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カレンとミレーヌの日常

5月31日。カレンとミレーヌは登校した。授業は休みだが、サークルの練習がある。私は14番。妹は18番のユニフォームをもらった。ベンチ入りは18人。すでに春の県大会は終わり、ジュスティーヌ女学院とカルーセル女学院はベスト4まで進出。だが私たちは1対2。ヤマンバどもはスコアレスからのPK戦で敗退。高等部2年の私は秋かもしくは来年の春で引退が濃厚。高等部3年の秋までやるのはヤマンバしかいなかった。県大会は32チームだから最大でも5試合しかない。だがまだ秋までかなりあるし、夏には遠征試合がある。カルーセル女学院は別ブロックだから決勝まで当たらない。私たちは確かに試合に出てプレーしたいが、チアガールとしての未練も少なからずある。異性の目に触れる数少ない機会だし。かと言ってギャラリーはマナーがいいからストーキングや盗撮はない。私たちが安心してチアガールをやれるのは治安が抜群にいいからだ。練習は試合形式。サークルは22人しかいないから人数はギリギリ。しかも今日は18人だから9人対9人。顧問はいないし練習は気楽。私はAチーム。ミレーヌはBチームに入った。私はドリブルやシュートを磨きたい。妹は守備やヘディングを磨きたい。私はロングスローばかり期待されるが、ホントはゴールを決めたいのだ。ミレーヌは必ずしもそうではなく、その都度決めるべき人が決めればいいという考え。プレーの視野が広いはずの私がシュートにこだわるのは矛盾しているかもしれない。でも周りを生かしたプレーも好き。この日は妹が1ゴール1アシスト。私はノーゴールだが、ロングスローで得点に絡んだ。秋になれば肌寒くなるし、チアガールをやりたがる子が足りなくなる。夏と冬には県大会がないが、これから暑くなるし、秋になれば肌寒い日もある。準レギュラーの私たちは微妙な立場。ベンチ外ならチアガールに逆戻りだが、掛け持ちだからみんなに呼吸を合わせるのが楽じゃない。不思議と掛け持ちする子は少なく、ある意味希少な存在。帰宅途中私たちは本屋に向かった。最新号の[週刊少女コリス]を買うためだ。初めは回し読みしていたが、今や1人1冊が当たり前に。やはり試作品が欲しいからだ。しかも新連載の[新フランス革命]がいい。コレはマリー・アントワネットの視点から見たフランス革命の物語。彼女は父親似で政治力に欠ける浪費家だとみなされてきた。だが歴史は敗者に厳しく、勝者に都合よく描かれるもの。実際は必ずしもそうではなく、しかも政略結婚。敵国オーストリアから嫁いだ分風当たりが強く、よからぬ噂を立てられもした。デビュー作とは思えないほどユエの筆致は冴えた。もとより新人女流作家は昭和末期の少女漫画家と同じ。文学少女だから知性も教養もふつうにある。お姫さまたちからすれば貴族も王族も似たようなもの。マリーをひとりの女性と見れば魅力がないわけない。母親のマリア・テレジアほどの政治力はなかったかもしれないが、彼女は当時最先端の香水やファッションに触れていた。あの頃のベルサイユ宮殿やパリは今では想像を絶するほど不潔の極み。だからこそ貴族からは香水が重宝された。たぶん平安時代にお香が大流行したのも同じ。貴族の女性たちの生活があんまり清潔ではなかったのだろう。ユエはそのあたりをなるべく抑えて描いた。マトモに描けばマリーがかすむ。だが私たちは新たなるマリー像を提示され夢中になった。「マリーってホントは痛い人じゃなかったんだね」「てっきりオツムが弱い意志薄弱な人かと思ってたわ」実は王族社会にも従来のマリー像にはムリがあると感じる人がいた。だがコレまでマリーを正面から取り上げる作品がなく、私たちはモヤモヤしていた。もちろん歴史の授業でもフランス革命なんて習わない。だがユエが提示した新たなるマリー像は私たちを勇気づけた。ずっと性悪女みたいに扱われてきたマリー。だが実はふつうに魅力ある女性として描かれている。私たちは魔法戦士のコスチュームの試作品を身にまとえるようになった。しかも私たちは現代のファッションリーダーになれるかもしれない。[牝牛たちの嘆き]はどう見たって私たちそのものであり、私たちの未来を先取りした作品にしか読めない。すでにお母さまとお姉ちゃんは試作品を注文済み。私たちも試作品を注文した。だが問題はコレから。私たちはいったいどこで晴れ姿を披露したらいいの?残念ながらお母さまたちとは生活のリズムが違うし、なかなか4人が揃う機会が少ない。「でも私たちだけじゃあつまらないわ」「うん。お母さまやお姉ちゃん達にも見てもらいたいよね」もちろんお母さまたちの晴れ姿も見てみたい。となれば私たちが集う場がいるわね。「もしかしたら読者のコーナーが参考になるかもよ」「そうね」ソコには読者の想いや近況が赤裸々に綴られていた。質問コーナーもある。いっそ作者に聞いてみようかしら?

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