ドロシーとルーラのレッスン
6月22日。16時30分。ドロシーとルーラはトムたちにレッスンを受けた。私たちはピンクのレオタード。先生方は黒のレオタード姿。地元の体育館のステージだから安心。しかもラミアがいてくれる。通訳はスムーズだし私たちはナルシスとの雑談に花を咲かせた。最後の一押しに特集号をカバンに忍ばせてあるし、初めてのデートの準備は万端といえた。ついつい私たちは攻めすぎてしまうが、そのあたりは通訳がさりげなくフォローしてくれた。地味でふだん目立たない私たちがコスプレ姿で庶民の殿方に迫れるチャンスは希少。しかもこのレッスンが終われば彼らとのドライブデートがある。イルマやミレーヌは意識してないけどね。ただお母さまやサラに後れを取るわけにはいかないわ。「ドロシーとルーラはヤル気に満ち溢れてるわね」「ま、まあね」「私から魔王さまに伝えておくわ」「魔王さまに?」「もちろんよ。ハビエルとフーコーはね、あなたたちみたいなヤル気に満ち溢れた子が大好きなの」「こ、光栄だわ」「嬉しいなあ」確かに彼らは優しい。分け隔てしないし。「コスプレ会で魔王さまにお世話になったけど。分け隔てしないのね」「もちろんよ」[くだらん分け隔てがどれほど真面目な庶民を腐らせるか]魔王さまは名古屋での視察を終えるといつになく激しい憤りを覚えた。だがスージーとサラのレッスンを報告するや相好を崩した。「あの母娘は称賛に値する」彼らは属性で人を測らないし、ましてやヨガのレッスンに動機など不要。私たちは感激した。ふだんはなかなか女の子として扱われない。政務に就くや私は味気ない女子校時代を懐かしく思ったほどだ。トムは私。ハックはルーラと組んで柔軟体操を始めた。初めは息が合わなかったが、先生方が私たちに合わせてくれた。雑談タイムでももはや婚活ムード。レッスンは和やかな雰囲気で始まったが、彼らは自らが素人だという事実を告白。だがコレは私たちの想定内。王族でも庶民でもヨガを極めたい子はまずいない。要は先生方と親しくなり、所作を磨き、なおかつ体幹を鍛えればソレで充分。「ソレ以上は求めないわ」「僕たちもさ」私たちはナルシスに好感した。レッスンが終わると私たちはドライブデートに繰り出した。私はトム。ルーラはハックにたくさん話し掛け、通訳が追いつかなくなったほどだ。妹の口数が減ったと思えばルーラはハックと手を握り合っていた。しかも手のひらをぴったり合わせ、指をしっかり絡め合う。私たちがいなければキスしていただろう。私たちも負けじと手のひらをぴったり合わせ、指をしっかり絡め合った。すると鼓動を抑えきれず、私たちは頬にほんのり、赤みがさすはにかんだ笑みを浮かべた。ラミアを味方につけたのも私たちを大胆にさせた。かと言ってラブホテルに直行はしなかった。妹はまだ14歳だが、時には私以上に大胆になり、慌てるシーンもあった。喫茶店[カササギ2]は牛肉とミルクがうまい。女給さんのコスチュームは下着エプロンだが、やはり銘仙をモチーフにしたエプロンが色鮮やか。下着の色は赤や黒。パープルにブルーと濃い色がメインだが、こちらは女給さんの年齢層が低めなのが気になるわ。中にはルーラより明らかに歳下の子まで交じってる。だが私たちには好都合ね。先生方は女給さんに意識を向けるわけにもいかず、私たちに専念した。だが特集号を出しにくい状況。そこで私はまずラミアに見せ、それからトムに見せることにした。コレを見た妹までもが通訳を経由して、それからハックに見せた。ある程度時開をかけることで先生方に期待感を持たせた。特集号はヒルダたちの教護院生活が進み、魔法戦士から完全なる虜囚へと脱皮していくプロセスが赤裸々に描かれていた。ヒルダは初めアソコのむずがゆさがたまらず女性看守に訴えた。すると即座に貞操帯の素材が新型に変えられ、女王は自らの立場と品位を保てた。インゲは枕が変わり不眠を女性看守に訴えたが、即座に彼女に合う枕に変えられ、インゲはぐっすり眠れるようになった。教護院は女王たちの待遇改善に意欲的。女性看守や所長は善良な庶民でヒルダたちに同情的。となれば居心地のいい場所であり、娘たちは甘やかされ、母親はもっともっと甘やかされた。構想中の段階ではあるが、女王たちの虜囚生活は温かいものになりそうだ。インゲもミランダもリラックスしててもはや魔法戦士の面影はない。だが第一王女も第三王女も黒革の虜囚服が映える。夏の日差しを背に受けたインゲとミランダは神々しく、それでいてあどけない。ピンと張り詰めた緊張感はないが、より幼くされた。2人の胸のつぼみがツンと上向かず正面を向いてる。しかも第一王女は5分咲き。第三王女は3分咲きに過ぎず、教護院に収容された頃のようなふくらみの張りを感じられないのだ。だが先生方は大満足。コレはコレで素晴らしい。トムとハックの表情を見て私たちは安堵した。