追い打ちいらない」

俺は机に突っ伏したくなる衝動を必死で抑えた。

――かくして俺は、“世界超能力協会・日本支部・虎の穴課”へと派遣されることになった。

……名前からしてもう嫌な予感しかしないんですけど!?

とある雑居ビルの一室。

「虎の穴課」とかいう名前からして怪しい部署は、案の定、照明がチカチカしてる不気味な部屋だった。

俺はその場で待たされること――一時間。

……いや、長い。

時間の流れが止まったのかと思うくらい長い。

もう時計の秒針の音が、俺を嘲笑ってるように聞こえるレベルだ。

ようやく扉が開いた。

「あーごめんごめん、待った?」

入ってきたのはスーツ姿の年上の女性。

普段接点ゼロの“社会人カテゴリー”という人種に、俺の緊張メーターは一気にレッドゾーンへ突入。

「ちょっと先に地下駐車場に行っててくれる?」

……は?

俺は思わず固まった。

いやいやいやいや。

だったら最初から駐車場に呼んでくれればよくない?

なんで俺は一時間もこのホラー映画の待機室に座らされてたわけ?

文句は山ほどある。

あるけど――初対面の年上スーツ女子に突っ込めるほど俺のコミュ力は高くない。

「……はい」

蚊の鳴くような声で返事をして、俺はおとなしく地下駐車場へ向かうことにした。

――俺の受難は、まだ始まったばかりだ。

地下駐車場――天井の低いコンクリートの空間に、俺の心臓の鼓動だけがやけに響く。

「渡瀬徹!! おまえを会長候補としては認めない!! ここで死んでもらう!!」

突然の怒声。見知らぬ男が両手を上げると、近くに止まっていた車がぶわっと宙に浮いた。

「誰? なに? 待て!! 俺も会長候補になりたくないんだってば!!」

必死に抗議するが、男の目は狂気に満ちている。浮いた車がゆっくりと俺の方へ迫ってくる。

「待て待て! そんなのぶつけたら死んでしまうぞ!!」

「殺すためにやってんだ!!」

……そりゃそうだろうけど、殺される側はたまったもんじゃない。

俺は必死にサイコハンドを伸ばす。空気を操り、車を止めるつもりだった。

だが重さが桁違いで、全然ビクともしない。逃げるにしても背後はコンクリートの壁。逃げ場がない。

そのとき――

「そこまでよ!」

ボンッ!!!

轟音とともに、宙に浮いた車が爆発した。火花と煙が薄暗い空間を包む。

煙の中から、さっき部屋に来たスーツ姿の女性が涼しい顔で現れる。

「ボマー掛川かけがわか!」

「爆発して死んで頂戴!!」

「させるかよ!!」

女性と男が向かい合うと、数台の車が宙を飛び交い、次々に爆発する。

轟音が駐車場内に鳴り響き、爆風が壁に反射して地響きのように伝わる。

そして――

男の姿は跡形もなく消え去った。

煙が晴れると、女性は火花の残る地下駐車場に一人立っていた。冷静そのものの表情で、俺の方を見下ろす。

「ふう……危なかったわね、渡瀬君」

俺は膝から崩れ落ち、胸を押さえながら震える声で呟く。

「……え、えっと、えっと……あ、ありがとう……」

今日、生き延びたのは――間違いなくあの女性のおかげだった。

そして俺の虎の穴課での修行は、こんな過激な形で始まることになるとは、この時の俺にはまだわかっていなかった。


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