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唯一の春  作者: 兎田
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02平凡な日常<消えた春麗>

もう一週間か…、そんなことを考えながら室内で筋トレをする春麗。

一体いつまでこの部屋に居なければいけないのだろう?まだ嫁としての試験は終わらないのだろうか?譲之助とも結構仲良くなれたとは思うのだが…。


バンッ

ババンッ

突如として鳴り響く銃声。

久しぶりに聞く銃声に驚いたのも一瞬、春麗は即座に隠し持っていたステーキナイフを手にしベットに隠れドアの方を伺う。ステーキナイフは食事の際にこっそりとくすねた物だ。


ドクンドクン…

静寂が訪れたおかげで自分の心臓音が鳴り響くのがわかる。


ガチャリ

静かにドアが開く音がする。


「春麗!」

そこに聞こえてきたのはいるはずのない兄の声だった。


「兄さん!?」

反社的に飛び出す春麗。

そこには返り血を浴びた兄の姿があった。どうやら先程の射撃音は兄が放ったもので、ドア前にいた見張りを撃ったようだ。


「春麗‼」

兄は安心したように春麗を抱きしめる。


「心配したんだぞ!」

「え…?」

これは青龍公認の試験じゃなかったの?

疑問を抱く春麗だが、兄が強い力で抱きしめるので質問を出来る空気ではない。


「話は後だ。ここを出るぞ。」

そう言うとすぐに拳銃を構える兄。

春麗は状況がわからないながらも兄について行くことにした。


ホテルを出るのに警戒をしていた二人だが、すんなりとホテルのエントランスをくぐることができた。

久しぶりの直射日光に目を細める春麗。




「春ちゃん!」

そんな春麗に聞こえてきたのは久しぶりに聞く唯人の声だった。

声の方を見ると唯人は額や腕から血を流してこちらに駆け寄ろうとしている。


「唯人っ…!」

またいじめられたの!?私が守らなかったからあんなに酷い怪我をしたんだ!


唯人に駆け寄ろうとする春麗だが、兄に強く腕を引かれる。

「駄目だ、行くぞ!」

いつもの優しい兄の姿はなく厳しい態度だ。


「でも、友達がっ‼」

「駄目だ!このままだとアイツも巻き込むぞ!」

兄は春麗を一喝するとさらに強い力で腕を引く。


「春ちゃんっ…」

唯人もこちらに来ようとするが周りの大人たちに制止され身動きが取れない。

怪我の状況を見るに致命傷ではないはずだが、心配だ。


「唯人っ、また連絡するから!」

春麗はそう言うが、それが二人にとって最後の会話となってしまった。

それ以来、春麗は日本にいた人と一切の連絡をすることはなく消え去ってしまった。春麗の住んでいた家も含めて痕跡が全くなくなってしまったのだ。


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