表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/50

エナオたちの日常

5月23日。エナオたちは登校した。ミヤン学園はアヤセ公国唯一のナルシス指定校だが、悪名高き4月入学を除けば至ってふつうの男子校。初等部から高等部まであり、シピン学園との対抗戦はもはや伝説的。彼らの先輩たちはウチがナルシスの指定校になる前[スクールウォーズ]を地でいくような札付きのワルだった。だが彼らが更生したのは魔法戦士との対戦ではなく[ツバサ主将]。不良どもはまるでキャプテン翼のアニメの主題歌を丸写ししたかのようなダサいテーマソングを教室で肩を組んで熱唱した。彼らがシピン学園に勝つまで1年を要したのはストイックな生活にハマったから。ワルどもはヤマンバと違い、ガラは悪いが仁義を好む。彼らは[サッカーボーイズ]の世界観にハマった。確かに地味だし超人も天才も出てこない。だがワルどもは首を鍛えはしなかった。電車内で通学中、同級生が他校の生徒にイジメられるや、たちまち駆け付けヤツらをしばく。その疾風怒濤の攻めたるや[まるで鹿児島実業みたいだ]と恐れられた。異世界では春と秋に県大会が行われるが、春のミヤン学園は鬼神のごとく強かった。ユニフォームまで鹿児島実業をモデルにしていたほどだ。だが秋にあっさり負けるのは就活を優先したから。彼らは実にちゃっかりしていた。日本の半グレとの違いは人を育てる土壌の差。日本に人を育てる土壌なんて作者は見たことがない。思想も宗教も世襲もPTAもない。天皇も皇室もない。国会の1日の運営費は300万ワイオンにも満たない。アヤセ公国は日本と同じ規模なのに国会の1日の運営費が100分の1以下なのだ。アイドルがいないからキモヲタがいない。だからこそ庶民は安心して暮らせるのだ。日本ほど治安に無頓着な国はなく、アヤセ公国の魔王さまは名古屋を視察してがく然とした。50代60代を新人候補ともてはやす白けきった老害選挙。やかましい選挙カー。やかましい改造車を取り締まりもしないマッポ。あおり運転の常習老害どもをマトモに取り上げるマスコミ。まああの悪名高き某国民的アイドルグループが衰退したくらいか?ソレ以外見るべきものはない。32歳のハビエルと30歳のフーコーはため息をついた。まだ5月なのにこの蒸し暑さは何だ?異世界ではあり得ない。魔王さまはアルゼンチンの潜水艦が稼働ゼロだと知り驚いた。「バカな。日本よりド貧乏な国があるだとお」「にわかには信じがたいですな」日本文化をリスペクトしないのは異世界のスタンダード。ましてや戦争屋の外道アメリカを礼賛する者は皆無。アヤセ公国がマホロバ公国のお姫さまたちに目をつけたのは美人だからではない。内面の美しさがあるからだ。異世界へ参戦したリアルの女の子たちも全く同じ。彼女たちがチヤホヤされるのは内面が美しいからであり、お股のゆるさだけがウリの日本のアイドルと全く違う。彼らは日本のアイドル文化を心底唾棄した。異世界はいまだにアナログ社会だが、団塊みたいな老害世代がなく、庶民が健全で民度が高い。ストーキングや盗撮がないのはフィルムカメラが現役だからだ。リアルも異世界も犯罪者は惰性の固まりであり、フィルムの現像を面倒がる傾向が強い。どころかカメラの扱いすら苦手な輩も珍しくない。だから写真屋に盗撮したフィルムを持っていけない。かと言って自分で現像もできない。だから犯罪の輪が広がらないのだ。ゴロツキや犯罪者を変に持ち上げる映画やドラマを作らないし、テレビ局も安易な番組作りをしなかった。かと言って貧乏をやたらと礼賛する番組にも走らない。[貧乏が一番いい]なんてゴロツキの安っぽい決めゼリフに過ぎない。このあたりのさじ加減は微妙だが、異世界は[多様な文化]と[無節操]を混同しない。後者の典型がアメリカと日本であり異世界は前者を目指した。異世界で[自慢師ゲーム]が定着したのはいかに庶民のレベルが高いかを如実に物語っていた。エナオたちはジュスティーヌ女学院とカルーセル女学院の練習試合をたまたまテレビニュースで見た。わずか5分程度だが、彼らはカレンとミレーヌに注目した。「あんなに飛ばすの初めて見た」「ああ。ミレーヌはまだ成長途上にあるな」「カレンのプレーはもっと見たいな」「僕はミレーヌのドリブルに惹かれた」エナオたちは放課後に行きつけの喫茶店[夕凪]に立寄った。すぐに馴染みの女給さんが注文を取りに来た。このお店はカフェオレと洋菓子がうまい。女給さんのコスチュームはチアを大胆にアレンジしたもの。ヒナキはまだ14歳だが、仏蘭西人形を彷彿とさせた。だが本人に言うとへそを曲げるから扱いが難しい。でもサイドストリングのミニスカートは脇から見れば下着が丸見え。もちろんなかなか垣間見えないが、かえってソレがいい。「黒だなんて大胆だな」「そうだな」「僕はブルーが好みだな」「僕はボルドーだな」彼らは洋菓子をつまみながらカフェオレを堪能した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ