1. ハズレスキル?
人族の少年ライトは、幼い頃に両親を亡くし、Sランクハンターの姉・ヤミに育てられた。
10歳になったライトは、スキル授与の儀式で「倍化」という謎のスキルを手に入れる。
しかし、そのスキルは誰も効果を知らず、「ハズレスキル」と蔑まれてしまう。
それでも、ライトは姉の教えを胸に、ハンターを目指して修行に励む。
しかし、ある日、ヤミはクランメンバーの裏切りによって殺されてしまう。
怒りと悲しみに暮れるライトは、姉の仇を討つため、そして自分のスキル「倍化」の真価を証明するため、
ソロ冒険者として、危険な世界に足を踏み入れる!
穏やかな風が吹き抜ける、緑豊かなエルム村。人族の少年ライトは、愛する姉ヤミと二人暮らしをしていた。ライトが3歳、ヤミが6歳の時、二人は魔物の襲撃によって両親を同時に失った。その時の恐怖と悲しみは、幼い二人の心に深い傷跡を残した。
「ライト、もう大丈夫よ。私が必ずあなたを守るから」
両親を失った夜、ヤミは泣きじゃくるライトを強く抱きしめ、そう誓った。ヤミは、この悲劇をきっかけに、ハンターになることを決意する。自分と同じ悲しみを、他の誰にも味わわせたくない。そう強く願ったのだ。
それから数年、ヤミは厳しい修行に励み、めきめきと頭角を現す。そして、わずか15歳でSランクハンターとなり、国の英雄として称えられるようになった。ライトは、そんな姉の姿を誇りに思い、自分もいつかハンターになることを夢見ていた。しかし、幼い頃のトラウマから、外に出ることを怖がり、引きこもりがちになっていた。
「ライト、あなたはきっと大丈夫。強くなれるわ」
ヤミは、いつもそう言って励ましてくれた。ライトは、そんな姉の愛情を心から嬉しく思っていた。ヤミはライトのことが大好きで、いつも抱きしめたり、頭を撫でたりとベタベタしてきた。ライトは少し恥ずかしがりながらも、そんな姉の愛情を包み込むように受け止めていた。
ライトが10歳になった時、村の祠でスキルを授かる儀式が行われた。ライトは、緊張しながらも、心の奥底で期待していた。
「…???」
しかし、ライトに授かったスキルは、誰も見たことも聞いたこともない、謎のスキルだった。ステータス画面には、「???」と表示されるだけで、どんな効果があるのか、誰にも分からなかった。村人たちは、
「ハズレスキルだ」「かわいそうに…」
と、ひそひそと噂した。ライト自身も、落胆を隠せなかった。
「なんだ…これは…」
ヤミだけは、
「ライト、きっと大丈夫。このスキルは、いつか必ず役に立つわ」
と、励ましてくれた。しかし、ライトは、自分のスキルに自信を持つことができずにいた。