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ベルダとカレンのレッスン

6月14日。16時30分。ベルダとカレンはエナオたちにヨガのレッスンを受けた。レッスンは17時から1時間。休憩15分を挟み18時15分まで。ラミアが通訳に付き、私と娘は安堵した。彼女はアヤセ公国の新米エージェントだが、もちろんただの通訳だと私たちは認識していた。レッスン料は1人あたり1回1000ワイオンだし、相場の2000ワイオンよりも格安。だがもちろんこれにはカラクリがあった。女王たちを参戦させればナルシスに成功報酬が入る。着手金の100万ワイオンは今日中に振り込まれ、残りの900万ワイオンは順次彼らに振り込まれる。エナオたちは月払いを選択したから来年の1月まで毎月100万ワイオン振り込まれる。魔法戦士の経済効果は1人あたり5000万ワイオンだからナルシスへの報酬はむしろ安い。コレが仮にスージーたちでも全く経済効果は変わらないと推定された。「初めましてベルダ。僕はエナオ。仲よくしましょう」「よろしくねエナオ」「初めましてカレン。僕はセロ。仲よくしようね」「楽しみにしてたわセロ」私たちはピンク。先生方は黒のレオタードに身を包み、雑談に花を咲かせた。18歳の女性通訳がいてくれる安心感は絶大。しかもレッスンは地元の体育館を借り、ステージでも行なわれる。エナオたちはまだ16歳。彼らは男子校の話をした。「昼食はいつも売店でパンを買うんです」「パンで足りる?」「総菜パンを3つ買えれば」だがいつもアルたちA組との熾烈な競争があり、菓子パンしか買えない日もある。「かと思えば僕の岩清水を飲む輩がいます」「岩清水?」「日本のジュースに似せたマイナーなジュースです」「ソレうまい?」「スッキリして後味がいいです」「市販されてる?」「いやうちの売店でしか見たことないですね」エナオは私。セロは娘と組んで柔軟体操を始めた。雑談タイムからレッスンに入る流れは対戦と全く同じ。17時開始は訓練も対戦も同じだが、対戦のみ25分ハーフ。いずれも交戦国で行う。ラミアがいるし緊張はあるが、レッスンへの期待に私たちは胸を膨らませた。先生方からはほのかにいい香りがした。雑談タイムでも私たちは彼らの学校生活の話題で盛り上がった。エナオたちは見本を見せながら私たちに教えてくれた。彼らはまだ習いたてに見えたが、かえって安心した。ヨガを習う目的は体幹にあり、体幹を鍛えないと私たちは転びやすい。だが体幹を鍛えれば襲われにくくなり、もちろん実戦にも役立つ。ヒルダたちもナルシスにヨガを習い始めたが、魔法戦士が交戦国に大切にはぐくまれるのは異世界のスタンダード。ソコにはこれからの女王たちの道すじがハッキリと描かれていた。先日に出た特集号は[牝牛たちの嘆き]が前面に押し出され、ヒルダたちの近未来を暗示する内容がふんだんに盛り込まれた。どうやら1ヶ月お休みするみたいね。レッスンが終わり、私たちは熱いシャワーを浴びた。私たちはラミアのクルマでドライブデートに繰り出した。エナオが助手席。後部座席は左から順に私、カレン、セロ。この配置なら問題はなさそう。私たちは喫茶店[逢引]に入り、引き続きナルシスとの雑談に花を咲かせた。真ん中に通訳を入れ、私たちはエナオたちと向き合う形。だがラミアの通訳にはそつがなく、会話の流れをよりスムーズにした。私は年甲斐もなく、たくさん話し掛け、カレンに呆れられた。だが娘だってセロの手を握るなどいつになく積極的な姿勢を見せた。私も負けじとエナオの手を握り、年甲斐もなく奮闘した。お店には美人の女給さんが多く、中にはナルシスに色目を使う女給さんまでいた。しかもコスチュームは学校の制服を大胆にアレンジしたもの。白のノースリーブのセーラーなんて初めて見たわ。

ミニスカートは白と深緑のチェックのフレア。しかもサイドストリングだから脇から見ると下着が丸見え。よく見れば女給さんの年齢層は20代がメイン。幸いにも彼らは女給さんに惑わされず私たちを見てくれた。[逢引]はカプチーノと洋菓子がうまいが、エナオたちだけカプチーノに絵が施されたのは内心複雑。だがかなりの人気らしく、私たちは長居せずにお店を出た。帰宅した私たちはなおも興奮がおさまらなかった。私たちは特集号を見返したが、ソコには私たちの近未来が詳細に描かれていた。ヒルダたちは教護院に収容され、虜囚としての生活を強いられる。だが夏の日差しを浴びた女王たちはひときわ眩しく映った。ヒルダとインゲは不安そうに眉毛を寄せるが、カヒーナとミランダは虜囚生活への期待に目を輝かせた。娘たちが身にまとう虜囚服はムネをあらわにされず、ふくらみを剥き出しにされた母親とは対照的。ソコには[幼い子を泣かせない]という信念が感じられて微笑ましい。だが徐々に女王たちの懸念は払しょくされ、表情は柔らかくなっていく。教護院で彼女たちは甘やかされ、より幼くされていくのだ。

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