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陰と精と超と悪  作者: 南蛇井


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10/27

話が“俺=悪魔”前提で進んでるんだが?

だが、この“平和”が続くわけがない。

――3人に詰められて、俺は壁際ギリギリ。これ、もはや取り調べっていうか公開処刑に近いんじゃないか。

「なんで何にも起きないの?」

「俺に言われても……」

「ほら、なんか呼び寄せる儀式とかあるんじゃなくて?」

「知るわけないだろ!」

矢継ぎ早に飛んでくるツッコミと要求。俺の返事はどんどんしょぼくなる。

「がっかりだわ」

「残念な野郎だな」

――おい、俺そんなに期待外れなのか?

ただ呼ばれてここに座らされただけなんだけど。

「まあ出てこないものは仕方ありませんわね。気長に待つしかありませんわ」

「叩いたら出てきたりしないかしら?」

「やめろ! 出ない!」

このままだと、俺は物理的に叩かれる未来しか見えない。

そんな不毛な問答が続いていたそのとき。

――ガチャ。

生徒会室の扉が音を立てて開いた。

差し込んだ光に、目がくらむ。

そこに立っていたのは――

日焼けした健康的な肌。

風を切るように短く切りそろえられた髪。

明るさと活力をそのまま形にしたような、スポーツ少女だった。

「あ、ここにいたんだ。……生徒会室って、こんなに暑苦しい空気になるもんなの?」

……太陽の化身が来た。

この場の空気、一瞬でひっくり返りそうな予感しかしない。

――生徒会室に踏み込んできた少女は、涼しい顔で言った。

「失礼します」

その瞬間、室内の空気が一気にざわつく。

「誰?今大事なこと話してるんだけど」

「こっちも大事な話だよ」

――お前ら、即拒否から入るのやめろ。

「っていうか誰だよ?」

「……いた。ついに見つけた」

その目は、まっすぐ俺に突き刺さっていた。

「誰?知ってる?」

「……あれは亜里坂ありさかさんだ」

「なんで知ってる?」

「同じクラスだからな。知ってはいる。……向こうが俺を認識してるかどうかはわからんが」

――悲しい現実をさらっと言うな。俺も似たようなもんだわ。

そして次の一言が、地獄の幕開けだった。

「王よ、我が王よ。ついに悪魔の時代がやってきました」

「王? 渡瀬君やっぱり……」

「いやいや違う! 知らんし!」

「悪魔なら今すぐ俺が殺す」

「落ち着け! 落ち着け! 悪魔たちの罠かもしれないだろ!」

「その可能性はありますわね」

「ないんじゃない? 渡瀬君、悪魔っぽいし」

「何が!? 急に悪魔っぽいとか! 俺に悪魔要素ゼロだろ!」

「そう言われると……なんか悪魔な気がしてきたわ」

「よしっ! 殺るか?」

おい待て、ナチュラルに人間一人を処刑しようとすんな!!

そんな俺の焦りをよそに、亜里坂は一歩前へ出た。

その表情はやけに真剣で――

「精霊ども。我が王に対して無礼な! 王よ、後ろに控えてください。私がお守りします!」

……いやいやいや。

守るとか言い出したのはありがたいけど、そもそもお前のせいで混沌が加速してんだよ。

どうしてこうなった。

――その瞬間だった。

亜里坂さんの背中が、ぶわっと裂けるように膨らんだかと思うと、そこから巨大な翼が伸びていく。

黒い羽根が散り、影のように広がり――その姿は、まさしく「悪魔」だった。

「……っ!!」

俺が声をあげるより早く、彼女は右手を突き出す。

「【ダークボール】」

漆黒の球体がいくつも生まれ、弾丸のように俺たちへ襲い掛かってきた。

「無駄よ! 闇の精霊に悪魔の力は通用しないわよ!」

玲子が前に出て叫ぶと、黒い球はバチン、と音を立てて霧散した。

「な、なんだと!?」

驚愕の表情を浮かべる亜里坂。

けれど、すぐに冷静さを取り戻す。

「待ちなさい。私たちが争う必要はないわ。――私は渡瀬君を殺すつもりがないのだから」

「どういうことだ?」

「私は“精霊王”が不要なだけ。“悪魔王”には興味がない。渡瀬が悪魔王ならあえて殺す必要もないですわ」

「……そうなのか?」

「私は認めない!」水無月さんが食い気味に叫ぶ。

「精霊王の時代を作るのよ!」

「俺も悪魔なんて認めてない!」相模原も吠える。

――ちょ、ちょっと待て。

「おい……まずさ。話が“俺=悪魔”前提で進んでるんだが?」

「……」

「……」

全員の沈黙。

「いやいやいや! 俺、悪魔っぽい要素ひとっつもないからな!? なんか“俺悪魔だな……”みたいな自覚もゼロだから!?」

……なんでみんな目を逸らすんだよ。

ほんとにやめてくれ、この流れ。

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