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ドロシーとルーラの虜囚生活

8月10日。私たちは名古屋の母娘と面談した。面談は薄手のコートを羽織って行う。32歳の佐原佳代と14歳の美月は参戦を想定し、エージェント活動に励む。だが周りは冷めた反応。栄でコスチュームの試着会を開いても客はまばら。だがメルティーナイツの活躍はリアルでも知られていた。もちろん事務所の事務員経由でしか知る由もないが。通訳はナターシャが務めた。彼女は隣国のニュース映画を見て日本語字幕に慣れ親しんでいたからだ。「名古屋はすっごく暑いでしょ?」「今年は特に暑いです」私たちは活動に興味しんしん。「どんな活動に従事してるの?」「試着会の準備とかチラシのポスティングとか」かつてはリタイヤした子の家庭訪問があったが、近年は激減した。参戦はおろかエージェント活動する子すら希少。活動は交戦国のために行い、魔王さまへの忠誠心を培う。コスチュームに馴染むためでもあるが、中には法華会の活動とカン違いする人が多い。「活動って聞いただけでアレルギー反応を示す人が多いです」「法華会は外道だからね」だがエージェント活動は法華会の活動を反面教師にしているのでソコには必ず人間がいる。もちろん報酬が出るし単価は名古屋の比ではない。「2500円が最低時給なんです」「名古屋は?」「その半分以下です」しかも朝から夕方まで働けば昼食と夕食がつく。それも4000円から5000円くらいするひつまぶし。コレは魔王さまが泉エリアを視察した時、たまたま見つけたぼったくりハンバーガー屋がヒントになった。1個4000円から5000円。「長くないな」今は跡形もなく飲み屋に変わった。正しいことをして迫害されるのは法華の外道ではなく、実は佳代たちなのだ。後にコレを知った魔王さまは法華会への破壊活動を更に強化すると発表した。やり方は実にシンプル。福山は勤行しないズレまくった傲慢な幹部が多いことで知られる。ソコで異世界のエージェントが彼らの折伏を受けたふりをする。そしてあるお経を24時間流す。ソレは悪霊や生霊に効く特殊なお経だが、実は外道に一番効く。破壊活動といっても異世界のエージェントは北の工作員ではない。だが世間知らずの法華は対応できない。もともと法華会は世間知らずの書生っぽが広げた邪教だからオカルトを否定している。魔王さまはソレを逆用し、ヤツラの弱点を突いた。必ずしもお経イコール信仰とは限らない。佳代たちは8月中に参戦すべきかどうか尋ねた。私たちはその不利を説いた。[真夏のエルニーニョ]の第1話を読んだ魔王さまはあまりの陳腐さに衝撃を受け[8月お休み制度]を着想した。ソレはとあるビッチが6月に学校辞めて暑い暑い言う。ただそれだけの話だが、更にこれから物語が始まる。ジャンルが現代ドラマだからだ。「もはや突っ込む気にもならんな」「いったい何が始まるのやら」彼らは8月に私たちを戦わせるのは酷だと感じた。魔法戦士の参戦はナルシスやマリアとの現代ドラマだから。「8月に参戦したら汗臭くって訓練や対戦に集中できないわ」「た、確かにそうですね」「あの救いのない惰弱な小説のヒロインみたいになりたくないでしょ?」「なりたくないです」「9月以降で充分よ」「精神体と生身の人間はどう違いますか?」「説明は難しいわね」精神体は精神と肉体の融合体だが、むしろ精神に重きが置かれる。「ハードなプレイはムリね」「じゃあマリアやナルシスはソコを考慮してくれますか?」「もちろんよ」軽めのエッチで済ませなければ私たちは持たない。精神体はデリケートなのだ。「ナルシスは避妊してくれますか?」美月が尋ねた。「もちろんよ」私たちはリアルとの違いを述べた。コチラの殿方はリアルと放射される生温かい精液の成分が違う。「どう違うの?」「まず匂いがないわね」「生臭い匂いがしない?」「粘り気が強くて乾いてもカピカピにならないわ」「じゃあ伸びるのね?」「そうね」次はザーメンのお味。「甘いわ」「あ、甘い?」「ヤシの実の果汁に近いわ」「薄くって甘いのね」最後にイチモツと玉袋が熱を帯びる。「ヤケドしない?」佳代が尋ねた。「割とすぐに慣れるわ」私たちがリアルのコスチュームについて聞くと試作品ばかりで正規は未定。「名古屋はお荷物扱いです」「ソレはキツいわね」毎年数十人もの事務員が体調不良や熱中症で倒れ、参戦者がせいぜい2組では人材や予算を削られても仕方がない。しかも前任者が入院して引き継ぎすら満足にできない有り様。ほぼ夏と冬しかない名古屋に赴任したがるエージェントは皆無。河村ひろしの後継者が名古屋市長に就任するや事務所を即日閉鎖。三重や徳島や新潟に移転する国が相次いだ。今や名古屋で営業中の国はブランカ公国のみ。事務員のヨナは犬を飼うべきだったと天を仰いだ。「犬?」エージェントは犬を飼えば名古屋行きを免れるが、シベリアンハスキーに家を破壊される悲惨な事例が相次いだ。

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