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唯一の春  作者: 兎田
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01出会い<元気なハムスター>


元気なハムスター


それがシュンレイの最初の印象だ。

すばしっこくて元気に走り回る姿はまさにハムスター。


おまけに面倒事に突っ込むのが大好きで、いつも動き回るせいで毛並みが常にボサボサだ。







春麗に会ったのは、俺を敵視する奴らに囲まれているときだった。


俺たちの通う学校は表向きはセキュリティ万全の金持ちの子どもたちが通う中高一貫校だ。もちろん著名人や経営者の子どもたちがたくさん通っている。それに加えて、国内のヤクザグループの関係者も多く在籍している。公然の事実ではあるが、表向きは資産家の子どもたちということになっている。ヤクザ関係者の子どもは誘拐して脅すにはうってつけの人材なので、保護者すら敷地に入れないこの学校で過ごすこと程安全な場所はない。


しかし、安全ではあるがいざこざは毎日のように起こる。敵対するヤクザグループの子どもたちが同じ場所で学ぶことに問題が生じないわけがない。

俺は国内三番目に大きな勢力を持つ神亀会の唯一の跡取りで、他のヤクザグループの奴らが放っておくわけもなかった。


いつもであれば同じ派閥の奴らとつるんでいるが、その日は敵対した奴らに嵌めらたようで一人で校舎裏に来てしまった。これを好機と集団で5人が暴力を加えてきたのだ。

当時接近戦が特苦手だった俺は5人の殴る蹴るの暴力に抵抗することができず袋叩きに遭っていた。


「どうせ一人じゃ何も出来ないんだろ?」

「弱いくせに調子乗んな!」

俺を地面に転がして笑っている奴らがそれだけで満足するわけはなくさらなる暴力を加えてこようとした。


仕方ない…俺は小さなため息をつくと服の下に隠していたエアガンに手を伸ばす。


あまり問題を起こしたくないから反撃しなかったが、このままこいつらを調子乗らせとくのは我慢ならねぇ。


接近戦は苦手でも銃撃は大人顔負けなんだよ…‼


俺が反撃をしようとした同時に聞き覚えのない女の声が聞こえる。俺はその声を聞いて咄嗟にエアガンを隠した。


「やめなさい!」

女は勢いよく走りながらこちらへと向かって来る。

上履きの色からして同学年であろうその女はとても小柄で小学生くらいに見えた。そんな女が安っぽい正義を振りかざしてこっちにやってきたのだ。


それは暴行してくる奴らも同じ考えのようだった。

「は?」

「誰だよお前?」

女を見るなり馬鹿にしたような表情をする。

しかし、女は怯むことなく守るように俺に背を向けて立ちふさがった。


「集団で一人をいじめるなんて恥ずかしくないの!?」

そんな女を見た奴らが一斉に笑い出す。


「チビは引っ込んでろよ!」

「女のお前に何ができるってんだ。世の中弱肉強食なんだよ。」

「コイツに仲間がいないのが悪いんだろーが。」

普通の女であれば震えて泣く場面でも、その女は凛と立ち強い意志の持った目をしていた。


この女普通じゃねぇな…。

静かに見守っているとすぐに

ドカッ

バキッ

ボコンッ

という音が聞こえてきた。

女は無駄のない素早い動きで的確に一発ずつ思い攻撃を加えていった。レベルの差は歴然で奴らはすぐに苦しそうに倒れた。気絶させるまでの力で殴らなかったのはこの女の慈悲だろう。


「うぐっ…」

「な…んだよ…コイツ…」

地面に転がった奴らは苦しそうに声を出す。痛みに耐えるので精一杯のようだ。


コイツ…何者だ?

新品の制服みたいだし転校生?どっかの組の者か?


俺が警戒していると、その女は勢いよく振り返って屈託のない笑顔を浮かべて手を差し出してきた。

「大丈夫?」

その仕草には何も邪心等はなく善意で自分のことを助けてくれたのだろうと感じた。


それが中山春麗との出会いだった。偶然にも同じクラスに転校してきた春麗は中国からの留学生らしい。幼い頃より親から人助けをするように言われてきた春麗は周りや自分を守るために護身術やカンフーを鍛錬してきたらしい。


そんな春麗の周りにはすぐに彼女を慕う友人が多く出来た。俺は春麗が必死にちょこまか動き回って俺を守ってくれ用とする姿が面白くて、春麗の前では弱者を演じることにした。

もちろん俺の正体がバレないように周りに箝口令を出し、春麗に正体を明かそうとする奴は取り締まった。


最近退屈だったけど、春麗のおかげで暫く楽しい学校生活が送れそうだ。


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