表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陰と精と超と悪  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/27

別に笑いが欲しかったわけじゃないんだが

「ねえ……なんか風吹いてない?」

「何をおっしゃっているの? ここは室内よ? 窓も閉まっていますし」

「そうよね。でもなんか風……」

ガシャン!!

「うわっ、窓が割れたぞ!」

「ちょ、ちょっと……助け……てぇぇぇぇ!」

「おい、亜里坂が風に飛ばされてったぞ!」

「え、そんなに強風だったのか?」

「いや、でもなんか……宙に浮いてるぞ」

「悪魔だからかな?」

「ああ、羽生えてたもんな……」

「でもあれ、あくまでイメージ映像なんだろ?」

「じゃあなんで飛んでるのよ!?」

「だから毎回俺に聞くなって! 不思議現象はそっちで解決してくれ!」

「……あれは精霊の力ですわね」

「やっぱりお前らの問題じゃないか!!」

「じゃあやっぱり渡瀬君の出番よ」

「えっ、なんで!?」

まるで漫画の一コマのように、亜里坂は風に乗ってふわりと浮かぶ。

俺は立ち尽くし、頭の中で渦巻く混乱と絶望――

どうすれば、止められるっていうんだ……!


「「当然ですわ。精霊同士を争わせないためにも、渡瀬君がどうにかするしかありませんね」

「いやいや! 二人、初めにめちゃくちゃ戦ってたじゃん!」

「ああいうのは良くないと思うの……そう思わない?」

「喧嘩は良くないとは思うけど! 今はそれ以前の問題だろ!?」

「いいから渡瀬君、なんとかしてくれるかしら?」

「いや……俺の主張は……」

「いいから何とかしてくれるかしら? ほら、あそこに風の精霊がいるわ」

──ああ……俺の言葉が、もう誰にも届かなくなった……。

二人の視線と声は、もはや俺を通り越し、直接精霊たちに向かっている。

俺はただ立ち尽くすしかない――この状況、どうにもできないまま……。



「よく見たら……あれ、2組の香春莉子かわら りこじゃねぇか!」

「お前、本当に女子の情報だけは詳しいな……」

「当たり前だ! 全学年・全クラス、女子の情報は俺の脳内にフルインストール済みだ! ただし男子は誰一人として知らない!」

「……いまいち自慢にならない気がする」

「えー、ちょっとキモい」

「私はちょっと嫌かもしれませんね」

「……相模原。俺も同意だ」

「おい! 三方向から全否定!? 俺が何した!」

「お前のことはもういいからさ」

「よくない!?」

「それより渡瀬、お前は“あれ”をどうにかしろよ」

「……やっぱり俺かぁぁぁぁぁ!」

――視線が集中する。

俺の心臓が早鐘のように打つ。

女子たちの期待(?)と、相模原の同意(?)が俺にのしかかる。

俺がどうにかしなければ、この空気は一触即発――いや、むしろ俺が爆発しそうだ。



「わかった、わかった! おい! 亜里坂さんを返せ!!」

「……返せとは?」

「いや返せは返せだろ! 言葉の意味をそのまま受け取れよ!」

「よくわからないけど、この子は返せないわ」

「なんでだよ!? おまえのものじゃないだろ!」

「私のじゃないけど……あなたのものでもない」

「……まあ、その通りなんだけどさぁ!」

「言いくるめられないで! 早く何とかしてよ!」

――空気が張り詰める。

俺の声は届いているのか、それとも亜里坂さんがこの奇妙な状況を楽しんでいるのか。

手も足も出ず、ただ見守るしかない己の無力さに、思わず歯噛みしてしまう。


「でも冷静に考えてみろよ。悪魔と精霊って対立してるんだろ? だったら、助ける理由なんてないんじゃないの?」

「な、なんて酷いことを言うのよ! 同じ学校の生徒なのよ!」

「友人を見殺しにするだなんて……あなたには人の心がないのですか?」

「いや、人じゃないやつに“人の心”どうこう言われたくはないんだけど……」

「でも今のあなたより、人間らしい心を持っていると思わない?」

――空気が一瞬、張り詰めた。

俺の言葉は、相手の胸を突き刺すほどではない。ただ、それでも、彼女の言葉よりは理屈が通っている気がする。

そして何より、この場に漂う“不条理な正義感”に、俺は少し疲れを感じていた。


「……お前最低だな、人として」

「見殺しにするなんて……最低だな」

「ぐっ……ごもっともすぎて言い返せない……!」

「じゃあ、とりあえず……【サイコハンド】!」

渡瀬の右手が淡く光り、不可視の“力の手”が宙に伸びていった――。


亜里坂さんを掴み返そうと腕を伸ばす。だが――

「くっ……!風が強すぎて……届かない!」

俺の手はあと少しのところで弾き飛ばされる。

「無駄です」

香春莉子の目は氷のように冷たい。

「なんかすごい力だぞ、あいつ!」

「ちょっとみんな離れてくれる?巻き込まれて一緒に死んじゃうわよ」

風はさらに勢いを増し、立っているだけで精一杯だ。

「亜里坂さん……! 逃げろ、こいつは危険だ!」

「無駄よ。あなたも仲間? だったら一緒に死んで」

「くそっ……近づけないし、手も足も出ない……!」

俺は奥歯を噛みしめる。

――仕方ない、最後の手段だ。

「俺は……精霊王だぞッ!!!」

叫び声が教室に響き渡る。

「俺の命令に従え! 今すぐ亜里坂さんを解放しろ!!!」

一瞬、空気が止まった。

「えっ?! 結局精霊王だったの?」

「……私たちを騙してたのね。許しませんわ。死んでもらいます」

「お前が王だと……」

「ちょ、ちょっと待て! お前は悪魔王だろ!」

「……ま、待て待て! その場しのぎの嘘だから! お前ら反応するな!」

「えっ? 嘘?」

「そんなくだらない嘘をつく人でしたの?」

「面白くないな。もうちょっと気の利いたこと言えないのか?」

「いや、別に笑いが欲しかったわけじゃないんだが……!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ