004
サイプレスと共に徒歩で移動した僕は、城壁の外の草原にやって来た。
イレックスとスズキ氏はギルドでお別れし、イレックスには後日連絡させてもらうと伝えた。
僕の真の企みを知ったイレックスは、苦笑いしつつも馬車で帰って行ったのであった。
「それで坊主、確認なんだが、魔法容量が【極めて少ない】ってのはどうやって鑑定したんだ?」
「それはですね、このようなやり方でした」
枯草色のローブを纏ったお爺さん鑑定士は、水晶のような球体の道具を使って魔力容量を鑑定していた。
その水晶に手をかざすと、微かに緑色の光を発していたことを思い出した。
「あー、そいつはハズレだな。全く参考にならないわ」
「えっ?」
「そのジジイはおそらく、実践経験ゼロのなんちゃって魔法士だな。おそらく、楽な鑑定の仕事で食い繋いできたんだろう」
サイプレスが面白い話を始めたので、僕は食いつくように質問した。
「それではどのように魔力容量を鑑定するのが正しいやり方なのでしょうか?」
「それを今から説明してやろう。というか、それが俺の言ったテストってやつだ」
サイプレスはその辺に落ちていた石を拾うと、地面に絵を描き始めた。
「水晶で鑑定できるのは、あくまで魔力の瞬間最大出力だ。まぁこれは魔力を貯めておくタンクの大きさを測定しているもんだと理解すれば間違いない」
「つまり、僕は魔力を貯めておくタンクの容量が【極めて少ない】ということになるんですね」
「そうなる。ただし、最近の考え方では魔法総量ってのはタンクの容量だけで決めるべきではないってのが主流だ。つまり、一定の時間内にどれだけ魔力を消費することができるか、というのを考えて魔力総量というのを鑑定する必要がある」
サイプレスは腕を組んで、もっともらしく言った。昼間から飲んだくれていたとは思えない。
「タンクの容量以外にも考慮すべき要素があるということでしょうか?」
「その通りだ。なんでその歳でそんなに理解力が高いかはわからんが、まぁ話が早くて助かる。つまり、魔力総量は魔力を貯めておくタンクの容量に、魔力の回復量を掛け算することによって測定する、というのが正しい鑑定方法なんだ」
目から鱗が落ちた。
となると、魔力の回復量を調べる必要があるけど……
「それで、魔力の回復量を調べるためにはこのようにする。坊主、両掌を前に突き出せ」
僕は言われた通りに両掌を前に突き出した。サイプレスも同じようにして、僕の掌に自分の手を合わせた。
手押し相撲みたいな感じだなと思った。
「今から坊主の魔力を抜き取るぜ。力を抜いてリラックスしろ」
「はい」
次の瞬間、僕は激しい眩暈に襲われて地面に倒れた。
「こ、これは、一体……」
「それは魔力枯渇状態ってやつだ。俺が坊主の体内から魔力を一気に抜き取ったからだな。普通は気絶するんだがな」
そう言いながらサイプレスは地面に腰を下ろし、懐から掌サイズの懐中時計らしきものを取り出した。
「これは珍しい魔道具でな、時間を正確に教えてくれるんだ。これで1時間後にもう一度魔力を抜き出すことで、1時間あたりの魔力回復量がわかるってことだ」
魔力が回復する感覚はいまいちよくわからなかったが、とりあえず1時間待ってから魔力を再測定することとなった。
時計には短針と長針があり、長針が一周すると1時間で、短針が一周すると12時間となる。
かつて日本でよく見ていた時計の仕組みと全く同じらしい。
「それじゃあ1時間経ったからもう一回行くぞ。力を抜いてリラックスしろ」
「はい」
またしても強烈な眩暈を感じたが、今度は倒れずに済んだ。
「これは驚いた、1時間で魔力が完全に回復してやがる」
「すごいことなんですか?」
「まあな、俺の場合1時間あたりの魔力回復量は約4割だ。ただし俺の場合はタンクの容量が坊主より大きいから、その辺りも考慮する必要があるがな」
サイプレスはその後、少し考えてからこう言った。
「念のため、30分後にもう一度同じことをするぞ。魔力回復量が1時間あたりで10割を超えるやつは見たことが無いが……」
30分後、さらに魔力を抜き取られた僕は、だんだん眩暈に対して慣れて来たようだ。
「なっ、30分で全回復だと?馬鹿な……」
さらに10分後、またしても魔力を抜き取られるが、一瞬で体調は回復する。
「……10分でも全回復かよ」
さらに、1分後と1秒後でも同じことを試した結果として、僕の真の魔力総量が明らかになった。
「坊主は瞬間的に使える魔力量が【極めて少ない】かわりに、使った魔力は一瞬で全回復するようだ。つまり、坊主の魔力総量は【ぶっ壊れレベルで極めて多い】が正解だな」




