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イルマとミレーヌのレッスン

6月15日。16時30分。イルマとミレーヌはディエゴたちにレッスンを受けた。私と妹はピンクのレオタードに着替え、黒のレオタードの先生方との雑談に花を咲かせた。ラミアが通訳してくれるから安心感が絶大。私たちは彼らの学生生活に興味しんしん。「ねえディエゴ、男子校って出逢いあるの?」「ウチはないね」「文化祭は?」「11月にあるが、他校の女子はあんまり来ないんだ」帰りが暗くなり、変質者に狙われやすい。「イルマの女子校はどうだい?」「ウチも同じね」やはり4月入学には弊害しかない。「ミレーヌはレギュラーになれそう?」「私たちは準レギュラーだからね。たとえベンチに入れなくてもチアがあるわ」「でも掛け持ちは大変だろ?」「うん。久々にチアやるとね、みんなとワンテンポズレちゃうの」ソコで文句が出ないのはチアはこれから人が足りなくなるから。「イルマは?政務が大変そうだが」「そうでもないわ。たいがい惰弱な日本文化への呪詛ばっかりよ」「最近はどんなお悩み相談が多い?」「もっと娯楽が欲しいとか日本作品への呪詛がメインね」話題はヨガに及んだ。「女の子は体幹を鍛えないと転びやすい」「じゃあ所作の美しさは?」「理想は両方だが、まずは日常で転びにくくなることさ」「確かにね」ディエゴは私。リーレンはミレーヌと組んで柔軟体操を始めた。ラミアがいるし、先生方からはほのかにいい香りがした。彼らはレッスンプロではないと正直に明かした。だがソレはかえって私たちを安堵させた。雑談タイムでも私たちは冗舌。レッスンはゆるく、私たちはすっかり固さが取れた。何しろヨガの全てを網羅する必要はない。ナルシスはお経を例に挙げた。生臭坊主が法事にいつも平気で遅刻してきて唱える暗い念仏。法華会が唱える勤行と題目。コレらは信仰に根ざし、もしくは布教のために唱える。だがコレらが全てではなく[念彼観音力]というお経がある。念彼観音力は山で困難に直面した時にまず3回。ダメなら7回唱える。「僕たちのヨガはまさにソレさ」「つまり体幹を鍛えることに特化したヨガなのね」ディエゴたちに先生が務まるのは私たちの体幹を鍛えるだけで充分だからだ。すでにインゲはターチ。ミランダはリックにヨガのレッスンを受けているから違和感は全くない。私たちは小説のヒロインになりつつあった。レッスンが終わると私たちは通訳のクルマに便乗し、ドライブデートに繰り出した。助手席にディエゴ。後部座席は左から順に私、ミレーヌ、リーレン。私はたくさん話し掛け、妹に呆れられた。だが生まれて初めてのデート。浮つかないはずがない。私たちは喫茶店[無伴奏]に立ち寄り、引き続きナルシスとの雑談に花を咲かせた。「私たちの国では[牝牛たちの嘆き]が人気なの」「どんなお話?」「私たちみたいな王族が世界線を超えてあなたたちみたいな庶民の殿方と対戦する物語よ」「ソレはすっごく面白そうだね」「うんっ。これまで魔法戦士はみんなリアルの女の子ばかりだったから」すでにディエゴたちは[牝牛たちの嘆き]をラミアに教わり予習済み。だがもちろん私たちは知る由もない。「私も読んでみたけどすっごく面白いわ」「ラミアも読んだ?」「つい最近。バックナンバーも取り寄せて第1話から読み直したわ」私たちはコスプレ会や聖天使隊のことまで一気に喋った。すると一気に盛り上がり、私たちは本屋に行った。幸いにもまだ特集号があり、私たちはナルシス用に2冊買った。残念ながら割引券はないが、再び喫茶店[無伴奏]で話し込んだ。ほぼ[牝牛たちの嘆き]で占められ、挿し絵が豊富に添えられ作者の想いや取材のこぼれ話。コレからの流れまでもが綴られていた。ソレはまさに私と妹の近未来そのもの。ディエゴたちはインゲとミランダの虜囚服姿に魅入った。第一王女と第三王女のこぶりなふくらみはまるでザクロみたいな柔らかい黒革に大切に包み込まれていた。だがギザギザした黒革に蝕まれてあたかも発情しているようにも見えた。インゲとミランダの表情は固いが徐々に柔らかな表情へと変わっていく。ヒルダとカヒーナも初めは固いが徐々に柔らかな表情に変わっていった。ソコで何があったのかわからないが、教護院は決して怖い場所ではなく、女王たちは貶められたり辱められたりしない。キリコの柔らかなタッチからは暗い未来を感じ取れないのだ。そのせいか私たちはまるで自身のセミヌード写真を彼氏に見せつけているかのような優越感に浸れた。ナルシスは豊富な挿し絵をめくりながらも露出度高めのあたりに熱い視線を向けた。帰宅した私たちはなおも興奮がおさまらなかった。だが着実に運命は動き始め、いずれ私たちはああなるのだ。だがソレは終わりではなく、始まりを意味した。私たちは聖天使として生まれ変わるんだ。アレはきっと預言書なんだわ。私たちは生まれて初めてのデートを満喫した。もう後戻りする気はない。

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